戦闘狂と呼ばれる男に嫁ぎたくなくて逃げたはずなのに何故か溺愛されている奥様になっていた

cyaru

文字の大きさ
40 / 45

第39話  必死の釈明

「あのぉ。マッスル様ですよね?」

店員を一喝していた時のミネルバとはまるで別人。今にも貧血で倒れそう、そんな令嬢を演じるミネルバにプテロインは視線も向けない。

「私ぃ。リーム伯爵家のキャサリンって言うんですけどぉ」

1言口にする度にプテロインとの距離を詰めるミネルバをリーム伯爵は悪い夢を見ているんじゃないか、ここは現実なんだろうかと思いつつだがリーム伯爵の体が年齢を感じさせない反応をした。

「黙れ!もう何も言うな!!」

これ以上は墓穴が大きく、そして深くなるだけ。
プテロインは知っているのだ。知っていてこの縁談を受けたとしか思えなかった。

ではなぜ?リーム伯爵はこれからの事、10億の返金などもだが、まさか脱税などがばれていたらとんでもない事になる。

かなり上手く立ち回らないと首が皮一枚で繋がっているこの状況を打破できない。思考が大混戦して何から片付けていいのか纏まらないけれど、今出来ることはミネルバを黙らせることなのは判る。

必死でミネルバの口に手を押し当て、なんなら拳にして口の中に突っ込む勢いで黙らせようとした。


「あ、あの、何か誤解があるようですので後ほど説明に伺わせて頂きたく…」
「まだ貴様のアホ面を見なければならないのか?私の時間を何だと思っているんだ?」
「それは!!はい、貴重なお時間なのですがこの婚姻話で解釈の相違と申しますか…決して何かを企んでなどおりませんが誤解をされているようで…それは私も心苦しく」
「貴様の心や財布が苦しくなろうと私の知った事ではないが、今、ここで幾つかの誤解は解いてやろう」

リーム伯爵は顔面蒼白になり、プテロインが何処まで知っているのか。怖くてこの場から逃げ出したくて堪らないが,相手は”美しき殺戮魔”だ。背中を向けることで半歩も進めず胴体が2つに切り離されそうな気がしてならなかった。

「まず、貴様はキャサリンとは生物学的上の父親ではあるが、父親である責務はとうに放棄している。違うか?」
「それは誤解です。家に!家に帳簿があります!どれほど金を送金していたかの証拠になります。確かに目の届くところで養育はしていませんがそれも伯爵としての務めを果たさねばならす、国に貢献するためには致し方なかったのです」

揉み手で「誤解ですよ?」とへらへら笑いながらプテロインに釈明をするが、リーム伯爵には親としての責任を放棄の意味はよく判っていた。

調べたのだ。夫人がまだ愛人だったときに先妻を領地に送り夫婦としては破綻していると離縁できると言われた。当主にはなったものの法には疎く、そんなことが本当に出来るのかを調べた。

すると確かに夫人の言う通り、別居生活が長いと別居の理由によって離縁が出来ることを知った。同時に子供の養育についても。

先妻と正式に離縁となったのを機に送金を打ち切ったのは、養育をせねばキャサリンの今後について口出しする権利も失う事は判っていたけれど、そんなことは黙っていれば誰にも判らないと考えてしまった。
まさかプテロインがそこを突いてくるとは思わなかった。

「それこそ誤解です。ちゃんと養育費は送っていましたし、その証拠にキャサリンは自ら王都に来たのです」

「ほぅ。ではいつ王都に来た?」
「2年前です」
「2年?」
「あ、間違いました。に、2か月前だったでしょうか…3か月??最近です。最近!」
「貴様は私が2か月と2年の差が判らない馬鹿に見えるのか?それに先ほどその女は自分をキャサリンと名乗ったのだが?」

クイッと指でミネルバをプテロインが示すとリーム伯爵はミネルバを背に隠し「この子は気狂いでして。誰にでもなりたがるのです」と言い訳を口にした。

「何言ってるのよ!私、知ってるんだからね?何も言わずに私をマッスル家に嫁がせようとしてたじゃない!」
「なっ!何を言うんだ!」

どうしてミネルバがその事を知っているのか。リーム伯爵はさらに焦りが強くなったがミネルバはそれ以上を口にしない。何故かと言えばミネルバも実は私が本物のキャサリンと言い切ってプテロインの妻になったほうがもっとぜいたくな暮らしが出来ると踏んだからである。恐ろしい話が流れる男でも「私の体を知ればイチコロ」と篭絡は赤子の手を捻るよりも簡単だと思ったし、こんな大チャンスを逃したくはなかった。

そのためには「私は代役」なんて口が裂けても言えない。
ミネルバは本物のキャサリンの顔は知らず、プテロインが妻と紹介する女は現在進行形でリーム家と結婚話もあるのだから単なる愛人としか思っていなかった。

人前で「俺の女」「嫁さん」などと言わなければ拗ねて手に負えない女などごまんといる。この女もそのレベルだと鼻で笑い、プテロインが「妻」と紹介したのも面倒ごとを避けるためとしか思わなかった。

「あの、私は良いんです。愛し愛されで結ばれるのは幸せですから。妻として夫の言動を否定することはありませんのでご安心ください。きっと彼女さんとも私、仲良くやれると思うんです。うふっ」
「ばっ!馬鹿。何を言ってるんだ!」
「もぉ。お父様は黙ってて。余計に誤解を広げてしまうだけだわ」

プテロインの近くへと前に出ようとするミネルバと、そうはさせじと体を盾に後ろに追いやろうとするリーム伯爵だったが、面倒な人間がまた入店してきた。
感想 2

あなたにおすすめの小説

わたしさえいなければ、完璧な王太子だそうです。

ふらり
恋愛
人並外れた美貌・頭脳・スタイル・武勇を持つウィンダリア王国の25歳の王太子は、完璧な王太子だと言われていた。ただし、「婚約者さえいなければ完璧な王太子なのに」と皆が言う。12歳の婚約者、ヴァイオレット・オルトニーは周囲から憐みの目を向けられていた。 「私との婚約は、契約で仕方なくなのかい? もう私に飽きてしまっている? 私は今でも君にこんなに夢中なのに」 13歳年下の婚約者少女に執着溺愛する美貌も能力も人間離れした王太子様と、振り回される周囲のお話です。小説家になろうにて完結しております。少しずつこちらにもあげていくつもりです。ファンタジー要素はちょっぴりです。

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

分厚いメガネを外した令嬢は美人?

しゃーりん
恋愛
極度の近視で分厚いメガネをかけている子爵令嬢のミーシャは家族から嫌われている。 学園にも行かせてもらえず、居場所がないミーシャは教会と孤児院に通うようになる。 そこで知り合ったおじいさんと仲良くなって、話をするのが楽しみになっていた。 しかし、おじいさんが急に来なくなって心配していたところにミーシャの縁談話がきた。 会えないまま嫁いだ先にいたのは病に倒れたおじいさんで…介護要員としての縁談だった? この結婚をきっかけに、将来やりたいことを考え始める。 一人で寂しかったミーシャに、いつの間にか大切な人ができていくお話です。

出生の秘密は墓場まで

しゃーりん
恋愛
20歳で公爵になったエスメラルダには13歳離れた弟ザフィーロがいる。 だが実はザフィーロはエスメラルダが産んだ子。この事実を知っている者は墓場まで口を噤むことになっている。 ザフィーロに跡を継がせるつもりだったが、特殊な性癖があるのではないかという恐れから、もう一人子供を産むためにエスメラルダは25歳で結婚する。 3年後、出産したばかりのエスメラルダに自分の出生についてザフィーロが確認するというお話です。

お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。 私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。 やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。 そう自由……自由になるはずだったのに…… ※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です ※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません ※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。 そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。 たった一つボタンを掛け違えてしまったために、 最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。 主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?

【完結】愛していると気づいたから、私はあなたを手放します

妄夢【ピッコマノベルズ連載中】
恋愛
愛しているのに、触れられない。 幼なじみの夫は、こう言った。 「もう、女性を愛することはできない」と。 それでも「君がいい」と言い続ける彼と、 子どもを望む現実の間で、私は追い詰められていく。 だから決めた。 彼のためにも、私は他の誰かを探す。 ――そう思ったのに。 なぜあなたは、そんな顔で私を追いかけてくるの? これは、間違った優しさで離れた二人が、 もう一度、互いを選び直すまでの物語。 ※表紙はAI生成イラストを使用しています。