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第四章
強くなる(5)
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『───もしもし?奈々美?』
「龍之介くん……!」
『……奈々美、どうかしたか?』
「たすけてっ……助けて、龍之介くん」
『……落ち着け。今どこにいる?』
パニックに陥っている私のか細い声を聞いても、龍之介くんはとても冷静だった。
泣き言のようなことしか喋られなかった私の言葉を丁寧に拾ってくれて、龍之介くんは電話を繋いだまま走り出した。
『大丈夫だからな。すぐに行くから。そこで待ってろ』
何度もそう言っては私を安心させようとしてくれて、私もその言葉で少し落ち着くことができた気がした。
「───奈々美!」
電話の向こうと同時にすぐ近くで聞こえた声に、顔を上げた。
「奈々美!怪我は無いか?」
「龍之介くん……!」
息を切らした龍之介くんが、私を抱きしめる。
その大きな身体の温もりに安心したからか、急に止めどなく涙が流れ始めた。
「大丈夫。大丈夫だからな。奈々美、大丈夫だ」
「龍之介くんっ……私っ、私」
龍之介くんの服をぎゅっと力任せに握る。それに怒ることもせず、私の涙が服を濡らすことも厭わずに、龍之介くんは私を優しく包み込んでくれた。
その時上手く息が吸えなくてヒューヒューと音が鳴る私を見かねて、少し身体を離してビニール袋を私の口元に当てようとする。
しかしパニックになっている私は顔を横に振るだけで、苦しさは増す一方だった。
「奈々美、落ち着いて」
「りゅうのすけっくんっ……苦しいっ」
「あぁ。わかってる。だからまずは落ち着いて」
背中をさすってくれるものの、涙で視界はゆがみ自分が今どんな体勢なのかもよくわからなくなる。
意識も朦朧としてきて視界がぐるりと反転しそうになった時。
「───奈々美、ちょっとごめん」
「……んんっ……」
どうして謝るの。そう思うと同時に突然、何かに唇を塞がれた。
それは柔らかくて、温かくて。
グッと目を開くと、涙の膜のすぐ向こうで人の顔が見えた。
……龍之介くん……?
一度瞬きをすると、溜まっていた涙がこぼれ落ちて視界が開ける。
薄目を開けた龍之介くんと視線が絡まった。
これは、何?
キスされてる……?
それに気が付いた瞬間、恥ずかしがる間も無く龍之介くんは唇を離した。
「……まずは落ち着け」
なんてことないように告げた龍之介くんに、私は顔を真っ赤にしながら頷いた。
「さっきコンビニ行った時のビニール袋しかなくて悪いけど。とりあえずこれ口に当てといて。これで大丈夫だと思うから。まずは落ち着いて、息を吸うことよりもゆっくり吐くことを考えて」
受け取ったビニール袋。今度はちゃんと落ち着いて言われた通りにすると、数分で苦しさから解放されたような気がした。
呼吸が安定すると自然と涙も止まり、朦朧としていた意識もハッキリとしてくる。
「これ、まだ口つけてないから。飲んでいいよ」
「でも、これ龍之介くんの……」
「いいから。飲んだら少し落ち着くから」
「うん……」
言われた通りにもらったスポーツドリンクを一口飲む。
冷たさが身体に染み渡るのを感じて初めて外の空気が肌寒いことに気が付いた。
ぶるっと一瞬震えた私に、龍之介くんは着ていた上着を脱いで私にかけてくれる。
「ありがと」
「気にすんな。……それより、過呼吸起こすなんて一体何があったんだ?」
上着の上から私の肩に手を置いて視線を合わせた龍之介くんに、大きく頷いて。
「……私、思い出した」
「え?」
「全部、思い出したの」
頭に響いていた耳鳴りが治った頃。
私の頭の中には今までの記憶が全て戻っていたのだった。
「龍之介くん……!」
『……奈々美、どうかしたか?』
「たすけてっ……助けて、龍之介くん」
『……落ち着け。今どこにいる?』
パニックに陥っている私のか細い声を聞いても、龍之介くんはとても冷静だった。
泣き言のようなことしか喋られなかった私の言葉を丁寧に拾ってくれて、龍之介くんは電話を繋いだまま走り出した。
『大丈夫だからな。すぐに行くから。そこで待ってろ』
何度もそう言っては私を安心させようとしてくれて、私もその言葉で少し落ち着くことができた気がした。
「───奈々美!」
電話の向こうと同時にすぐ近くで聞こえた声に、顔を上げた。
「奈々美!怪我は無いか?」
「龍之介くん……!」
息を切らした龍之介くんが、私を抱きしめる。
その大きな身体の温もりに安心したからか、急に止めどなく涙が流れ始めた。
「大丈夫。大丈夫だからな。奈々美、大丈夫だ」
「龍之介くんっ……私っ、私」
龍之介くんの服をぎゅっと力任せに握る。それに怒ることもせず、私の涙が服を濡らすことも厭わずに、龍之介くんは私を優しく包み込んでくれた。
その時上手く息が吸えなくてヒューヒューと音が鳴る私を見かねて、少し身体を離してビニール袋を私の口元に当てようとする。
しかしパニックになっている私は顔を横に振るだけで、苦しさは増す一方だった。
「奈々美、落ち着いて」
「りゅうのすけっくんっ……苦しいっ」
「あぁ。わかってる。だからまずは落ち着いて」
背中をさすってくれるものの、涙で視界はゆがみ自分が今どんな体勢なのかもよくわからなくなる。
意識も朦朧としてきて視界がぐるりと反転しそうになった時。
「───奈々美、ちょっとごめん」
「……んんっ……」
どうして謝るの。そう思うと同時に突然、何かに唇を塞がれた。
それは柔らかくて、温かくて。
グッと目を開くと、涙の膜のすぐ向こうで人の顔が見えた。
……龍之介くん……?
一度瞬きをすると、溜まっていた涙がこぼれ落ちて視界が開ける。
薄目を開けた龍之介くんと視線が絡まった。
これは、何?
キスされてる……?
それに気が付いた瞬間、恥ずかしがる間も無く龍之介くんは唇を離した。
「……まずは落ち着け」
なんてことないように告げた龍之介くんに、私は顔を真っ赤にしながら頷いた。
「さっきコンビニ行った時のビニール袋しかなくて悪いけど。とりあえずこれ口に当てといて。これで大丈夫だと思うから。まずは落ち着いて、息を吸うことよりもゆっくり吐くことを考えて」
受け取ったビニール袋。今度はちゃんと落ち着いて言われた通りにすると、数分で苦しさから解放されたような気がした。
呼吸が安定すると自然と涙も止まり、朦朧としていた意識もハッキリとしてくる。
「これ、まだ口つけてないから。飲んでいいよ」
「でも、これ龍之介くんの……」
「いいから。飲んだら少し落ち着くから」
「うん……」
言われた通りにもらったスポーツドリンクを一口飲む。
冷たさが身体に染み渡るのを感じて初めて外の空気が肌寒いことに気が付いた。
ぶるっと一瞬震えた私に、龍之介くんは着ていた上着を脱いで私にかけてくれる。
「ありがと」
「気にすんな。……それより、過呼吸起こすなんて一体何があったんだ?」
上着の上から私の肩に手を置いて視線を合わせた龍之介くんに、大きく頷いて。
「……私、思い出した」
「え?」
「全部、思い出したの」
頭に響いていた耳鳴りが治った頃。
私の頭の中には今までの記憶が全て戻っていたのだった。
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