【完結】きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~

Mimi

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9 ジェレマイア

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⚠️ 子供の心身を虐待する人物が出てきます
   ご不快な方は、読み飛ばしてください   



  ◇◇◇



 第2王子と共に、男爵令嬢ごときに引っ掛かって、篭絡されて。
 思惑通りに後継者から外されたのに、直ぐに領地に戻されなかったのは想定外で、王都邸での母親と半年過ごした謹慎生活はキツかった。

 
 息子が国王陛下も臨席する卒業パーティーで起こした醜聞は、それまでの学院内の問題だけで収まっていたケインやゴードンの比ではなく。
 社交界で立場が無くなった母親はヒステリー状態に陥った。
 

「ジェレマイア! 何を考えてるの!
 あんな、あんな下等な女に入れ込むなんて!
 愚かなテリオスなんかと一緒になって調子に乗って!」


 自宅内とは言え、第2王子殿下のお名前を呼び捨てにするくらい、母のイングリットは怒りに打ち震えていて。
 その顔が見られただけでも溜飲が下がって、この選択は間違いじゃなかった、と確信した。




 ジェレマイアは幼い頃から生傷が絶えなかった。
 何も知らない人間はその傷を、騎士団の訓練に参加しているからだろう、と思い込んでいた。 

 細い物で打ち据えられたようなみみず腫れ。
 それが腕にも足にも背中にもある。


 一見爽やかな好青年に見える家庭教師からの躾と称した鞭を使った虐待。
 そしてその教師を用意したのは、イングラム伯爵夫人。
 つまり、王都邸に住むジェレマイアの母親が、息子への虐待を代わりにさせていたのだ。


 自分が駄目な子供だから仕方がないのだ、と尊敬する教師から刷り込まれたジェレマイアは、誰にも訴えられなかった。
 それに加えてジェレマイアの身の回りの世話をしていたメイドも着替えや入浴時に目にするその傷を見ないようして、リーブスには伝えなかった。


 だが、訓練で負うすり傷とは異なる傷を複数確認した治療士のデイヴが報告してくれたのに、息子を守るべき父親は……
 
「鞭を使った躾は伯爵夫人の指示だった」と言い訳をした家庭教師と、憧れていた彼を庇って傷の報告を怠ったメイドは解雇したが。


「それが教育だと思い込んでいたのだから、仕方あるまい」と母親には何の対処もしてくれなかった。



  ◇◇◇



 当初、ジェレマイアはミネルヴァがテリオスを支持する派閥が用意したハニートラップ要員だろうと踏んでいたのだが。
 それを知ると、テリオスは口角を上げて、心底面白そうに笑った。


「あれがハニートラップだと気付いたのは流石だが、残念ながら我が陣営ではないね」

「では、ユーシス殿下の……」


 ユーシスはテリオスより2歳年上の第1王子殿下で、共に王妃殿下から生まれたのだが、決して兄弟仲は良いとは言えない関係だ。


「そうだ、あちらの狙いは俺とケイン。
 低位貴族の娘には食指が動くはずがないゴードンが引っ掛かったのは、計算外だった」

「ケインは辺境伯家だから、ですか」

「あぁ、ケインは真面目で忠実な奴だ。
 学院で親しくしていた俺の支持派閥に辺境伯家が加わるのを恐れて、婿入りを阻止したかったんだろうな」


 
 ジェレマイアは、テリオスから王家の恥部なる話を聞いていた。
 そんな話を自分に聞かせてしまって良かったのかと確認すれば、テリオスは黙ったまま、いつもの計算された穏やかに見える微笑みを浮かべた。


 母の王妃殿下が偏愛しているのが兄ユーシスで、父の国王陛下が推しているのは弟のテリオスで。
 だがそれは、国王陛下が弟王子の資質を認めているから、ではない。

 単に王妃と憎しみ合っているので、何であろうと王妃の邪魔をしたいだけなんだ、とテリオスは淡々と語った。


 第1王子はもう20歳を迎えたのに、未だに立太子が叶わないのは、わざと国王がそれを先延ばしにしているからで、王妃とユーシスの派閥の忍耐も暴発寸前らしい。

 現に、テリオスは度々毒を盛られるようになったが、それを知っても国王は静観している。


 お互いに意地を張り続けて、関係を修復出来ない国王夫妻のせいでユーシスとテリオスの派閥争いが激化している現状を、代理戦争だとテリオスは嗤う。


「子供じみた意地とプライドを拗らせて、もうどうしようもない両親、はお前も同じだろ?」


 憎い伴侶に嫌がらせをするためだけに、子供を手持ちのカードのように扱う。
 テリオスの両親も、ジェレマイアの両親も同じ種類の人間だ。

 そんな親も家も捨てるには、どうすればいいか。
 鬱屈した思いに苦しかった時、同じ様に足掻くジェレマイアに気付いたのだ、とテリオスがいつもより真面目な表情を見せたから。



 ジェレマイアも覚悟を決めた。


 あれも、これもと欲張って、手にすることは出来ない。

 だったら、余計なものは捨ててしまおう。



 ただひとりを、手に入れるために。



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