一なつの恋

環流 虹向

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今日は大人しく自分の家で寝ようと思っていたのに、夢衣から何度も着信が来て叩き起こされてしまった。

久しぶりに小学生並みに早く寝れたと思ってたのに。

一「どうした?」

夢衣『あはぁ♡ひーくんでたぁ…!』

夢衣は楽しげに笑い少し呂律が浮ついていた。

だいぶ酔ってんな。

一「なに?俺、今家だよ。」

夢衣『今からぁ…?あたちのぉー、おうちでぇ…』

夢衣が何か喋ろうとすると突然爆音で音楽が流れ始め、最後まで聞き取れない。

『夢衣ちゃん、おまたせー。』

『じゃあ、夢衣ちゃん家にタクシー乗っていこっか。』

男2人の声が遠ざかる音楽の代わりに聞こえ始める。

夢衣『ひーくんもよぶぅ…。』

『ひーくんて誰?彼氏?』

夢衣『元…かれぇ…。』

と、夢衣は電話越しで泣き始めた。
俺はその状況を一言も逃さないように黙って聞き耳を立てる。

『夢衣ちゃん泣かないで。元カレなんて忘れて俺らと楽しもうな。』

夢衣『ひーくんも一緒がいいぃい…。』

『お前、タクシー呼んどけ。』

『はーい。』

夢衣『ひーくんも来てねぇー♡』

と言って、夢衣は俺の返事も聞かずに電話を切った。

一「…チッ。」

俺は部屋着のまま家を飛び出て、金のない中タクシーに飛び乗り高速道路を使って夢衣の家に向かう。

一「…ここら辺で!」

俺は現金6000円を渡しお釣りを貰わず、そのまま夢衣の住んでるマンション前に走ると俺が思ったよりも早くあいつらのタクシーがあった。

俺は走りにくいサンダルを手に持ち裸足で駆ける。

「はーい。夢衣ちゃんの家に到着ぅ…。」

俺は1番に降りてきた男の顔面にサンダルを当てる。

「はぁ…?」

と、サンダルを睨みつけ走る俺に気づく男。

夢衣「んんー…?私がひーくんにあげたサンダルと一緒だぁ。」

夢衣は俺が投げたサンダルを拾おうとタクシーから地面になだれ出てきた。

「なに人の顔にぶつけてくれてんの?」

一「夢衣!鍵出せ!」

夢衣「はーい♡」

俺はタクシーから降りていた男の体を蹴飛ばしてタクシーに詰め込み、夢衣の手を引きながら手元にある鍵を奪う。

「おっ…おめぇ、逃げんじゃねーよ!」

一「この女、アル中ヤンデレ女だぞ!ヤったら最後、殺されると思え!」

夢衣「ひーくん、ひどぉー…い。」

俺の言葉で少し怯んだ2人を見て俺はタクシーの扉を軽く蹴り僅かな時間稼ぎをしながらマンションに逃げ込み、夢衣を抱えてエレベーターに飛び乗る。

一「あー…、俺寝不足なんだけど。」

夢衣「夢衣のおうちで寝ればいいじゃーん♡」

一「やだ。夢衣が寝たら帰る。」

夢衣「…寂しい。」

夢衣が俺の腕に胸を擦り付けてくる。

一「俺、そんなんじゃやる気にならないから。」

エレベーターが夢衣の部屋の階につき、俺は夢衣の手を引きながら玄関を開け部屋に入る。

一「臭ぇよ。掃除しろって言っただろ。」

夢衣「お勉強とお仕事でいっぱいぱいなのぉ…。」

夢衣は唇を尖らせながら真っ先にベッドに向かい、寝転がる。

俺は暑苦しい部屋の窓を開けて換気をし、散らかったゴミを袋にかき集める。

夢衣「ひーくん、一緒に寝ようよぉ。」

一「寝る前に片付けろよ。これでよく男入れようとしたな。」

夢衣「だって寂しいんだもーん。」

一「『だもーん』じゃない。また傷増やすだけだ。」

夢衣「…ぅんんっ。増やさないために遊ぶのっ。」

酒呑んだら通常時よりも自分の欲求に従ってしまう夢衣。

昔も今も全く変わってないな。

一「増やさないために遊ばないの。」

夢衣「ひーくん、頭おかしいぃ。」

一「誰が言ってんだ。」

夢衣「夢衣だよー♡」

夢衣はベッドから起きあがり、俺の腰に抱きつく。

こんな暑い中、抱きついてこないでほしい。
俺は何度もため息をつきながら掃除を進めるが夢衣は一向に手伝ってくれない。

一「掃除してるんだけど。」

夢衣「うんっ!見てるー。」

と、言いながら俺のベルトを外し始める夢衣。

一「俺のベルト外す前にやることやれ。」

夢衣「やだぁ。」

先にこっちを片付けるか。

俺は酒臭い夢衣が好きだったことを思い出し、夢衣自ら拒むほど寂しさを埋め続けてあげた後、俺は眠気に任せてベットに沈んでしまった。





→ Levitating
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