一なつの恋

環流 虹向

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頭、痛ぇ…。

頭を殴りつける激しいアラーム音で意識が覚め、鈍痛がする頭を抱えながら携帯を探す。

俺は指先だけで見つけた携帯のアラームを消して脳が欲してる水分を取りながら、かすみ目で携帯の画面を見ると7時を過ぎている。

ここどこだ?学校、間に合うか?

俺は勢いよく体を起こしてソファーの上に散らばった服を取って着替え始める。

「…んー…ぅ…。」

すると隣で寝てた俺より歳上らしき女が寝言で唸る。
あのアラームで起きないとなると相当深く寝てるらしい。

俺は起こさないように外に出てバッテリーがあと5%しかない携帯とカバンを持って外に出る。

電信柱に貼り付けてある住所を見て大体の場所を確認する。

やっぱり今日もこの町を出ずに遊んだらしい。

ここから学校は電車1本で行けるけど、それではいつもの“俺”が許さない。
1番乗りをしてこそ、日向 一ひゅうが ひとなんだ。

…あのタクシーなら、携帯の充電出来るか?

俺は向こう側から走ってきたタクシーを呼んで飛び乗る。

一「愛美林あいびりん専門学校まで急ぎめでお願いします。」

「はい。かしこまりました。」

俺はタクシーのフリーで使える充電器を借りて携帯を充電させてもらう。

これでいつもの“俺”でいられる。

俺はタクシーに揺られながら昨夜のことを思い出そうとする。

いつものBARで明日のクラス会の話を姐さんとしてそこから…、確か向かい側のCLUBに行って…?

あー…、覚えてねぇなぁ。

まあ、いつものことだ。
子どもの時に頭打ってから物忘れがひどくなったのもあるけどそれにして最近はひどい。

昨日、1番最初に飲んだ酒の名前すら思い出せない。

だいぶ脳にガタが来てるなぁ。

俺はいつもの街並みを眺めながらカバンを漁り、年季が入った分厚い手帳を取る。

俺は手帳をまとめてるリングに挿したボールペンを取り、たくさんの思い出が書かれている1ページの空いてるスペースに出来事を書き込む。

『6/30→7/1 クラス会の段取り後、ホテルで女と寝てた。アラームをかけてた“俺”ナイス。』

昨日分の日記を書き終えると思ったよりも早く学校前に到着。

「1860円です。」

一「交通系ICで。」

運転手が手際よく準備を済ませ、俺は携帯を電子決算用の機械にかざして清算し終えてタクシーを降りる。

エレベーターを呼ぶよりも階段で上がっていった方が早いのでまだ誰も生徒がいない静かな学校の階段を1人猛スピードで上がり、5階の教室に到着する。

一「…よし、誰もいない。」

1番乗りの皆勤賞は誰にも譲れない。
小学校の入学式にだって教室には1番乗りをしたほど、誰もいない朝の教室が好きだ。

俺は友達が来るのを待ちながら自分の席から見える窓から見える外の空を眺めるルーティンをこなす事にした。



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