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第22話 本能で感じる身の危険
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辺境の生活は考えていたよりもずっと快適だった。
何よりも水が美味しい。岩の裂け目から湧いてくる湧き水を飲んだ時「水に歯ごたえ」がある事を知った。
食事も飲み物も冷たいものは冷たく。熱いものは熱く食べる。
サジェス王国の王宮や公爵家では考えられなかった。
人肌ほどのぬくもりのあるスープが「温かい」もので色々と食事は恵まれていたはずだが温度は常温。毒味役を何人も介して提供されるので冷たいものは冷たさを失い、熱いものは温度を失って提供されてくる。
「ほら。食ってみろ。そのままガブっとやると美味いんだ」
ウォレスから手渡されたのはブーロイラというニワトリに似た野生の鳥の肉を串に刺して、川魚や大豆を発酵させて作った真っ黒い液体調味料の中に砂糖を加えてショウガを足したタレに浸しながら焼いた肉。
カトラリーを使わずにそのまま食材を食すのは初めてだったが、アツアツの中にジュワっと出てくる肉汁。甘辛いタレの味も口の中に広がるし、肉はしっかり焼けているのに柔らかい。
「美味しいっ!」
「カァァー!!俺の妻は何しても可愛いなっ!」
モグモグと口の中で咀嚼する動きを目の前でエアー咀嚼で真似するウォレス。
――恥ずかしいから食べる所を見ないでっ!!――
口元についてしまったタレもウォレスが指でさっと拭うとぺろっと舐めてしまう。その行為を見てしまうだけで恥ずかしくて顔を赤くしてしまうジャクリーンをみてウォレスはまた「可愛いなっ」っと隣から肩を抱きしめてくる。
ジャクリーン用だというポニーは真っ白はいなかったと詫びるウォレスだったが、それでも芦毛のポニーも珍しい。どうしても手に入らないので交配させる事も考えたらしいが交配をさせても真っ白が生まれるとは限らない。
「可愛いわ。ありがとうウォレス」
「違うだろう?」
「あ、あぁ…えぇっと…ウォリィ」
「よく出来ました。ジェリー♡ジェリーだけが呼ぶ愛称で呼ばれるとこう…心臓がドクドク動くな」
――心臓は生きてる間休みなくドクドク動いてますが――
「ポニーだから遠乗りは出来ないが、街に買い物に行ったり散策は出来るからな」
「していいんですの?」
「当たり前だ。何を制約する事がある?」
「いえ、単独行動は禁止されるかと思っていたので」
「本音はしたい。もう寝台から起き上がれないようにして縛り付けたいが俺も討伐があったりで四六時中一緒には居てやれないんだ」
――そこまで一緒にいなくていいんだけど――
ただでさえウォレスはジャクリーンと行動を共にしたがる。
ジャクリーンは公爵令嬢であり、王太子アルバートの婚約者として幼少期から教育を受けて育っていて全てを使用人にしてもらうのが当たり前の生活をしている。
ウォレスとの婚約は結婚までがセットなので結婚式をしなくても書面上はもう婚約締結の時点で婚姻と言っても差支えがない。皇都で行なう結婚式は形式的な儀式に過ぎない。
なのでただ一緒に寝るだけだとしてもウォレスが隣で寝息を立てるのは夫婦なら当たり前と考えているし、侍女を「俺がやるから」と押し退けて湯殿に来た時は驚いた。
ウォレスと一緒に湯に浸かるのは男女の行為として驚いたのではなく「皇子も侍女の真似事をするんだな」と帝国の教育って凄いなと驚いたが、「そんなもの」だと受け入れて一緒に湯殿を楽しむ。
そんな生活なのでウォレスと離れている時間が不浄くらい。
それが窮屈ではなく楽しいとは思えるが、たまには1人になりたい時もあった。
「ジェリーは俺といるの・・・嫌なのか?」
キュゥン・・・まるで仔犬や仔猫が上目使いで見てくるようにしてジャクリーンに問うので「嫌ではないですよ?」と答えればパァァ!っと笑顔になってギュッと抱きしめてくる。
「キスされる?」と思った事は何度もあるが「最後の砦だからな」と不思議な事をいって留まる。
つくづく美丈夫という生き物の生態が判らない。
判らない時は本人に聞くのが一番だとジャクリーンは問うてみた。
「どうしてウォリィは口付けをしないのです?」
「止まらなくなるから」
――さらりと怖い事を言わないで――
即答だったが、ウォレスとしては昼とか夜に限らずキスをしてしまえばコトに及んでしまうので自制をしているのだと言う。
「じゃぁ夜ならいいのでは?寝所には2人ですし」
「離せる自信がない。皇都行きがなければなぁ」
――ありがとう、結婚式――
辺境に来てウォレスのネバネバベッタリな愛から本能で感じる身の危険。
「うふふ。ウォリィったら冗談が好きなのね」
「冗談?まさか!試してみるか?初めての事だから抑制できるか保証は出来ないが」
ぐぐいと近寄ってくる超絶美丈夫の御尊顔。
それだけでも心臓にはかなりの負担も感じる。
「よし!こういう時は体を動かすのが一番だ!」
――え?ここで?!――
ジャクリーンは自身がこんなに煩悩の塊だと思わなかった。
体を動かすと言ったウォレスはジャクリーンをポニーの背に乗せると騎乗訓練を始めたからだった。
何よりも水が美味しい。岩の裂け目から湧いてくる湧き水を飲んだ時「水に歯ごたえ」がある事を知った。
食事も飲み物も冷たいものは冷たく。熱いものは熱く食べる。
サジェス王国の王宮や公爵家では考えられなかった。
人肌ほどのぬくもりのあるスープが「温かい」もので色々と食事は恵まれていたはずだが温度は常温。毒味役を何人も介して提供されるので冷たいものは冷たさを失い、熱いものは温度を失って提供されてくる。
「ほら。食ってみろ。そのままガブっとやると美味いんだ」
ウォレスから手渡されたのはブーロイラというニワトリに似た野生の鳥の肉を串に刺して、川魚や大豆を発酵させて作った真っ黒い液体調味料の中に砂糖を加えてショウガを足したタレに浸しながら焼いた肉。
カトラリーを使わずにそのまま食材を食すのは初めてだったが、アツアツの中にジュワっと出てくる肉汁。甘辛いタレの味も口の中に広がるし、肉はしっかり焼けているのに柔らかい。
「美味しいっ!」
「カァァー!!俺の妻は何しても可愛いなっ!」
モグモグと口の中で咀嚼する動きを目の前でエアー咀嚼で真似するウォレス。
――恥ずかしいから食べる所を見ないでっ!!――
口元についてしまったタレもウォレスが指でさっと拭うとぺろっと舐めてしまう。その行為を見てしまうだけで恥ずかしくて顔を赤くしてしまうジャクリーンをみてウォレスはまた「可愛いなっ」っと隣から肩を抱きしめてくる。
ジャクリーン用だというポニーは真っ白はいなかったと詫びるウォレスだったが、それでも芦毛のポニーも珍しい。どうしても手に入らないので交配させる事も考えたらしいが交配をさせても真っ白が生まれるとは限らない。
「可愛いわ。ありがとうウォレス」
「違うだろう?」
「あ、あぁ…えぇっと…ウォリィ」
「よく出来ました。ジェリー♡ジェリーだけが呼ぶ愛称で呼ばれるとこう…心臓がドクドク動くな」
――心臓は生きてる間休みなくドクドク動いてますが――
「ポニーだから遠乗りは出来ないが、街に買い物に行ったり散策は出来るからな」
「していいんですの?」
「当たり前だ。何を制約する事がある?」
「いえ、単独行動は禁止されるかと思っていたので」
「本音はしたい。もう寝台から起き上がれないようにして縛り付けたいが俺も討伐があったりで四六時中一緒には居てやれないんだ」
――そこまで一緒にいなくていいんだけど――
ただでさえウォレスはジャクリーンと行動を共にしたがる。
ジャクリーンは公爵令嬢であり、王太子アルバートの婚約者として幼少期から教育を受けて育っていて全てを使用人にしてもらうのが当たり前の生活をしている。
ウォレスとの婚約は結婚までがセットなので結婚式をしなくても書面上はもう婚約締結の時点で婚姻と言っても差支えがない。皇都で行なう結婚式は形式的な儀式に過ぎない。
なのでただ一緒に寝るだけだとしてもウォレスが隣で寝息を立てるのは夫婦なら当たり前と考えているし、侍女を「俺がやるから」と押し退けて湯殿に来た時は驚いた。
ウォレスと一緒に湯に浸かるのは男女の行為として驚いたのではなく「皇子も侍女の真似事をするんだな」と帝国の教育って凄いなと驚いたが、「そんなもの」だと受け入れて一緒に湯殿を楽しむ。
そんな生活なのでウォレスと離れている時間が不浄くらい。
それが窮屈ではなく楽しいとは思えるが、たまには1人になりたい時もあった。
「ジェリーは俺といるの・・・嫌なのか?」
キュゥン・・・まるで仔犬や仔猫が上目使いで見てくるようにしてジャクリーンに問うので「嫌ではないですよ?」と答えればパァァ!っと笑顔になってギュッと抱きしめてくる。
「キスされる?」と思った事は何度もあるが「最後の砦だからな」と不思議な事をいって留まる。
つくづく美丈夫という生き物の生態が判らない。
判らない時は本人に聞くのが一番だとジャクリーンは問うてみた。
「どうしてウォリィは口付けをしないのです?」
「止まらなくなるから」
――さらりと怖い事を言わないで――
即答だったが、ウォレスとしては昼とか夜に限らずキスをしてしまえばコトに及んでしまうので自制をしているのだと言う。
「じゃぁ夜ならいいのでは?寝所には2人ですし」
「離せる自信がない。皇都行きがなければなぁ」
――ありがとう、結婚式――
辺境に来てウォレスのネバネバベッタリな愛から本能で感じる身の危険。
「うふふ。ウォリィったら冗談が好きなのね」
「冗談?まさか!試してみるか?初めての事だから抑制できるか保証は出来ないが」
ぐぐいと近寄ってくる超絶美丈夫の御尊顔。
それだけでも心臓にはかなりの負担も感じる。
「よし!こういう時は体を動かすのが一番だ!」
――え?ここで?!――
ジャクリーンは自身がこんなに煩悩の塊だと思わなかった。
体を動かすと言ったウォレスはジャクリーンをポニーの背に乗せると騎乗訓練を始めたからだった。
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