エンディングノート

環流 虹向

文字の大きさ
上 下
32 / 97
BOYFRIEND

ぐりぐり執着

しおりを挟む
私は雨瑞くんが用意してくれたオレンジジュースを飲みながら、不機嫌な莉音にさっきからこじ開けられそうになる脚を必死に閉じる。

莉音「なんであいつ、俺には飲み物くれないの?」

明人「客じゃないから。それしかないでしょ。」

莉音「明人も違うじゃん。」

明人「私は常連だから。ここの太客。」

莉音「…ここよく来るんだ?」

やば…。

莉音の顔は明るくなったけど私の近い未来が真っ暗になった。

明人「すっごい朝早くね。モーニングパパッと食べて仕事行ってる。」

莉音「ブライダル系だったっけ?」

明人「…え?うん。」

私は莉音に自分の業種を覚えられていて驚く。

全く私のこと興味なさげだったのにそんなことは覚えてんだ。

莉音「人の結婚式見ると焦んの?」

明人「それよりやりがいが強いかも。」

莉音「へー…。まあ、お前って尽くす人間だもんな。」

明人「…そう、だね。」

と、私が莉音に無駄に尽くした過去をふと思い出し意識が記憶に持っていかれた瞬間、私の脚が開きすぐさま莉音の足が私のストッキングの向こう側にあるパンツに触れようとしてくる。

明人「…や、やめてよ。」

莉音「明人はちゃんと恥ずかしがるから好きなんだよな。他の奴、ノリノリ過ぎてつまんない。」

そう言った莉音は今では信之しか触られないところに布ごしだけれど触ってくる。

莉音「あれれ、なんか顔赤いね。溜まってんの?」

明人「ちがっ…う。」

莉音「明人の彼氏に会いたいんだけど、今日ここ来ないの?」

明人「…こない。」

莉音「残念。今の明人の顔見せたいのに。」

私はもう莉音から離れたくて席を立とうとテーブルに手をつくと、その手を莉音に掴まれはりつけにされてしまう。

明人「やめて…。」

莉音「彼氏呼ぶか、俺の携帯着拒取り消すか、ここでいくか、3つの内どれかだな。」

と、莉音は私の口に自分の体液を撒き散らす時にする恍惚そうな目をしながら笑顔で私を見てくる。

…3つ中で着拒取り消しが1番楽だけど1番嫌だ。

けど他2つはもっと嫌だ。

明人「けいた…」

「バナナジュースどうぞ。」

と、テーブルに強めに置かれたグラスを持っている手を見上げると、雨瑞くんが私に見せたことない冷めた表情をして莉音にバナナジュースを渡していた。

莉音「わぁ!俺も常連認定?」

そう言って莉音は私から手を離し、バナナジュースを飲む。

私はその間に姿勢を立て直し、莉音の足も自分から離す。

雨瑞「お猿さん認定です。店で盛らないでください。」

莉音「あれ。見られてた?」

雨瑞「はい。そういう店はこの周辺にはないんで、違う地域に行ってください。」

莉音「俺、そういうのは家に呼ぶタイプだから。」

雨瑞「…そうですか。じゃあ家に帰ってください。」

莉音「おー、じゃあ明人帰ろっか。」

と、莉音は体を乗り出して私の腕を掴んできた。

雨瑞「さっちゃんはまだここに用事があるんで。ダメです。」

そう言って雨瑞くんは私に抱きつきそのままソファー席に座った。

莉音「んー…?お前が明人の彼氏?」

雨瑞「…そうでもある。」

莉音「違うのか。明人の彼氏会いたいー。面食いな明人が選んだ彼氏見たいなー。」

雨瑞「…お前、顔にしか生きる糧もらえなかったのかよ。」

莉音「なにそれ?」

と、雨瑞くんの言葉で莉音の笑顔が一気になくなった。

雨瑞「顔とか見た目の前に、性格どうにかしろよ。人困らせてなにが楽しんだよ。もうこの店出禁な。」

莉音「えー…?性格って0円で作れるから本質これでも間に合ってるし、客として来てないから出禁は無理でしょ。」

雨瑞「性格は作れても本質は変えれないからストローの口先噛むんだろ?しかも見たメニューは散らかしたまま。それで作れてるって言えんの?」

莉音「…明人の前では作んなくていいし、作んのだるい。」

雨瑞「作んなくてもいいけど、迷惑かけんなよ。お前の迷惑は害悪って奴。さっちゃんにこれ以上構わないで。」

莉音「無理。明人の困った顔可愛いし。」

雨瑞「お前な…」

明人「雨瑞くん、私帰りたい。送って。」

私は雨瑞くんが手を出しそうなのを止めて、今日のチョコ製作は諦めることにした。

莉音「俺が送るよー。」

雨瑞「お前、さっちゃんが住んでるとこ知らないだろ。」

莉音「え?あの家引っ越した?」

明人「…引っ越した。」

莉音「なーんだ。じゃあ出来ないじゃん。誘い損じゃん。」

そう言って莉音は立ち上がり、テーブルに置いていた自分の携帯を手に取った。

莉音「携帯、取り消ししとけよ。じゃないとまた来るから。」

明人「分かった…。」

莉音「えー?なにが分かった?」

と、俯く私の顔を覗き込みながら莉音は聞いてきた。

明人「解除しときます…。」

莉音「何を?」

明人「着拒。」

莉音「続けて、さんはいっ。」

明人「電話の着拒、とりけ…」

私がそう言いかけると雨瑞くんの手が私の口を塞いだ。

雨瑞「ここに来てください。僕たちはお金落としてほしいので。」

莉音「あれ?でも出禁って言ってなかったっけ?」

雨瑞「お猿さんは出禁です。お客様ならギリ歓迎です。」

莉音「なるほどね。OK。じゃあまた来るねー。」

と、莉音は手をひらひら振ってやっと帰ってくれた。

明人「…ご、ごめん。お店に迷惑かけちゃう。」

雨瑞「いいよ。僕たちの前だったら人の目いっぱいあるし、かーくんも安心だと思うんだ。だよね、叶さん。」

綺咲「…う、うん!私たちの知らないとこで何かされても何も出来ないから。」

そう言ながらキッチンの陰に隠れて見守っててくれた綺咲さんが出てきた。

明人「…ありがとうございます。ちゃんと信之に言います。」

綺咲「うん。私たちもあれ来たらさっちゃんに連絡入れるから。その時はモーニングなしになっちゃうかもだけど、いいかな?」

明人「はいっ…。ありがとうございます。」

私は2人にたくさん感謝して雨瑞くんに家まで送ってもらった。


…………
綺咲さん、雨瑞くん、ありがとう。
なんとかして莉音のことを私の人生から追い出すので、少しの間迷惑をかけてしまいますがよろしくお願いします。
…………


環流 虹向/エンディングノート
しおりを挟む

処理中です...