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第一章
新たな出会い(4)
しおりを挟む───それから、二週間が経過した。
足のレントゲンを取った帰り、車椅子を立花さんに押してもらっている時に病室から声がした。
「あ、奈々美ちゃん!おかえり!」
「ただいま……あ、こんにちは」
「……どうも」
「だからお兄ちゃん!愛想悪すぎ!」
「お前はうるせぇなあ」
美優ちゃんのベッドの隣には、丸椅子に腰掛けた龍之介くんの姿があった。
お互いに軽く会釈して、ぷりぷり怒っている美優ちゃんに苦笑いしながら立花さんに押してもらって自分のベッドに戻った。カーテンは開けたままだったため、立花さんに介助されながらベッドに寝転がる姿が龍之介くんからも丸見えだ。
それがすごく恥ずかしくて、居た堪れない気持ちになった。
「じゃあ次は美優ちゃん、レントゲン行きますよ」
立花さんの声に、美優ちゃんはどこか嫌そうに「はーい」と返事をする。そして思い立ったかのように、
「あ、お兄ちゃん。お母さんが迎えに来るまでどうせ暇でしょ?奈々美ちゃんとお話ししてたら?」
とニヤニヤしながら提案してきて。
「は?」
「え、美優ちゃん?」
同じタイミングで戸惑いの声を上げた。
「だって、お兄ちゃんと奈々美ちゃん、よく顔合わせるのに全然喋ってないから。奈々美ちゃんもすぐカーテン閉めちゃうし。ね、ちょうど良いじゃん!お兄ちゃんも人見知りって言ってたら友達できないよ?」
「余計なお世話だ」
「じゃあ、奈々美ちゃん!お兄ちゃんのことよろしくねー!」
否定する間も無く、同じように車椅子に乗せられた美優ちゃんは笑顔で病室を出ていき。
「……」
「……」
残された私たちは、とても気まずい状態になってしまった。
「……なんか、ごめんなさい。私のことは気にしなくて良いんで」
居た堪れなくて愛想笑いをしてカーテンを閉めようとすると、急に立ち上がった龍之介くんは椅子を持ったまま何故か私の元へ歩いてきて。
私のベッドの隣に椅子を置いて、座り直した。
「……龍之介でいいよ。俺の方が年下だし、敬語もいらないから」
「……あ、うん。わかった。龍之介くんも敬語いらないからね」
「……ん。わかった」
龍之介くんはそのまま特に何かを言うわけでもなく、座ったまま窓の向こうを向いていた。
その視線を辿ると、私の視界にも綺麗な青空が入ってくる。
「……今日は天気良いね。昨日は雨だったのに」
昨日は雨で、夜寝苦しいほどの雨音が響いていた。
それに比べて今日は快晴だ。それだけで気分も上がるもの。
「そうだな。……なぁ、俺、ちゃん付けとか慣れてないし、奈々美って呼んでいい?」
「うん」
ついさっきまで他人以上知り合い未満だったのに、なんだか急に友達みたいになって少しソワソワした。
「いつも美優が迷惑かけてないか?」
「ううん。私ずっと個室だったりここでも一人だったの。だから今はむしろ美優ちゃんが話し相手になってくれるから入院生活も退屈しなくて助かってる」
「そうか、良かった。……奈々美の怪我は、やっぱり酷いの?」
「まぁ……怪我は美優ちゃんと似たようなものだよ。手足の骨折と打撲。あとは細かい擦り傷とか?ここの傷跡は残っちゃうみたいだけど、それ以外はちゃんと治るって。さっきのレントゲン次第ではリハビリも進み始めるみたいだし、順調に回復に向かってるよ」
「そっか、良かったな」
「うん」
レントゲンの結果が出たら、また東海林先生に呼ばれることだろう。
今でも痛みが無い部分を軽く動かす程度のリハビリはしている。
しばらく右手と右足を動かさないような生活をしているため、筋肉の萎縮と減少があるからと早くから理学療法士さんと面会して少しずつ体を動かしてきた。
自分の足で歩けるようになるまではまだまだ時間はかかるし、そこから今まで通りに歩けるようになるまではさらに時間がかかることだろう。落ちた筋肉をまた付け直さないと、左右差も出てきてしまう。
そうならないためのリハビリもしばらく頑張らなくては。
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