王子殿下はブリュレが好きらしい

cyaru

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閑話休題 ラカントの誰得情報

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「本日はよろしくお願いいたします」

いきなりの勤務になれば戸惑う事もあるだろうと顔合わせも兼ねてミケネ侯爵夫妻はリシェルを連れてキジネ公爵家を訪れた。今日の仕事としては大まかな流れをキジネ公爵家の使用人に説明を受けるのみ。
使用人なのにお客様扱いをされる最初で最後の日となる。


リシェルがキジネ公爵家の使用人と共に屋敷の案内で各部屋を回っていると、廊下の向こうからラカントが歩いて来た。


「あれ?新しい使用人さんかい?」
「ラカント様、こちらは数日後よりミケネ侯爵家からこちらに出向となるリシェルです」
「リシェル・ボスクです。よろしくお願いいたします」


侯爵家の侍女ともなれば夫人に付いて夜会に出席する事もある。勿論ダンスなどを踊る訳でなくあくまでも夫人の付き人としての参加だが、カーテシーは叩きこまれる。

リシェルはラカントに対し、丁寧にカーテシーを取った。

「これは丁寧に。ラカント・エリスリトール・カスタードです。キジネ公爵家ではただの居候ですから気負いする事無くお願いしますね」


短い会話だったが、ラカントは「んにゃ?」と、何かを感じ取った。
直感なのか第六感なのか。リシェルの振る舞いには何の問題もないが何となく「焦げ目」を感じたのだ。

リシェルと別れてから一緒に歩いていたキジネ公爵家の執事に問いかけた。


「さっきの女性って幾つくらい…っと女性の年齢は失礼になるかな」
「左様でございますね。当てずっぽうでも失礼ですが知っている事で要らぬ疑いは持たれたくありませんので、何かの折にラカント様が聞かれては如何でしょう」
「やっぱり自分で聞かなきゃダメかな」
「えぇ。殊更女性の年齢については他人の口からは言えません」


ラカントも判っていた。
触れてならないのは万国共通で女性の年齢である。
間違ってしまうと明日がないのは女性の名前である。

――デリケートDEセンシティブ。女性は大事にしないと――


ごそごそと胸から懐中時計を取り出すとパチン!蓋を開けた。

ビバ!金があるって素晴らしい!
それまでは手慰みのお絵描きでしかなかった肖像画。金にモノを言わせて「ピックチャァ」という本人を鏡に映したようにその姿を紙に焼きつけたメープルにキスを落とす。

「奥様ですか?」

執事の問いにラカントははにかんだ。

「兄上がお妃様を娶ればね。今はまだ婚約者なんだ。幾つだと思う?」

ヘヘン!得意げにラカントはメープルの「ピックチャァ」を執事に見せた。
取り敢えず女性の年齢は見た目からマイナス5,6歳を言っておけば及第点。

「28・・・30手前ですかね」
「残念っ!メイちゃんはね、34歳なんだよ」

――すみません。本当は45歳くらいかと思いました――

執事は心で「セェェーッフ!」っと両手を広げたが、調子に乗ったラカントは誰得情報を執事に聞かせた。


「メイちゃんはね。カスタードは海に溶岩が流れ込む事もあって海水温が少し高いんだよ。それを利用してブリって魚の養殖業をしてるんだ。餌の時間になるとね、こんな大きな桶から柄杓で豪快に餌を撒くんだ。バチャバチャバチャー!ってブリが競ってメイちゃんの餌に食いつくんだよ」

「は、はぁ…それは壮観そうですね」

「でしょ?腕力も強くてね。力こぶなんて僕の倍以上が盛り上がるんだよ。くっきりと筋肉の線が出るから僕はいつもキレてるね!土台が違うよ!って声を掛けさせてもらってるんだ。あ、言っておくけど魅せる筋肉ではあるんだけど働く筋肉でもあるんだよ?血管がこう・・・筋肉に添うようになっててね(ウットリ)」

「えぇっと…すみません。ラカント様って22歳?でしたっけ」

「やだなぁ。21歳だよ。ついでに兄上も21歳。ママ違いって奴だよ」

「そこまでは聞いていません」

「でね?お腹もシックスパックって言うの?綺麗に割れてるんだよ。3人も子供を産んでるのに凄いよね」

「え?ラカント様のお子様ですか?」

「まっさかぁ!一番上の子は16歳だよ?幾ら僕が王子だからって4、5歳で子作りは出来ないよ。でさぁメイちゃんって謙虚でさ、交際1年の記念日に何が欲しい?って聞いたらなんて言ったと思う?」

「まぁ、指輪ですかね」

「ブッブー!残念。ゴム長靴が欲しいって言ったんだよ。だから取り寄せられるだけ色違いのサイズ違いで送ったら2500足になってね。置き場所がないって叱られちゃった」

「でしょうね…色違いはまだしもサイズ違いを贈る意味が解せませんけど」


執事はカスタード王国がここ3年ほどで過去が消し飛ぶほどの超経済大国になったのを知っている。
嬉しそうに隣で「メイちゃん情報」を聞かせてくれるラカントだが、結構貧乏性で着ている上着も何カ所か継接ぎされている事も知っている。

いまいち金の使い方がズレているのも知っているが、大恋愛の末に射止めた恋人が13歳も年上の子持ちだとは知らなかった。

――王子様になると奥が深いな――

執事は知らなかったことがもう1つある。
その後2時間も「メイちゃん情報」を聞かされる運命にあった事を。
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