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第14話  苦言と本心。そして再会

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「今日で20歳かぁ…相変わらずな顔ね」

鏡を見るシェイナは鏡に映った消えないソバカスだらけの自分を見て溜息を吐いた。

化粧をすれば隠す事は出来るし、煎じている薬草の湿布をしてかなり薄くはなったけれどスッピンになれば毎回鏡を見てため息が出てしまう。

両親双方の祖母にも、そして母もソバカスは沢山あって、遺伝だとしか思えなかった。
このソバカスを可愛いと言ってくれるのは家族、そして…。

「チャールズだけだったのよね」

ビヴァリーは「ソバカス…汚いわよ。みっともない」とハッキリと言った。
今となってはチャールズの言葉が本心かどうかすら怪しいが、変えようのない容姿について否定的な事を言われるくらいなら嘘の方がまだ優しさを感じると思えた。

ビヴァリーは美しく、その美しさも武器だと自負していた。
だからこそ美容については五月蠅く、化粧で隠すシェイナに事あるごとに言っていた。

「化粧で誤魔化すなんて嘘を吐くと同じよ。子供が出来てもそうやって生きていくの?恥ずかしくない?あるがままが一番美しいのよ?恥ずかしがらずに見せればいいのよ。笑われたってそれがシェイナだし、変えようなんかないでしょう?」

「化粧だもの。隠してるんじゃないわ」

「同じよ。化粧は自分の良さを引き立たせる道具なの。欠点を隠すものじゃないって言ってるの。あ~ごめんね。私、ソバカスなんて出来た事ないから化粧で隠してまで夜会に行きたいシェイナがちょっと理解出来ないわ」

ビヴァリーの言葉も良かれと思って言っているのか、化粧をせねばならない時に限って苦言を受けてしまうシェイナは、大きなお世話!と思いつつも「ビヴァリーの取柄は色白の美人ってだけだから判らないでしょうね」と嫌味の1つでも言い返したかったが、言い返すと面倒なのがビヴァリー。

1が10になって返って来るので言い返せなかった。

――ビヴァリーのこと…なんだかんだで私は疎ましくは思ってたのよね――

姉妹のように育ったからこそ、お互いの良い面も悪い面も知っているし、触れられたくない事も知っていた。


勿論シェイナにも嫌な部分はあった。
小さな「嫌」「不満」が積もり積もって2人はあんな行動に出たのだろうかと考えてみる。
しかしシェイナへの不満から来る当てつけで「まぁ仕方ない」と思えるのはチャールズだけだ。

ビヴァリーがチャールズを寝取ったのがシェイナへの嫌がらせだとしたところで損になりこそすれ、得になるような事は何1つない。

シェイナだって比べてはいけないと思うが、ケインとチャールズどちらかと聞かれればチャールズには申し訳ないが総合的に見てケインを選ぶ令嬢しかいないだろうと思うのだ。

それまでのシェイナなら見た目だけではなく自分の弱さも見せてくれたチャールズを選んだだろう。そんな変わり者はシェイナだけだろうとも思う。

そのケインが婚約者で問題もなかった2人。チャールズと関係を持つ事でむしろ全てを失う可能性が高いのだからシェイナにはビヴァリーがどうして?と謎は全く解けなかった。

「考えても仕方ないわ。あっと…時間、時間。遅れる所だった」


いつもこの曜日に教会に行く用事はなかったが、神父に是非にと誘われたのだ。
何があるかと言えば来月に迫ったバザー用に持ち込まれた品の選定を手伝う。

持ち込まれるのは善意の品ばかりではない。
神父は何でも「ありがとうございます」と受け取るのだが、その中にはどう見てもゴミにしか見えない品も含まれている。

食べ残しがそのままの皿であったり、汚れた衣類、壊れて原型をとどめない玩具、不用品に生きた犬や猫にウサギ。心無い者は何処にでも存在するのである。

両親が共に工房にいたため、工房に声をかけてシェイナは教会に向かった。


★~★

「遅れちゃう。急がなきゃ」

早歩き、時に小走りになって教会に向かうが、時間ギリギリになったのは今日はライネルが不在というのもあった。

――私ってちゃっかりしてるわ――

そう思いながらシェイナは教会に急ぐのだがライネルが不在。
行きたくない訳ではないがシェイナにいつものフットワークはない。

それでも頼まれたからには出向かねばと先を急ぐシェイナは突然腕を掴まれ露地に引っ張り込まれてしまった。


「きゃぁっ」
「静かに…シェイナ…会いたかったっ」

腕を掴んできたのはチャールズ。
突然のことに体を強張らせるシェイナだったがチャールズはお構いなしに甘い香りをさせてシェイナを強く抱きしめた。

「離してっ」
「シェイナ…可愛い…会いたくて堪らなかった。俺の名を呼んでくれよ…あぁシェイナ…」

藻掻くシェイナにチャールズは抱きしめる力を更に強めた。
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