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俺も一緒にドライブ行きたかったなと、考えながら事務所に戻る道を辿る。
学校が終わった後、沙樹と愛海、永海と悠さんで天の川を見るために車で地方に向かったらしい。
俺も誘われたけど、今日は仕事の予約が入っていたから時間を遅らせてもらうことは出来なかった。
今、俺がいる東京はまだ雲がかかっていて全く星が見えない。
雲の切れ間に真っ黒でなにもない空が見えるだけ。
この時期は雨が多いから雲があるのはしょうがないけど、何年くらい七夕に天の川を見れてないんだろう。
高校生の時に付き合っていた莉李と、学校をサボって“散歩”をした長野でも天の川は見れなかったんだよな。
…莉李は、天の川を見れたのかな。
莉李は高1の時、席が隣になって話しかけてくれた初めてのクラスメイト。
笑顔が多い子で特別楽しいことがあると鼻の上にシワを寄せてひまわりのように笑うその仕草がとても可愛らしい子。
少し朝が弱く遅刻気味で、校則違反の赤リップとふんわりパーマを学年指導の先生によく怒られていたけど全く気にせず自分の好きを貫いていた子。
出会ってから毎日のように最寄りの駅まで一緒に帰り、俺のバイト先にたまに寄ってくれるくらい仲良くしてくれたのはきっとすでに俺に好意を持っててくれたからなんだろうな。
俺のバイトが休みの日は、莉李が好きな図書館にあるプラネタリウムによく連れて行ってもらった。
季節によって話が変わり、最後には宇宙とは関係ない短編映画をドリンク1杯の値段で楽しめてしまうのが2人にとって最高のデートスポット。
クラスの他の子は有名なカフェの新しいメニューが出たと話す中、莉李は月に1度しか聞けない神話を今日は聞けると心躍らせていてとても可愛らしく思えた。
みんなは新しい物をたくさん欲しがるのに、莉李は俺との過ごす時間を求めてくれた。
誰にも必要とされていなかった俺を莉李が初めて一緒にいてほしいと言ってくれた。
だから俺はその気持ちに答えるために莉李と過ごせる時間、全てを使ってたくさんの思い出を作った。
けれど、全て形にはしてこなかった。
形にしてしまうと無くなった時にとても悲しくなってしまうから、壊れた時にとても辛くなるから、俺は初めから何もない状態を貫いていた。
その代わりに莉李にたくさんの言葉をプレゼントしたけれど、別れる時にはなにも届かなくなってしまっていた。
莉李と会えた最後の日、涙が止まらない莉李にたくさんキスをしたけれど全く泣き止んではくれなかった。
俺はその涙の意味は知らなくて、ただもう会えないと言われて莉李との関係は終わってしまった。
その後、莉李は俺の知らないうちにどこかへ引っ越してしまったらしい。
今でも莉李の連絡先は持ってるけれど、もうメッセージは返ってこないだろう。
きっと、俺が莉李の求めていた言葉を渡せなかったから。
莉李はそんな俺に愛想尽かしていなくなってしまったんだろう。
俺は『好き』と言う言葉を伝えることが出来ない。
その言葉が莉李の重荷になってしまったら嫌だったからずっと言えなかった。
最後に会えたあの日も。
それ以外は素直に伝えられるのに、どうしてもその言葉だけは伝えられなかった。
だから俺は、自分の手で感情を表現して誰かが俺の伝えたかったことを代弁してくれたら嬉しいなと思い、絵の勉強をしっかりやり始めた。
絵の学校はだいぶお金が掛かったけれど、言葉足らずの俺にはきっとこれくらいしか出来ない。
その絵が莉李にいつの日か届いて、あの日の気持ちを素直に伝えられたらと思い、莉李との思い出の日々を俺は描いている。
その莉李のためにもJ ORICONNに出す絵を完成させないといけないけれど、テーマがまだ決まっていない。
せっかく大勢に見てもらうチャンスがあっても作品を出さなきゃ、意味が無い。
そう考えながらポケットにある携帯を取り出して溜まったメッセージを開くと、沙樹たちが見た満点の星空と天の川の写真が俺に送られていた。
また俺は偽物しか見れなかったよ。
いつも、画面越しやプラネタリウムでしか俺はこの満点の星空は見られない。
莉李は本物を見れたかな?
ひまわりの笑顔でプラネタリウムの星空を見て楽しむ莉李の顔を思い出しながら、俺は仕事場の休憩室に戻った。
→プラネタリウム
学校が終わった後、沙樹と愛海、永海と悠さんで天の川を見るために車で地方に向かったらしい。
俺も誘われたけど、今日は仕事の予約が入っていたから時間を遅らせてもらうことは出来なかった。
今、俺がいる東京はまだ雲がかかっていて全く星が見えない。
雲の切れ間に真っ黒でなにもない空が見えるだけ。
この時期は雨が多いから雲があるのはしょうがないけど、何年くらい七夕に天の川を見れてないんだろう。
高校生の時に付き合っていた莉李と、学校をサボって“散歩”をした長野でも天の川は見れなかったんだよな。
…莉李は、天の川を見れたのかな。
莉李は高1の時、席が隣になって話しかけてくれた初めてのクラスメイト。
笑顔が多い子で特別楽しいことがあると鼻の上にシワを寄せてひまわりのように笑うその仕草がとても可愛らしい子。
少し朝が弱く遅刻気味で、校則違反の赤リップとふんわりパーマを学年指導の先生によく怒られていたけど全く気にせず自分の好きを貫いていた子。
出会ってから毎日のように最寄りの駅まで一緒に帰り、俺のバイト先にたまに寄ってくれるくらい仲良くしてくれたのはきっとすでに俺に好意を持っててくれたからなんだろうな。
俺のバイトが休みの日は、莉李が好きな図書館にあるプラネタリウムによく連れて行ってもらった。
季節によって話が変わり、最後には宇宙とは関係ない短編映画をドリンク1杯の値段で楽しめてしまうのが2人にとって最高のデートスポット。
クラスの他の子は有名なカフェの新しいメニューが出たと話す中、莉李は月に1度しか聞けない神話を今日は聞けると心躍らせていてとても可愛らしく思えた。
みんなは新しい物をたくさん欲しがるのに、莉李は俺との過ごす時間を求めてくれた。
誰にも必要とされていなかった俺を莉李が初めて一緒にいてほしいと言ってくれた。
だから俺はその気持ちに答えるために莉李と過ごせる時間、全てを使ってたくさんの思い出を作った。
けれど、全て形にはしてこなかった。
形にしてしまうと無くなった時にとても悲しくなってしまうから、壊れた時にとても辛くなるから、俺は初めから何もない状態を貫いていた。
その代わりに莉李にたくさんの言葉をプレゼントしたけれど、別れる時にはなにも届かなくなってしまっていた。
莉李と会えた最後の日、涙が止まらない莉李にたくさんキスをしたけれど全く泣き止んではくれなかった。
俺はその涙の意味は知らなくて、ただもう会えないと言われて莉李との関係は終わってしまった。
その後、莉李は俺の知らないうちにどこかへ引っ越してしまったらしい。
今でも莉李の連絡先は持ってるけれど、もうメッセージは返ってこないだろう。
きっと、俺が莉李の求めていた言葉を渡せなかったから。
莉李はそんな俺に愛想尽かしていなくなってしまったんだろう。
俺は『好き』と言う言葉を伝えることが出来ない。
その言葉が莉李の重荷になってしまったら嫌だったからずっと言えなかった。
最後に会えたあの日も。
それ以外は素直に伝えられるのに、どうしてもその言葉だけは伝えられなかった。
だから俺は、自分の手で感情を表現して誰かが俺の伝えたかったことを代弁してくれたら嬉しいなと思い、絵の勉強をしっかりやり始めた。
絵の学校はだいぶお金が掛かったけれど、言葉足らずの俺にはきっとこれくらいしか出来ない。
その絵が莉李にいつの日か届いて、あの日の気持ちを素直に伝えられたらと思い、莉李との思い出の日々を俺は描いている。
その莉李のためにもJ ORICONNに出す絵を完成させないといけないけれど、テーマがまだ決まっていない。
せっかく大勢に見てもらうチャンスがあっても作品を出さなきゃ、意味が無い。
そう考えながらポケットにある携帯を取り出して溜まったメッセージを開くと、沙樹たちが見た満点の星空と天の川の写真が俺に送られていた。
また俺は偽物しか見れなかったよ。
いつも、画面越しやプラネタリウムでしか俺はこの満点の星空は見られない。
莉李は本物を見れたかな?
ひまわりの笑顔でプラネタリウムの星空を見て楽しむ莉李の顔を思い出しながら、俺は仕事場の休憩室に戻った。
→プラネタリウム
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