婚約者、返品いたします

cyaru

文字の大きさ
23 / 46

VOL:23   ハートを射貫かれて

しおりを挟む
「これでスッキリね」
「あぁ。手続き上はね。元婚約者にはなったがあの2人の事だ。暫くの間は窮屈に感じるだろうが礼拝も、そうだな。買い物も護衛を増やすし、出来れば夜会は断るようにして茶会は余程仲の良い友人だけのこじんまりとしたものだけにしておくほうがよさそうだ」


パルプ伯爵の心配は親としては当然の事。
これまではに留まっていたので気分の良い物ではなかったけれど、シャロットが言われているのは承知していても実際にコソコソ、ヒソヒソと話している場に遭遇しなければ使用人たちは屋敷の中では話題にすらしないのだから聞こえては来ない。

自分から触れようとしない限り実害はないのだ。

「はい。解りました。幸いに…夜会はしばらく出席の予定はありませんし、茶会も友人が気を使ってくれているので友人も茶会を開いていないので予定もありません。買い物も欲しい物はないし、友人に手紙を書く便せんは注文すれば届くので出かけるとすれば礼拝くらいです」


礼拝も絶対に教会に行って祈らねばならないと決まりがある訳ではないので、屋敷の中でその日は祈りを捧げても批難されることはないけれど、ずっと屋敷の中で過ごすのは息が詰まる。

――はぁ…こんな時出不精だったら気にならないんだろうなぁ――

父親の顔色もあまり良くなくて、婚約解消の手続きだけでも大変だったろうにそれが予想よりも早く婚約破棄に切り替わったので書類は出来ていても何かにつけて走り回っていたのだ。

婚約破棄でダメージを受けるのは有責側だけでなく、パルプ伯爵家も傷を負ってしまう。
シャロットは申し訳なく感じたが、そんなシャロットを見てパルプ伯爵は「気にするな」と声を掛けた。

世の中は理不尽なものだ。
有責でなくても好き勝手に他人は噂をする。

不貞をされた側にも原因があると平気で言う人間だっていれば、貰い事故でもそこにいた方が悪いと言うものだっている。

加害者側にも理由があるのだから婚約破棄に踏み切るよりも歩み寄りを何故怠ったのかと当事者でもないのに責めて来る者だっている。被害者側に努力が足りないと新たな二次被害を作り始めるのだ。


シャロットは見えないところで父のパルプ伯爵や、後継者の兄がシャロットへの誹謗中傷を食いめるために奔走してくれていた事を知っているので余計に申し訳なく感じた。


「部屋に戻ります」
「うむ。そう言えば…シャロット。セキセ領に行ってみないか?長閑な領だがこの時期は王都よりも直射日光も当たらないし過ごしやすい。避暑にはもってこいだ」

セキセ領はパルプ伯爵家の所有する領地の中でも王都から一番離れている場所にあって、寮に流れている川の対岸は隣国だ。

長閑と言っているが、川の向こうはこの国の王都よりも賑やかな街。
それもいいかも知れないとシャロットは「考えておくわ」父に言葉を返し部屋に戻った。


☆~☆

籠の鳥ってこんな感じなのかなと開けた窓から入って来る風にすら「自由でいいわね」と嫉妬してしまいそうになる数日を過ごしていると…。

「お嬢様っ。元気っスか?」

庭から窓越しに声を掛けてきたのはバークレイだった。

「ど、どうしたんですか?」
「この時期はね、ほら、あそこ見えます?」
「あそこ??」
「そ。枝っスよ。鳥が巣を作ってるんスけど卵とかヒナを狙って蛇だったり、巣を横取りしようとする鳥もいたりなんで休憩時間の間は見回りしてるんスよ。お嬢様の顔が見えたから声かけてみた。ほら、街で流行ってるっしょ?踊ってみた風に声かけてみたっス」

軽いノリにシャロットは笑いそうになってしまったが気になるものが目に入った。

「ところでその腰のポーチは?動いてるみたいだけど」
「蛇ですよ。3匹。可愛いヒナを狙って不届きな蛇なんで捕まえてやりました」

――すん…捕まえたってどういうこと?――

「そ、その蛇をどうするの?殺しちゃうの?」
「ヒナが巣立ったら庭に戻します。ズルしてるのは俺だから蛇にはトバッチリですしね。殺すなんてとんでもない。多すぎるのは問題ですけど蛇だって生きるためには捕食しなきゃいけないだけですから」


バークレイは「鳥も蛇の卵食べるから依怙贔屓なんですけど」と言ってヘラっと笑った。

キュン♡

――え?私…なんで彼に胸がキュン?!――

不覚にもバークレイの笑顔がシャロットのハートを射貫いてしまった瞬間だった。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

王子様への置き手紙

あおた卵
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯

結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。

しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。 友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。 『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。 取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。 彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。

白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』

鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

婚約破棄されたので、戻らない選択をしました

ふわふわ
恋愛
王太子アルトゥールの婚約者として生きてきた 貴族令嬢ミディア・バイエルン。 だが、偽りの聖女シエナに心を奪われた王太子から、 彼女は一方的に婚約を破棄される。 「戻る場所は、もうありませんわ」 そう告げて向かった先は、 王都から遠く離れたアルツハイム辺境伯領。 権力も、評価も、比較もない土地で、 ミディアは“誰かに選ばれる人生”を静かに手放していく。 指示しない。 介入しない。 評価しない。 それでも、人は動き、街は回り、 日常は確かに続いていく。 一方、王都では―― 彼女を失った王太子と王政が、 少しずつ立ち行かなくなっていき……? 派手な復讐も、涙の和解もない。 あるのは、「戻らない」という選択と、 終わらせない日常だけ。

婚約破棄されましたが、私はもう必要ありませんので

ふわふわ
恋愛
「婚約破棄? ……そうですか。では、私の役目は終わりですね」 王太子ロイド・ヴァルシュタインの婚約者として、 国と王宮を“滞りなく回す存在”であり続けてきた令嬢 マルグリット・フォン・ルーヴェン。 感情を表に出さず、 功績を誇らず、 ただ淡々と、最善だけを積み重ねてきた彼女に突きつけられたのは―― 偽りの奇跡を振りかざす“聖女”による、突然の婚約破棄だった。 だが、マルグリットは嘆かない。 怒りもしない。 復讐すら、望まない。 彼女が選んだのは、 すべてを「仕組み」と「基準」に引き渡し、静かに前線から降りること。 彼女がいなくなっても、領地は回る。 判断は滞らず、人々は困らない。 それこそが、彼女が築いた“完成形”だった。 一方で、 彼女を切り捨てた王太子と偽聖女は、 「彼女がいない世界」で初めて、自分たちの無力さと向き合うことになる。 ――必要とされない価値。 ――前に出ない強さ。 ――名前を呼ばれない完成。 これは、 騒がず、縋らず、静かに去った令嬢が、 最後にすべてを置き去りにして手に入れる“自由”の物語。 ざまぁは静かに、 恋は後半に、 そして物語は、凛と終わる。 アルファポリス女子読者向け 「大人の婚約破棄ざまぁ恋愛」、ここに完結。

王太子に愛されないので、隣国王子に拾われました

鍛高譚
恋愛
「王太子妃として、私はただの飾り――それなら、いっそ逃げるわ」 オデット・ド・ブランシュフォール侯爵令嬢は、王太子アルベールの婚約者として育てられた。誰もが羨む立場のはずだったが、彼の心は愛人ミレイユに奪われ、オデットはただの“形式だけの妻”として冷遇される。 「君との結婚はただの義務だ。愛するのはミレイユだけ」 そう嘲笑う王太子と、勝ち誇る愛人。耐え忍ぶことを強いられた日々に、オデットの心は次第に冷え切っていった。だが、ある日――隣国アルヴェールの王子・レオポルドから届いた一通の書簡が、彼女の運命を大きく変える。 「もし君が望むなら、私は君を迎え入れよう」 このまま王太子妃として屈辱に耐え続けるのか。それとも、自らの人生を取り戻すのか。 オデットは決断する。――もう、アルベールの傀儡にはならない。 愛人に嘲笑われた王妃の座などまっぴらごめん! 王宮を飛び出し、隣国で新たな人生を掴み取ったオデットを待っていたのは、誠実な王子の深い愛。 冷遇された令嬢が、理不尽な白い結婚を捨てて“本当の幸せ”を手にする

元婚約者に未練タラタラな旦那様、もういらないんだけど?

しゃーりん
恋愛
結婚して3年、今日も旦那様が離婚してほしいと言い、ロザリアは断る。 いつもそれで終わるのに、今日の旦那様は違いました。 どうやら元婚約者と再会したらしく、彼女と再婚したいらしいそうです。 そうなの?でもそれを義両親が認めてくれると思います? 旦那様が出て行ってくれるのであれば離婚しますよ?というお話です。

処理中です...