"わたし"が死んで、"私"が生まれた日。

青花美来

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第二章

勉強(2)

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そしてその翌日。

約束通り、龍之介くんは美優ちゃんの教科書やらノートやらを大量に持ってきた。

そして自分が使っていたという参考書とワークもあり、そこには簡単に暗記できるように赤シートも添えられていた。


「ありがとうお兄ちゃん!」

「あぁ、ちゃんと勉強しろよ」

「もちろん。早速今からやろーっと」


いそいそとテーブルを出して教科書を広げた美優ちゃん。

数日前に学校の友達が届けてくれたらしいプリントも合わせて広げていた。

シャーペンを持つこと五分。


「……わっかんない!」

「早えなオイ!」


美優ちゃんは驚きの速さで降参した。


「だってわかんない!」

「わかんないじゃねーよ、考えろよ」

「考えてもわかんないんだもん!」

「絶対問題文読んでねぇよな!?」

「読んでるよ!」


始まった兄妹喧嘩を横目に、私は龍之介くんが持っていた手作りの英単語帳を奪い、一つずつ目を通していく。


「……activity……動作。advantage、利点。aid……なんだっけ、助ける、だっけ?次が───」


思いの外すらすらと出てくる答え。

一ページ捲る度に「あ、合ってた」と漏らしながら進める。

それを見られていたのか、「奈々美ちゃん!」美優ちゃんが身を乗り出すように私を見てきて。


「奈々美ちゃん!英語教えて!」

「え?」

「ここ!お願い!」

「あぁ、うん。えっと……」


龍之介くんに単語帳を返して、美優ちゃんに示された箇所を和訳していく。

その後も理科や数学など、わかる範囲で美優ちゃんに勉強を教えていく。

どうやら、私はそこそこ勉強ができる方らしい。


「ありがとう奈々美ちゃん!すっごくわかりやすかった!またお願いしてもいいかな?」

「うん。私で良ければ」


新たな収穫を得て、嬉しい気持ちだった。


それから数日間、私と美優ちゃんは勉強に明け暮れた。

というのも、美優ちゃんがあれから張り切って受験に向けて勉強を始めたのだ。私の学年の問題集を広瀬先生に持ってきてもらったこともあり、二人で黙々と勉強する日々。

龍之介くんも夏期講習で毎日忙しそうだ。

中学生の勉強はどうやら問題なかったらしい私。龍之介くんの学年のものも、英単語しか見ていないけれど大丈夫そうだった。

広瀬先生に持ってきてもらった荷物の中から、今日は数学をやろうと問題集を取り出した。

文字を書くにも慣れてきた左手で鉛筆を持ち、美優ちゃんにもらったルーズリーフに計算式を書き込んでいく。

どうやら数学も問題無さそうだ。特に深く考えなくても、問題文を読むと計算式が頭に浮かんでくる。

もしかしたら、私は日常的に勉強をしているタイプだったのかもしれない。


「奈々美ちゃんに教えてもらってから、私結構勉強好きになってきたかも」

「本当?」

「うん。特に英語なんて今まで全然理解できなくて嫌いだったけど、意味がわかれば結構面白いし」

「そっか。役に立ててるみたいでよかった」


美優ちゃんの意欲に火が付いたからか、龍之介くんも感心しているよう。

リハビリ自体もとても順調で、手はもう痛みもあまり感じなくなってきており、無理しない程度に積極的に動かしていこうと言われている。

鉛筆を右手に持って文字を書いてみたりするものの、まだ少し持った感じに違和感があり、探り探りやっている。

どうやら美優ちゃんも似たようなものらしく、二人で励まし合いながらの日々だ。

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