婚約者、返品いたします

cyaru

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VOL:02   美味しさ半減

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シャロットの隣に座ろうとしたフィリップの腕を掴んで自分の隣に引き寄せ、強引に座らせるとまるでカフェの常連だとでも言いたいのかメニュー表を自分向けに開くとシャロットに説明を始めた。


「アップルパイも良いんだけど、ベリーパイがお勧めなの。で、飲み物はカフェオレ。断然シロップ多め!」
「ごめんなさい。私、ミルクにはアレルギーがあって飲めないの」
「え?うっそ。まさかの意識高い系?カフェの牛乳はダメとか?」
「そういうことではなくて」
「でも大丈夫。ここのミルクはね、生乳100%なの」


隣のブースから失笑が聞こえてくるのは気のせいだろうか。
カフェの給仕も注文を取りに来たのは良いがシャロットの言葉を聞いて不安な顔をしている。

「私は珈琲でお願いします」
「はい。珈琲で御座いますね」
「えー。なんでぇ?もしかしてシャロット、私の事、嫌ってるとか?だから私のお勧め、敢えて外してる?」
「いいえ、そう言う訳では」

喉元まで「よく判ってるじゃない」と言葉がこみ上げてきたがシャロットは引き攣った笑顔を浮かべて言葉を飲み込んだ。


フィリップも注文をしようとするのだが、アリッサは「待って、待って」とケーキを見てあれもいいがこれもいいと迷い始める。

――ベリーパイがお勧めなんじゃないの?――

あんなにシャロットに勧めてきたベリーパイは選ばずチーズタルトと、ガトーショコラをアリッサは頼んだ。飲み物もイチオシのカフェオレではなくフラペチーノ。

オマケに1人で2つのケーキを食べるのではなく、フィリップとシェアだと嬉しそうに言う。
これではどの組み合わせが恋人同士なのかよく判らない展開。

注文してきた品が運ばれて来る間、アリッサとフィリップはお互いでしか解らない話で盛り上がる。シャロットには時折「ね?そう思わない?」「聞いた?ウケるよね」アリッサが話を振ってくれるが、全く内容が判らない。

しかもその内容が2人が恋人で付き合っていた時の話なので、要約すれば自身で語る自身の恋バナ。短く言えば惚気でしかなく聞きたくもない。

フィリップと時折視線が合うけれど「ごめん」と手刀を切るように小さく手を動かし、フィリップもアリッサの話は話半分にも聞いていない。


「あの。今日ってアリッサ様もご予約を?」


話の腰を折るようで申し訳なかったが、アリッサの話が少し途切れたところで問うてみると説明をしてくれたのはフィリップだった。

「あ~。予約が取れたって話をしたらアリッサも来たことないっていうからさ」

――は?貴方が誘ったって事?――

それもあり得ないが、そうなればさっきのアリッサの言葉もあり得ない。

「え?でも‥‥でしたら先ほどのお勧めって?」
「だってショーケースに一番売れ残ってるから直ぐに持ってきてもらえそうだったんだもの」

――は?それお勧めとは言わないんじゃ?――

「廃棄になるくらいならシャロットが食べれば皆ラッキーでしょ?シャルは美味しいケーキが食べられるし、お店は売れ残らないし、ショーケースからは1人分減るから ”売れてるかも?” って思った馬鹿が頼むかも知れないでしょ?こういうのなんて言うんだっけ?一網打尽?」
「一石二鳥だろ?」
「あ~!それそれ!私、なんて言ったっけ?一網打尽?キャーッハッハ。私、やっちゃったー」


アリッサは自分の手を軽く握ると頭にあてて、舌をペロっと出した。

――うん。お勧めになかった珈琲は美味しいわ――

シャロットは「イタい」と出そうになった言葉を珈琲で押し込んだ。



ケーキとドリンクが運ばれてくると「きゃぁ♡可愛い~」と大げさに手を叩いてアリッサは喜ぶのだが1口食べると…。

「ね?このガトーショコラ。カフェ・ド・ルフの方が美味しいと思わない?」

チョコの香りが鼻に抜ける香りや口どけが他店に負けている、と蘊蓄うんちくを語り始める。ハッキリ言って美味しいスィーツを食べていたとしても耳から聞こえるアリッサの言葉で美味しさ半減だ。

「おい。ここでそれを言うか?」
「だってぇ。美味しくないのに嘘つく必要、なくない?」


言いたい事は解るけれど、時と場所を考えろ。シャロットは珈琲と一緒に言葉を飲み込む。



ケーキも可愛く盛り付けられているのに1か所から順にフォークを入れるのではなく、色んな箇所からフォークを入れるので食い散らかし状態。


「ん~。ショコラはもういいかな。フィル食べて」
「マジかよ。またか。自分で食べきれないなら頼むなよ」
「そう言わずに~。フィルの食べてるチーズタルトが食べたいの。その為にお腹に余力残したんだからぁ」
「あ、おいっ」

有無を言わせずフィリップの食べかけの皿とガトーショコラの皿を入れ替えるとフォークですらフィリップの手にしたフォークを取り、アリッサの持っていたフォークと入れ替えた。

「自分のフォークで食えよ」
「だってぇ。チョコついてるし。チーズの味が壊れるじゃない?」


――口の中はチョコ味でしょうに!――

チーズタルトもフォークでサクサクのシュクレ生地とチーズ生地を分離させてぐちゃぐちゃ。視覚から得られる美味しさは半減どころか激減だ。

見ているだけでもうウンザリ。
珈琲をほぼ飲み終わったシャロットは帰ろうと思いカバンから財布を取りだそうとした時だった。

「あっ、シャロット」

――きたよ――

これからがアリッサの本題なのだ。

「用があるので先に帰ります」
「もうちょっといいじゃーん。お願いがあるのにぃ。待ってよぉ」
「シャロット、聞くだけ?な?頼むよ」

――あぁ。もうウンザリ――

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