"わたし"が死んで、"私"が生まれた日。

青花美来

文字の大きさ
11 / 55
第一章

新たな出会い(4)

しおりを挟む


───それから、二週間が経過した。

足のレントゲンを取った帰り、車椅子を立花さんに押してもらっている時に病室から声がした。


「あ、奈々美ちゃん!おかえり!」

「ただいま……あ、こんにちは」

「……どうも」

「だからお兄ちゃん!愛想悪すぎ!」

「お前はうるせぇなあ」


美優ちゃんのベッドの隣には、丸椅子に腰掛けた龍之介くんの姿があった。

お互いに軽く会釈して、ぷりぷり怒っている美優ちゃんに苦笑いしながら立花さんに押してもらって自分のベッドに戻った。カーテンは開けたままだったため、立花さんに介助されながらベッドに寝転がる姿が龍之介くんからも丸見えだ。

それがすごく恥ずかしくて、居た堪れない気持ちになった。


「じゃあ次は美優ちゃん、レントゲン行きますよ」


立花さんの声に、美優ちゃんはどこか嫌そうに「はーい」と返事をする。そして思い立ったかのように、


「あ、お兄ちゃん。お母さんが迎えに来るまでどうせ暇でしょ?奈々美ちゃんとお話ししてたら?」


とニヤニヤしながら提案してきて。


「は?」

「え、美優ちゃん?」


同じタイミングで戸惑いの声を上げた。


「だって、お兄ちゃんと奈々美ちゃん、よく顔合わせるのに全然喋ってないから。奈々美ちゃんもすぐカーテン閉めちゃうし。ね、ちょうど良いじゃん!お兄ちゃんも人見知りって言ってたら友達できないよ?」

「余計なお世話だ」

「じゃあ、奈々美ちゃん!お兄ちゃんのことよろしくねー!」


否定する間も無く、同じように車椅子に乗せられた美優ちゃんは笑顔で病室を出ていき。


「……」

「……」


残された私たちは、とても気まずい状態になってしまった。


「……なんか、ごめんなさい。私のことは気にしなくて良いんで」


居た堪れなくて愛想笑いをしてカーテンを閉めようとすると、急に立ち上がった龍之介くんは椅子を持ったまま何故か私の元へ歩いてきて。

私のベッドの隣に椅子を置いて、座り直した。


「……龍之介でいいよ。俺の方が年下だし、敬語もいらないから」

「……あ、うん。わかった。龍之介くんも敬語いらないからね」

「……ん。わかった」


龍之介くんはそのまま特に何かを言うわけでもなく、座ったまま窓の向こうを向いていた。

その視線を辿ると、私の視界にも綺麗な青空が入ってくる。


「……今日は天気良いね。昨日は雨だったのに」


昨日は雨で、夜寝苦しいほどの雨音が響いていた。

それに比べて今日は快晴だ。それだけで気分も上がるもの。


「そうだな。……なぁ、俺、ちゃん付けとか慣れてないし、奈々美って呼んでいい?」

「うん」


ついさっきまで他人以上知り合い未満だったのに、なんだか急に友達みたいになって少しソワソワした。


「いつも美優が迷惑かけてないか?」

「ううん。私ずっと個室だったりここでも一人だったの。だから今はむしろ美優ちゃんが話し相手になってくれるから入院生活も退屈しなくて助かってる」

「そうか、良かった。……奈々美の怪我は、やっぱり酷いの?」

「まぁ……怪我は美優ちゃんと似たようなものだよ。手足の骨折と打撲。あとは細かい擦り傷とか?ここの傷跡は残っちゃうみたいだけど、それ以外はちゃんと治るって。さっきのレントゲン次第ではリハビリも進み始めるみたいだし、順調に回復に向かってるよ」

「そっか、良かったな」

「うん」


レントゲンの結果が出たら、また東海林先生に呼ばれることだろう。

今でも痛みが無い部分を軽く動かす程度のリハビリはしている。

しばらく右手と右足を動かさないような生活をしているため、筋肉の萎縮と減少があるからと早くから理学療法士さんと面会して少しずつ体を動かしてきた。

自分の足で歩けるようになるまではまだまだ時間はかかるし、そこから今まで通りに歩けるようになるまではさらに時間がかかることだろう。落ちた筋肉をまた付け直さないと、左右差も出てきてしまう。

そうならないためのリハビリもしばらく頑張らなくては。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

婚約破棄のあと、あなたのことだけ思い出せない

柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢セシリアは、王宮の舞踏会で王太子レイヴンから公開の場で婚約破棄を言い渡され、その場で倒れた。 目覚めた彼女は、礼儀も常識も覚えているのに――ただ一つ、レイヴンだけを思い出せない。 「あなたは、どなたですか?」 その一言に、彼の瞳は壊れた。 けれどレイヴンは何も語らず、セシリアを遠ざける。彼女を守るために、あの日婚約を捨てたのだと告げられないまま。 セシリアは過去を断ち切り、王宮の侍女として新しい生活を始める。 優しく手を差し伸べる護衛騎士アデルと心を通わせていくほど、レイヴンの胸は嫉妬と後悔で焼けていった。 ――守るために捨てたはずなのに。忘れられたまま、他の男に笑う彼女を見ていられない。 一方、王宮では“偽聖女”の陰謀と、セシリアの血に眠る秘密が動き出す。 記憶を取り戻せば、彼女は狙われる。取り戻さなければ、二人は永遠に届かない。 これは、忘れてしまった令嬢と、忘れられてなお愛を捨てられない王太子が、もう一度“選び直す”恋の物語。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。

112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。 愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。 実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。 アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。 「私に娼館を紹介してください」 娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。

設楽理沙
ライト文芸
2026.1.4 73話見直した際、瑛士の台詞《本音/懺悔》を加筆しました。😇 ☘ 累計ポイント/ 200万pt 超えました。ありがとうございます。 ―― 備忘録 ――    第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。  最高 57,392 pt      〃     24h/pt-1位ではじまり2位で終了。  最高 89,034 pt                    ◇ ◇ ◇ ◇ 紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる 素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。 隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が 始まる。 苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・ 消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように 大きな声で泣いた。 泣きながらも、よろけながらも、気がつけば 大地をしっかりと踏みしめていた。 そう、立ち止まってなんていられない。 ☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★ 2025.4.19☑~

婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います

ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」 公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。 本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか? 義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。 不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます! この作品は小説家になろうでも掲載しています

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

処理中です...