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第39話 必死の釈明
「あのぉ。マッスル様ですよね?」
店員を一喝していた時のミネルバとはまるで別人。今にも貧血で倒れそう、そんな令嬢を演じるミネルバにプテロインは視線も向けない。
「私ぃ。リーム伯爵家のキャサリンって言うんですけどぉ」
1言口にする度にプテロインとの距離を詰めるミネルバをリーム伯爵は悪い夢を見ているんじゃないか、ここは現実なんだろうかと思いつつだがリーム伯爵の体が年齢を感じさせない反応をした。
「黙れ!もう何も言うな!!」
これ以上は墓穴が大きく、そして深くなるだけ。
プテロインは知っているのだ。知っていてこの縁談を受けたとしか思えなかった。
ではなぜ?リーム伯爵はこれからの事、10億の返金などもだが、まさか脱税などがばれていたらとんでもない事になる。
かなり上手く立ち回らないと首が皮一枚で繋がっているこの状況を打破できない。思考が大混戦して何から片付けていいのか纏まらないけれど、今出来ることはミネルバを黙らせることなのは判る。
必死でミネルバの口に手を押し当て、なんなら拳にして口の中に突っ込む勢いで黙らせようとした。
「あ、あの、何か誤解があるようですので後ほど説明に伺わせて頂きたく…」
「まだ貴様のアホ面を見なければならないのか?私の時間を何だと思っているんだ?」
「それは!!はい、貴重なお時間なのですがこの婚姻話で解釈の相違と申しますか…決して何かを企んでなどおりませんが誤解をされているようで…それは私も心苦しく」
「貴様の心や財布が苦しくなろうと私の知った事ではないが、今、ここで幾つかの誤解は解いてやろう」
リーム伯爵は顔面蒼白になり、プテロインが何処まで知っているのか。怖くてこの場から逃げ出したくて堪らないが,相手は”美しき殺戮魔”だ。背中を向けることで半歩も進めず胴体が2つに切り離されそうな気がしてならなかった。
「まず、貴様はキャサリンとは生物学的上の父親ではあるが、父親である責務はとうに放棄している。違うか?」
「それは誤解です。家に!家に帳簿があります!どれほど金を送金していたかの証拠になります。確かに目の届くところで養育はしていませんがそれも伯爵としての務めを果たさねばならす、国に貢献するためには致し方なかったのです」
揉み手で「誤解ですよ?」とへらへら笑いながらプテロインに釈明をするが、リーム伯爵には親としての責任を放棄の意味はよく判っていた。
調べたのだ。夫人がまだ愛人だったときに先妻を領地に送り夫婦としては破綻していると離縁できると言われた。当主にはなったものの法には疎く、そんなことが本当に出来るのかを調べた。
すると確かに夫人の言う通り、別居生活が長いと別居の理由によって離縁が出来ることを知った。同時に子供の養育についても。
先妻と正式に離縁となったのを機に送金を打ち切ったのは、養育をせねばキャサリンの今後について口出しする権利も失う事は判っていたけれど、そんなことは黙っていれば誰にも判らないと考えてしまった。
まさかプテロインがそこを突いてくるとは思わなかった。
「それこそ誤解です。ちゃんと養育費は送っていましたし、その証拠にキャサリンは自ら王都に来たのです」
「ほぅ。ではいつ王都に来た?」
「2年前です」
「2年?」
「あ、間違いました。に、2か月前だったでしょうか…3か月??最近です。最近!」
「貴様は私が2か月と2年の差が判らない馬鹿に見えるのか?それに先ほどその女は自分をキャサリンと名乗ったのだが?」
クイッと指でミネルバをプテロインが示すとリーム伯爵はミネルバを背に隠し「この子は気狂いでして。誰にでもなりたがるのです」と言い訳を口にした。
「何言ってるのよ!私、知ってるんだからね?何も言わずに私をマッスル家に嫁がせようとしてたじゃない!」
「なっ!何を言うんだ!」
どうしてミネルバがその事を知っているのか。リーム伯爵はさらに焦りが強くなったがミネルバはそれ以上を口にしない。何故かと言えばミネルバも実は私が本物のキャサリンと言い切ってプテロインの妻になったほうがもっとぜいたくな暮らしが出来ると踏んだからである。恐ろしい話が流れる男でも「私の体を知ればイチコロ」と篭絡は赤子の手を捻るよりも簡単だと思ったし、こんな大チャンスを逃したくはなかった。
そのためには「私は代役」なんて口が裂けても言えない。
ミネルバは本物のキャサリンの顔は知らず、プテロインが妻と紹介する女は現在進行形でリーム家と結婚話もあるのだから単なる愛人としか思っていなかった。
人前で「俺の女」「嫁さん」などと言わなければ拗ねて手に負えない女などごまんといる。この女もそのレベルだと鼻で笑い、プテロインが「妻」と紹介したのも面倒ごとを避けるためとしか思わなかった。
「あの、私は良いんです。愛し愛されで結ばれるのは幸せですから。妻として夫の言動を否定することはありませんのでご安心ください。きっと彼女さんとも私、仲良くやれると思うんです。うふっ」
「ばっ!馬鹿。何を言ってるんだ!」
「もぉ。お父様は黙ってて。余計に誤解を広げてしまうだけだわ」
プテロインの近くへと前に出ようとするミネルバと、そうはさせじと体を盾に後ろに追いやろうとするリーム伯爵だったが、面倒な人間がまた入店してきた。
店員を一喝していた時のミネルバとはまるで別人。今にも貧血で倒れそう、そんな令嬢を演じるミネルバにプテロインは視線も向けない。
「私ぃ。リーム伯爵家のキャサリンって言うんですけどぉ」
1言口にする度にプテロインとの距離を詰めるミネルバをリーム伯爵は悪い夢を見ているんじゃないか、ここは現実なんだろうかと思いつつだがリーム伯爵の体が年齢を感じさせない反応をした。
「黙れ!もう何も言うな!!」
これ以上は墓穴が大きく、そして深くなるだけ。
プテロインは知っているのだ。知っていてこの縁談を受けたとしか思えなかった。
ではなぜ?リーム伯爵はこれからの事、10億の返金などもだが、まさか脱税などがばれていたらとんでもない事になる。
かなり上手く立ち回らないと首が皮一枚で繋がっているこの状況を打破できない。思考が大混戦して何から片付けていいのか纏まらないけれど、今出来ることはミネルバを黙らせることなのは判る。
必死でミネルバの口に手を押し当て、なんなら拳にして口の中に突っ込む勢いで黙らせようとした。
「あ、あの、何か誤解があるようですので後ほど説明に伺わせて頂きたく…」
「まだ貴様のアホ面を見なければならないのか?私の時間を何だと思っているんだ?」
「それは!!はい、貴重なお時間なのですがこの婚姻話で解釈の相違と申しますか…決して何かを企んでなどおりませんが誤解をされているようで…それは私も心苦しく」
「貴様の心や財布が苦しくなろうと私の知った事ではないが、今、ここで幾つかの誤解は解いてやろう」
リーム伯爵は顔面蒼白になり、プテロインが何処まで知っているのか。怖くてこの場から逃げ出したくて堪らないが,相手は”美しき殺戮魔”だ。背中を向けることで半歩も進めず胴体が2つに切り離されそうな気がしてならなかった。
「まず、貴様はキャサリンとは生物学的上の父親ではあるが、父親である責務はとうに放棄している。違うか?」
「それは誤解です。家に!家に帳簿があります!どれほど金を送金していたかの証拠になります。確かに目の届くところで養育はしていませんがそれも伯爵としての務めを果たさねばならす、国に貢献するためには致し方なかったのです」
揉み手で「誤解ですよ?」とへらへら笑いながらプテロインに釈明をするが、リーム伯爵には親としての責任を放棄の意味はよく判っていた。
調べたのだ。夫人がまだ愛人だったときに先妻を領地に送り夫婦としては破綻していると離縁できると言われた。当主にはなったものの法には疎く、そんなことが本当に出来るのかを調べた。
すると確かに夫人の言う通り、別居生活が長いと別居の理由によって離縁が出来ることを知った。同時に子供の養育についても。
先妻と正式に離縁となったのを機に送金を打ち切ったのは、養育をせねばキャサリンの今後について口出しする権利も失う事は判っていたけれど、そんなことは黙っていれば誰にも判らないと考えてしまった。
まさかプテロインがそこを突いてくるとは思わなかった。
「それこそ誤解です。ちゃんと養育費は送っていましたし、その証拠にキャサリンは自ら王都に来たのです」
「ほぅ。ではいつ王都に来た?」
「2年前です」
「2年?」
「あ、間違いました。に、2か月前だったでしょうか…3か月??最近です。最近!」
「貴様は私が2か月と2年の差が判らない馬鹿に見えるのか?それに先ほどその女は自分をキャサリンと名乗ったのだが?」
クイッと指でミネルバをプテロインが示すとリーム伯爵はミネルバを背に隠し「この子は気狂いでして。誰にでもなりたがるのです」と言い訳を口にした。
「何言ってるのよ!私、知ってるんだからね?何も言わずに私をマッスル家に嫁がせようとしてたじゃない!」
「なっ!何を言うんだ!」
どうしてミネルバがその事を知っているのか。リーム伯爵はさらに焦りが強くなったがミネルバはそれ以上を口にしない。何故かと言えばミネルバも実は私が本物のキャサリンと言い切ってプテロインの妻になったほうがもっとぜいたくな暮らしが出来ると踏んだからである。恐ろしい話が流れる男でも「私の体を知ればイチコロ」と篭絡は赤子の手を捻るよりも簡単だと思ったし、こんな大チャンスを逃したくはなかった。
そのためには「私は代役」なんて口が裂けても言えない。
ミネルバは本物のキャサリンの顔は知らず、プテロインが妻と紹介する女は現在進行形でリーム家と結婚話もあるのだから単なる愛人としか思っていなかった。
人前で「俺の女」「嫁さん」などと言わなければ拗ねて手に負えない女などごまんといる。この女もそのレベルだと鼻で笑い、プテロインが「妻」と紹介したのも面倒ごとを避けるためとしか思わなかった。
「あの、私は良いんです。愛し愛されで結ばれるのは幸せですから。妻として夫の言動を否定することはありませんのでご安心ください。きっと彼女さんとも私、仲良くやれると思うんです。うふっ」
「ばっ!馬鹿。何を言ってるんだ!」
「もぉ。お父様は黙ってて。余計に誤解を広げてしまうだけだわ」
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