最後まで演じましょう

cyaru

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第31話  演技がバレる

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部屋の空気はピリピリとしていた。

そんな中でソファの座り心地を堪能するのはユーミルの父と母。
ユーミルは両親に挟まれて、怯えるように向かいに腰かけるダリム伯爵夫妻とトレッドを見ては目を逸らし、見ては目を逸らしを繰り返す。

「丁度いいんじゃないですか?娘と子息は普通の友人ではないのですからね」
「普通の友人ではない?どういう意味だ?」
「ご存じと思いますが娘はね、男爵家の子息と結婚の話があって進んでいたんですけどねぇ?」

ユーミルの父は「この先は言わなくても解りますよね?」とダリム伯爵夫妻に圧を掛ける。

ダリム伯爵夫妻もユーミルと言う女性は知っていたが、知っているのはアイリーの友人であること、そしてユーミルの兄がトレッドとは友人だと言う事だけ。

ユーミルの兄はアイリーがトレッドの恋人で最愛だと知っているので、まさか許嫁もいるユーミルをトレッドに紹介する事もないし、2人きりになれる場を用意する事も無い。
アイリーが花を摘みに出かけてもトレッドとユーミルを残して席を外す事も無かったはず。

ユーミルとトレッドが匂わせるような関係だなんて爪の先ほどにも思っていなかった。
甘いと言われればそれまでだが、トレッドはアイリーの事が本当に好きで他を見るなんて思いもしなかったし、まさかアイリーの友人とどうにかなるなんて夢にも思っていなかった。

身内贔屓と言われても、アイリーを悲しませるだけなのにトレッドがユーミルに手を出すなんてあり得ない、信じられないとユーミルたちを目の前にしても受け入れることが出来なかった。

「お宅さんの気持ちなんてどうでも良いんです。うちはね、これで男爵家とは縁が切れたんです。どうしてくれます?」

ユーミルの父はその辺の破落戸よりも奇妙な自信を持っている様で怯むことなくダリム伯爵夫妻に「責任を取れ」と迫ってきた。

「トレッド。本当なのか?本当に彼女と…」
「知らねぇよ!そんな女っ」

トレッドはユーミルを睨み、言葉を吐くと顔を逸らせた。

「あれあれぇ?今朝どこかで頭をぶつけました?残念ですけど俺らに演技は通じねぇから?意味わかるよなぁ?」
「なっ!息子が演技を?言いがかりも大概にしろっ!」
「知ってんですよねぇ。息子さん、娘にピロートークで語ってくれちゃってますんでぇ。子爵令嬢の事、忘れたなんて大嘘。嘘ついて回りが騒ぐのを楽しんでたんだよなァ?」
「そんな馬鹿な!」
「馬鹿はそっちでしょうに。ご丁寧に騙されてご愁傷様ってか?!アーッハッハ」

ダリム伯爵は信じられず、トレッドの胸倉を掴んで「親を騙したのか!」声を荒げたがトレッドは視線を外すだけで答えることはしなかった。その事に伯爵は騙されていた事を察し、胸倉を掴んでいた手から力が抜けた。


ユーミルの父はトレッドに視線を向けニヤニヤと笑いながら「だよねぇ?」もう一度言葉を吐いて足をソファーテーブルの上にドン!と載せた。

「本題ッ!戻りましょう。難しい事は言いません。責任(ニヤッ)取りましょうか?」
「責任?!」
「そうですよ?責任の意味は解りますよね?娘はね、お宅の子息に散々弄ばれた挙句に腹に子が出来ちまった。そのせいで男爵家からえ・ん・ぎ・り!された訳で?」
「なんだって!!」

勿論ユーミルの父親の嘘である。

男爵家から縁切りをされたのは2人が関係を持ったからではなく、その関係を隠し通せずキャメラル子爵家を巻き込んだこと。勿論男爵家は縁談をどうにかしたかったので、これ幸いとカードを切って来ただけ。

仮にユーミルが妊娠したまま嫁いで来ても「嫁」として迎え入れるだけ。時期として結婚後に妊娠が判ればどうしようもないので身持ちの悪いユーミルは托卵の可能性も考えて遠い帝国の管理地に捨て置くのみ。問題にしていなかった。

そんな事情を知らないダリム伯爵夫妻は気を飛ばす寸前だった。
男と女が関係を持てば、子流しの薬を飲んだとしても万能薬ではない。確率としては繋がったまま果てない程度の信頼度しかないが、信じるものは救われると服用する者が多いだけ。

関係を持ては可能性はゼロではなく、生理不順なども合わせれば本当に身籠ったかどうかは妊娠中期以降でないと解らない事も多い。

焦るダリム伯爵夫妻と顔色を失ったトレッドにユーミルの父は指を3本立てた手を前に突き出した。

「先ずは、男爵家との縁をブチ壊してくれた慰謝料で3千万。俺たちはその事で心を痛めたんですわァ。なので1人あたり3千万。ウチの跡取りがね?親友に騙されたって部屋から出てこないんですよねぇ…なので息子の分も含みますんで。おぉっと、ユーミルの分は要りませんよ?ユーミルの分は持参金って事で相殺します。で?腹の子も合わせて責任取って結婚してもらわなきゃ困るんで支度金で2億。これで手ぇ打ちましょうや」

3億2千万も請求をされて遂にダリム伯爵夫人は口も目も開けたまま失神してしまった。
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