ここのサキには

環流 虹向

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頭、痛い…。

久しぶりに呑み過ぎた私はベッドから起き上がろうとすると、腕が体に巻きついていることに気がつく。

雅紀「…ななみん、朝だよ。携帯に電話かかってきてるし。」

私はホテルのベッド脇にあるななみんの携帯に手を伸ばすと、ななみんははだけて出てきた私の胸に顔を埋めて口でオナラを鳴らした。

なな「もうちょっと寝よ…。」

雅紀「ホテルの時間がもうギリギリだよ。」

なな「えー…?んなわけない。」

そう言ってななみんは自分の携帯を見て時間を確認すると、パンツしか履いていない綺麗に筋肉が付いている彫刻像みたいな体を起こした。

なな「やっべー…、友達との約束間に合わねぇ。」

雅紀「え?遊ぶ約束あったの?」

なな「でも、あっちも寝坊したっぽいし、夜どうせ会うし大丈夫。」

雅紀「そっか。じゃあ朝活でもする?」

なな「もう昼活だし、モーニング売ってないよ。」

雅紀「目が覚めたらそれが自分の朝なの。だから夜の6時でも朝だよ。」

なな「夜って言ってんじゃん。」

ななみんは私の矛盾に笑うと喉が乾いていたのか咳き込み、そばにあった水を飲んだ。

それが一との行動瓜二つで私は一に会いたくなってしまった。

けれど、昨日は音己の家でパーティーすると言ってたし、今日は瑠愛くん家でもパーティーをするから忙しくて会えないだろう。

なな「本当に雅紀って面白い。全部があべこべ。」

と言って、昨日の夜一気に酔いが覚めた私の体を見たななみんは人差し指で私の蕾をひと撫でした。

それに私が思わず反応してしまうと、ななみんは意地悪げに笑う。

なな「女だったら抱いてた。雅紀って姉ちゃんいないの?」

雅紀「…いないよ。妹もいない。」

なな「ひとりっ子?」

雅紀「うん。ななみんもひとりっ子な感じする。」

なな「ぴんぽん、正解♡」

そう嬉しそうに言ってくれたななみんは立ち上がり、服を着始めたので私も服を着替えて外に出る準備をする。

なな「ひとりっ子って親からのプレッシャーすごくない?俺ん家だけ?」

雅紀「私の場合は放任主義だったからそんな感じはしなかったかな。」

なな「で、女になったの?」

と、ななみんは私のコートを手に持ち着させてくれる。

雅紀「んー…。まあ、元を辿ったらそこに行き着くのかもね。」

なな「ふーん。そこに行き着くまでが複雑だと。」

雅紀「まあ、そうだね。」

なな「俺も複雑な人生してみたかったなー。」

そんな事を言いながらななみんはダウンを着ると、靴を履いて私の手を取ってパンプスを履くのを手伝ってくれる。

こんな人が自分の彼氏だったらきっと彼女は嬉しいんだろうなと私はお試し彼氏をしてもらったななみんと焼き魚が美味しい定食屋に入り、クリスマスの朝に昨日まで赤の他人だった人と食べているとななみんはとても綺麗にホッケの塩焼きを食べ終え満足そうな顔をする。

なな「ご馳走さま。奢ってもらうとは思わなかった。」

雅紀「ホテル代出してもらったし、このくらいはさせて。」

なな「じゃああと1個。わがまま聞いてもらっていい?」

雅紀「内容によるね。」

なな「雅紀のBARで働いてみたい。無給でいいから今日ちょっとだけ働かせてよ。」

雅紀「え…、今日クリスマスだし、夜予定あるって言ってなかったっけ?」

なな「終電乗れれば大丈夫だからそれまで働かせてよ。グラスの片付けとかなんでもやるし。」

…確か、人は足りてないんだよな。

今日はなるべく休みたい子たちを休ませて、明けで呑みに行くつもりの4人で回す予定だったから今日の反響具合を観ると圧倒的に足りてないのが分かる。

雅紀「カクテルは作ったことある?」

なな「マドラーで混ぜるくらいなら。」

雅紀「じゃあこれから人気のカクテルのレシピ教えるから一旦服着替えて初めて飲んだBARに集合しよ。」

なな「え?俺、採用された?」

雅紀「うん。後で一応身分証見せてね。」

なな「やった!バーテンダーになれる!」

そう嬉しそうに喜んでくれるななみんの顔を見て私は昨日の酔いつぶれて苦しそうに泣いていたななみんがいなくなったことに安心し、1日限定でバーテンダーをやってもらうことにした。


環流 虹向/ここのサキには
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