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環流 虹向

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おれたちともだち

238:00:22

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今日も悠雪さんのとこ行かないと…。

あれから数週間経ったけど、毎日のように顔を見せないと延々に電話とメッセージが来るから仕方なく会いに行っている。

紀莉哉さんはメッセージのペースが落ちたら別れどきと言っていたけど、いつになるのか全く分からない。

ブッチしてもいいけど、このタイプはストーカーになったら今よりもめんどくさいことになりそうなので渋々悠雪さんの家に向かうためにいつもの繁華街を通り抜けていると、呑み会があったのかたまたまスーツ姿の春馬くんに会った。

春馬「帰り?」

幸来未「ううん。」

春馬「今から遊ぶの?」

幸来未「彼氏の家行ってくる。」

春馬「え?付き合えたの?」

と、春馬くんは何かの勘違いをしているらしくとっても驚いた顔をした。

幸来未「違う人だよ。」

春馬「…そうなんだ。」

少し困惑してる春馬くんは近場まで送ると言って終電ギリギリなのに私についてきた。

幸来未「春馬くんは呑み会?」

春馬「そう。仕事のだからさっさと抜けてきた。」

幸来未「めんどくさそうだもんね。」

春馬「お酌とか取り分けとか自分が好きな分好きなようにやらせてくれっていつも思うよ。」

そう言いながら笑う春馬くんに昔を思い出していると、悠雪さんのマンションが見える一本道まで来てしまった。

幸来未「ここら辺で大丈夫。電車の時間あるでしょ?」

春馬「いいよ。ここら辺治安悪いし、最後まで送る。」

…大丈夫、だよね?

悠雪さんがマンション前で待ってたことないし、大半この時間は紀莉哉さんとゲームしてるし…。

幸来未「じゃああとちょっとだけ。」

私は人通りの少なくなった暗い一本道を1人で歩くのが怖かったので、春馬くんにマンションの入り口前まで送ってもらおうと歩いていると向こう側に2人の人影が見えた。

その2人を見た私は思わず足が固まり、転びかけると春馬くんが肩を抱き上げるように掴み、私を助けてくれた。

春馬「なんもない所でつまづくっておばあちゃん?」

幸来未「そ、そうだ…」

「おーいっ。」

と、その2人組が私たちのことに気づいたのか声をかけて駆け寄ってきた。

春馬「あ、この間ぶり。今日はみんなで呑み?」

春馬くんはなんの躊躇もなくコンビニの袋を下げた紀莉哉さんと悠雪さんに夜の予定を聞いた。

紀莉哉「んー、その予定じゃなかったけど、春馬と久しぶりに呑みたいかも。どう?」

悠雪「…また買いに行くのだるいから、デリバリーにしよ。」

紀莉哉「んじゃー…、ヤンニョムろっ!」

そう言って紀莉哉さんはご機嫌な雰囲気で春馬くんの肩を組み、先に部屋に向かっていった。

私は残された悠雪さんの目を見て少し機嫌が悪いのを感じ取る。

幸来未「…ただいま。」

悠雪「うん。おかえり。今日はバイトじゃないの?」

と、悠雪さんは優しい作り笑顔をしながら私の手に指を絡めて、ない爪を立てるようにして握ってきた。

幸来未「バイトだよ。春馬くんとはたまたま会ったの。」

悠雪「たまたま、ね…。運命的だね。」

幸来未「そう言うんじゃ…」

悠雪「俺はメッセージで繋がらないと会えないのに…。」

そう言うと悠雪さんは急に私を抱き寄せて首回りにあったマフラーを外すと髪と一緒に首を噛んだ。

幸来未「んぃ…、いたい…っ。」

悠雪「2日バイト休みだからちょうどいいアクセサリーつけられたね。」

と、悠雪さんは私の髪の毛を指でどかし、首についた歯型を見た。

 悠雪「んー…、明日に消えちゃいそう。」

幸来未「お休みの日は悠雪の家にいるから…。首はやめて…。」

悠雪「よかった。2日間楽しみだね。」

そう言って悠雪さんはやっと本物の笑顔になり私を連れて部屋に行くと、先に戻っていた春馬くんがリビングの隠し壁収納にあった悠雪さんのDVDコレクションを見て目を光らせていた。

春馬「廃盤になって買えなくなったやつまである…。西宮、こんな博物館なんで教えてくれなかったの?」

幸来未「いや…、ここ悠雪の家だし…。」

紀莉哉「宝島は人に言うもんじゃないだろ?」

と、紀莉哉さんはダラダラとソファーに寝転がりながらデリバリーで何を頼むか決めていた。

春馬「それでも…、それでもこれがあるなら言ってよ…!」

春馬くんはずっと欲しいと言っていた30年前に販売していたタイムリープ系のDVDを手に取り、昔一緒に行った本屋で新刊の漫画を手に取った時のようにはしゃぐ。

悠雪「貸すくらいならいいけど…。」

春馬「え!ありがとう…!一旦今日ここで見てもいい?」

悠雪「え?まあ…、みんながそれでいいなら…。」

春馬「いいよね?」

と、春馬くんは瞬きするたびに星が出てきそうな目で私の目を見て聞いてきた。

幸来未「う、うん…。けど、それを借りて家で見るなら、その一段下にある“なみこの事情”を今見た方がいいんじゃない?」

私はプレミアDVDがまだあることを春馬くんに教えると春馬くんは驚きで口を閉じるのを忘れる。

春馬「…え?うわっ!?なんであるの?」

悠雪「…貰い物。」

紀莉哉「悠雪は映像系の知り合い多いから。」

春馬「すごっ…。パケ見るだけで朝が明そう…。」

そう言った春馬くんは本当に私たちに呼ばれるまでDVDのパッケージを1人夢中になって見ていた。

その様子にずっと驚いている悠雪さんはいつもより私の体に触れてくることは少なく、ご飯を食べる時も自分の手で自分の口に食べ物を運んでくれた。

外であった時はどうなるかと思ったけど、意外といい薬になってくれたみたい。

私は今日は抱かれ疲れる心配がないことにホッとして、デリバリーで届いたお酒とチキンを楽しんだ。


環流 虹向/23:48
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