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第46話 真夜中の会話②―①
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真夜中に目が覚めたティニャは暫く天井を見ていたが、どうも気になって首だけをハーヴェスが寝ている方に向けた。
「ハッ!?」
「まだ1時です。寝てください」
「起きてたの?」
「いいえ。少し前に目が覚めてしまったんです」
「そ、そう…」
「寒いので寄ってもいいですよ」
そう言われても、無意識でピトっとくっつくのと意識があってごそごそと身を寄せるのはかなり違う。
その上、キスの件があってハーヴェスを意識してしまう。意識すると「私、トンデモナイ事してる?」と今更ながらに一緒の寝台で寝ている事に後悔した。
ティニャとしては皆で雑魚寝と大差ない気持ちと、放っておくと夜中まで仕事をしてしまうハーヴェスを何とかしないと!その気持ちしかなかった。
「私は待ちます。離縁の日まで。ティさんだって相当の覚悟で結婚したんですよね。こんな結婚になるなんて思ってもなかったでしょうけど」
「違うわ」
ハーヴェスがティニャと出会った時はもうティニャはロバートと婚姻状態にあったので、完全別居には流行の歌劇などにあるような事が起きたんだろうなと勝手に想像していた。
一緒に生活を共にしてもティニャはロバートに一切干渉しようとしないので、かなりの意地っ張りかな?とも思っていた。
口にしなかったのはティニャに恋心も抱いているし、このままロバートと疎遠なままなら離縁後には自分にもチャンスがあるんじゃないかと分不相応な事を思ってしまったのもある。
だから即答で「違う」と言ったティニャに驚いてしまった。
「この結婚は皆が思うところで決着をするための結婚なの」
「決着をする?離縁するのにですか?」
「そう。私ね、それまでずーっと両親だと思っていたのに伯父と義伯母って聞かされた時、ショックだったの。だって…兄弟姉妹分け隔てなく育ててくれたし、褒める時も叱る時も私だけ程度を変えたりとかも無かったの。一番年上の兄さんも解ってるのに全然言ってくれなかったの。普通、子供同士で喧嘩したらウチの子じゃない癖に!とか言うものでしょう?」
「あ~そうかもしれません。私はよく言われましたね。姉に。ハハハ」
ティニャはその時に誰もが嫌な思いをしないようにと常に気遣ってくれた伯父夫婦のようになりたいと思うようになった。
だから事業も自分だけが儲けられればいい訳ではなく、損はするかも知れないけれど皆が笑顔になるようにと進めてきた。
結果的に思い付きから始めた事がお悩み解決になり、大当たり。財産を持つようになっただけ。
ある程度の資産を保有するようになった頃に鑑定液の事を知った。
同時に伯父夫婦が何も言わなかったので実の父からは養育費を貰っていると思っていたのに、一切支払われていない事も知った。
自分と言う負債を押し付けてのうのうと暮らす父親が許せずせめて養育費は払ってもらうと鑑定をした。
伯父は実妹が不貞などしていないと信じていたので、ティニャも会った事のない母親を疑う気持ちはなかった。
鑑定が終わり、親子と認められると父親と父親の家族はティニャではなくティニャの資産だけを見た。
ティニャは言った。
「この世には誰かの笑顔を奪う事で笑う奴がいるんだって思ったの」と。
そんな父を見て結婚願望なんて持てないし、血の繋がりなんて近しければ近しいほど汚いものだと思ってしまった。王都まで来たけど一緒にいたくなくて結局副王都に戻る事にしたのだ。
ティニャはほんの少し父親に期待をしたのだ。
母と自分、そして兄を捨てたのは已むに已まれぬ事情があったんだろうからと。
それがただの保身、自分への評価が下がる事を嫌っただけと知った時は嫌悪が憎悪になった。
実父とは物理的な距離を取ったし、もう関わり合いになるのは止められても、いずれは結婚をしないと伯父夫婦も気を揉んでしまう。ティニャは伯父夫婦には心配を掛けたくなかった。
ならば離縁前提で結婚をしてくれる相手はいないかなとハリソン達に相談をした。
その時に幾つかの家がピックアップされたが、その中にサクターマ伯爵家があった。
「ハッ!?」
「まだ1時です。寝てください」
「起きてたの?」
「いいえ。少し前に目が覚めてしまったんです」
「そ、そう…」
「寒いので寄ってもいいですよ」
そう言われても、無意識でピトっとくっつくのと意識があってごそごそと身を寄せるのはかなり違う。
その上、キスの件があってハーヴェスを意識してしまう。意識すると「私、トンデモナイ事してる?」と今更ながらに一緒の寝台で寝ている事に後悔した。
ティニャとしては皆で雑魚寝と大差ない気持ちと、放っておくと夜中まで仕事をしてしまうハーヴェスを何とかしないと!その気持ちしかなかった。
「私は待ちます。離縁の日まで。ティさんだって相当の覚悟で結婚したんですよね。こんな結婚になるなんて思ってもなかったでしょうけど」
「違うわ」
ハーヴェスがティニャと出会った時はもうティニャはロバートと婚姻状態にあったので、完全別居には流行の歌劇などにあるような事が起きたんだろうなと勝手に想像していた。
一緒に生活を共にしてもティニャはロバートに一切干渉しようとしないので、かなりの意地っ張りかな?とも思っていた。
口にしなかったのはティニャに恋心も抱いているし、このままロバートと疎遠なままなら離縁後には自分にもチャンスがあるんじゃないかと分不相応な事を思ってしまったのもある。
だから即答で「違う」と言ったティニャに驚いてしまった。
「この結婚は皆が思うところで決着をするための結婚なの」
「決着をする?離縁するのにですか?」
「そう。私ね、それまでずーっと両親だと思っていたのに伯父と義伯母って聞かされた時、ショックだったの。だって…兄弟姉妹分け隔てなく育ててくれたし、褒める時も叱る時も私だけ程度を変えたりとかも無かったの。一番年上の兄さんも解ってるのに全然言ってくれなかったの。普通、子供同士で喧嘩したらウチの子じゃない癖に!とか言うものでしょう?」
「あ~そうかもしれません。私はよく言われましたね。姉に。ハハハ」
ティニャはその時に誰もが嫌な思いをしないようにと常に気遣ってくれた伯父夫婦のようになりたいと思うようになった。
だから事業も自分だけが儲けられればいい訳ではなく、損はするかも知れないけれど皆が笑顔になるようにと進めてきた。
結果的に思い付きから始めた事がお悩み解決になり、大当たり。財産を持つようになっただけ。
ある程度の資産を保有するようになった頃に鑑定液の事を知った。
同時に伯父夫婦が何も言わなかったので実の父からは養育費を貰っていると思っていたのに、一切支払われていない事も知った。
自分と言う負債を押し付けてのうのうと暮らす父親が許せずせめて養育費は払ってもらうと鑑定をした。
伯父は実妹が不貞などしていないと信じていたので、ティニャも会った事のない母親を疑う気持ちはなかった。
鑑定が終わり、親子と認められると父親と父親の家族はティニャではなくティニャの資産だけを見た。
ティニャは言った。
「この世には誰かの笑顔を奪う事で笑う奴がいるんだって思ったの」と。
そんな父を見て結婚願望なんて持てないし、血の繋がりなんて近しければ近しいほど汚いものだと思ってしまった。王都まで来たけど一緒にいたくなくて結局副王都に戻る事にしたのだ。
ティニャはほんの少し父親に期待をしたのだ。
母と自分、そして兄を捨てたのは已むに已まれぬ事情があったんだろうからと。
それがただの保身、自分への評価が下がる事を嫌っただけと知った時は嫌悪が憎悪になった。
実父とは物理的な距離を取ったし、もう関わり合いになるのは止められても、いずれは結婚をしないと伯父夫婦も気を揉んでしまう。ティニャは伯父夫婦には心配を掛けたくなかった。
ならば離縁前提で結婚をしてくれる相手はいないかなとハリソン達に相談をした。
その時に幾つかの家がピックアップされたが、その中にサクターマ伯爵家があった。
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