【完結】この胸が痛むのは

Mimi

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第100話

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次に覚えているのは、何かを殿下が忘れると仰っていて。


「……待って、待ってください」

殿下が何を話されていたのか、どうして覚えていないの?
どうして、ここに座っているの?
私は……私は何を?
貴方はクラリスを忘れると仰ったの? 

『無理してるんだよ、本当は忘れたくないのに。
 許してあげなよ、それくらい』

頭のなかの誰かが、私に囁きました。

『結婚してから浮気する男も多いのよ。
 これくらい我慢したら?』

うるさい、うるさい、黙ってて!
殿下と私の事に口を挟まないで!
だから、私は言ったのです。

どうぞ私の事は、お気になさらないで。
来年も再来年も、貴方のお心が求めるままに、と。

どうしてそんな、複雑そうな顔して微笑むの?
私は貴方を困らせているの?
何と答えれば正解だったの?
頭のなかの誰かに問いかけても、もう応えは返ってこなくて。



「俺もこの一杯だけいただいたら、帰るよ」

殿下が帰ると仰せになったので、私は安堵致しました。
また頭痛が戻ってきて、今度こそ休まなくてはと思ったからです。
殿下に充分な応対を出来なかったことを申し訳なく思いながらも、とにかく帰っていただきたくて。

殿下がこちらに何をしに来られたのか、自分がそれに対してどうしたのか、全然覚えていないのも居心地が悪くて。
この頭痛が取れたら明日にでも、お詫びに甘くないお菓子を焼いて、執務室までお届けにあがろうと思いました。


殿下と護衛騎士様を乗せた王家の馬車が帰っていかれました。
護衛騎士様はいつもなら雨の日でも馬で並走なさるのに、今日は同乗されていて、少し変だと思いつつも、考えるのは止めました。

思考があちらこちらに飛んで、行動がちぐはぐになっているのが自分でもわかりました。
休みたいと思っていたのに、私はロレッタの姿を探して、彼女に金貨を差し出しました。


姉のワードローブの中から、美しい紫色のドレスを持ち出して。
私は姉になるのです。
本当は依り童に死人を招き入れて、術者や立ち会い人が会話をするのですが、ロレッタにそんなことは頼めません。
ましてや、自分が会話をする為にこの役を押し付ける事も。

ゲイルには直前に伝えて欲しい事を指示しようと思っていたのです。
彼が不在の現状では、ただこの身体にクラリスが入ってくれるのを待ち、私が謝罪の言葉を思い浮かべたら、姉にはきっと伝わる筈。


「何とお美しいドレスでしょう!
 裾に行くほど濃くなるグラデーションがお見事ですわ!
 胸元のパールも上品で、アシュフォード殿下のお色ですわね。
 デビュタントの時も思っていましたが、この形は本当にお嬢様のスタイルにぴったりだと……」


ロレッタの賛辞を耳にして、素直に嬉しく思いました。
このドレスが似合う年齢にようやくなれた。
殿下の隣に立てる年齢にやっとなれたのです。
もうお待たせしなくてもいい。
私の胸は安堵と達成感と優越感と……
ですが、やはり鏡を見ることは出来なくて。

ふたりで私室を出て、姉の部屋に向かいました。
何故かまた、部屋の前の廊下でレニーが花瓶に生けられた花を整えていました。


「さっき教えた通りにしてね」

ドレスの着付けまで楽しそうに、お化粧もヘアも手早く動いてくれていたのに。
姉の部屋に入ってからは、ロレッタは怯えているように見えました。

必要な物は昨日の内に、運んでいました。
銀の燭台、銀のトレイ、赤い2本の蝋燭、乾燥させたホワイトセージ、香草を燃やす為のお皿は調理場から分けて貰ったアワビの殻。

姉のデスクの上に、隠していたそれらを並べるとロレッタが『お金はお返し致しますので』と、言い出しました。

『どうして?』彼女を怯えさせない為に微笑みながら、優しい声で尋ねました。

「よくない、よくないと思うんです」


『よくないと言われても、やるの。
 出来るだけ圧をかけないように』

また誰かが戻ってきて私に囁く。

『彼女を逃がしたら駄目』

うるさい、もぉ、本当にほっておいて!
段々細かく指導するようになってきた声に反発を覚えました。

『いいの?私が消えたら、また何も言えないつまんない女だと思われるよ』

『たまーに、助けてあげるね』

その声を振り払おうと、私はロレッタに大した役目じゃないと説明しました。
一瞬表情を歪めた彼女でしたが、この場からは逃げられないと悟ったのか、早口に尋ねられました。
さっさと終わらせたいのでしょう。


「その葉っぱですか、草を燃やして。
 それを持ってお嬢様の周りをまわるんですね?
 何周ですか? 左右どちらに回るんでしょうか?」

何周? 左右どちら?
イロナ部長はそんな話はしていなかった様な気がします。
必要な物は揃えたのだから、そこはどうでもいいと、判断しました。


「何周でもいいわ。右回りと左回りも貴女が好きな方に回って?」

「時計回りは、右ですよね?……右回りにします」

彼女の気が変わらない内にと、私は素早く蝋燭に灯をともし、カーテンを引き。
貝殻のお皿に乗せたセージに火を着けました。
それを銀のトレイに乗せて、燭台と共にロレッタに手渡しました。


「回り終わったら、もう出ていってくれていいわ」

私が受けた催眠術の恐ろしさに比べたら、名前だけがおどろおどろしい死人還りです。


「やっぱり、どなたか男性を呼んだ方が……アーサーさんもジェームズもいます」

最後の抵抗をロレッタは口にしました。
知ってるの、下男のジェームズは、貴女と付き合っているのよね。
私は無言で彼女にトレイと燭台を渡して、床に直接座って両手を組み合わせました。

この時点で既に気付いていました。
クラブでイロナ部長から教えていただいた死人還りのやり方が中途半端だった事にです。

死人を召還する言葉も、帰って貰う言葉も。
何も知らない。
知っていたのは必要な物とおおよその手順だけ。 


不安な心持ちのまま、頭を下げて。
姉の事だけを思おうとしました。
既に回り終わったロレッタはこの部屋から慌てて逃げていました。
私の側に置かれた燭台とセージを乗せたトレイ。
そして、部屋にたなびく煙とひとりきりの私。

 

扉をノックする音が聞こえた気がしたのは、それからどのくらい経ってからでしょうか。
私は私のままでした。
それなりに用意して待っていたのに、クラリスは還ってきてくれなかった。

さっきより強く扉が叩かれました。
ロレッタが、戻ってきたのでしょうか。
1時間後には戻ってきてと、頼んでいました。
もう1時間経ったのでしょうか。

鍵が差し込まれて、回る音がしました。
入ってきたのは、帰られた筈のアシュフォード殿下でした。


 ◇◇◇


死人還りを試したのかと、尋ねられました。
姉上とは会えたのか、とも。


「駄目……駄目なの、お姉様は来なかった」

まるで幼子のように、頭を振って答えました。
何故なら、頭の声からそうする様に指示されたから。

『怒られない様にしなきゃ』って。

殿下は死人還りだと知っていらっしゃった。
当たり前です、殿下と先生はすごく親しかったのに。
いつの間にか殿下はオルツォ様とも親しくなっていた。
多分、アーグネシュ様とも、リーエとも。
私の知り合いは殿下の友人になり。
父や兄も親しくしてる。
いつの間にか、私の周囲は殿下の為に動く人ばかり。


「これは……一体どういうつもりだ?」 

カーテンを開いて、部屋を明るくさせて。
私の着ているドレスに気付いた殿下が私を責めます。


あぁ、今この場で。
あの日から初めて貴方は、私を見てくださっている。
姉を喪ってしまったあの日から……初めて。
私自身を貴方は見てくださっている。

そう気付いて、私は気分が高揚しました。
自然と、喜びに我知らず微笑んでさえいたのでしょう。

それを見逃さなかったアシュフォード殿下の声音は、今まで聞いたことがないような低く冷たいものでした。


「アグネス! 何故嗤っている?
 それは私を愚弄している、と受け取っていいのだな?」

貴方を嗤っているのではありません、と私は口にはしませんでした。
愚弄なんてつもりもなかった。
姉が亡くなった年齢になって、私はクラリスに追い付いた。
姉とそっくりになった私が姉のドレスを纏い、この中に姉を迎え入れたら、貴方は喜んでくださる、と……

それが不敬ならば、どうぞ貴方の手で私を罰してください。
貴方から姉を奪ったのは私なのだから。


でも、殿下が私に怒りを見せたのは、その時だけでした。
近付いてきた殿下に手を上げられるのかと、身構えたのに。
頬に手を当てられて。


「そんなに俺が憎かった?」

「……」

「今まで悪かった……君の気持ちに気付いてなかった。
 もう、近寄らない。
 俺の顔なんか見たくないよね、今度は俺がこの国を出るから、もう安心して」


……どうして、そんな事を仰るの? 
私の側から離れると……いいえ、もう貴方の側に私は要らないと仰せになって?
この国を、バロウズを出るというのは?
貴方はこの国の王族で、王弟で、公爵になられる御方。 
その貴方がこの国を出る?


「そのドレス……白いままのそのドレスを着た君の隣に立ちたかった。
 いつか来るその日をずっと支えにしてた。
 幸せな夢を見てた、受け入れてくれるまで、ずっと待っててもいいんだと、そう夢を見せてくれて感謝してる」

白いままのドレス?
このドレスは貴方がクラリスに贈ったドレスの筈……
私はクローゼット近くの壁に嵌め込まれていた姿見の方へ走りました。
殿下と扉の前に居た誰かが『見るな』と、止めた声が聞こえて。
そして、私は自分の姿を見たのです。


私が着ていたのは、クラリスに贈られたドレスではなかった。
それに似せて私が染めるように注文した、あの夜のドレスでした。
殿下から聞いた話を思い出しました。

クラリスはアローズの店頭に飾られていたドレスを贈られた。
それはイライザ妃に似合うプリンセスラインのドレス。
だからターンをするとふわっと広がって。
だけど、このドレスは私の体型に合わせたマーメイドライン。
くるくる回っても広がらない。
似ているのは色味だけ。


いきなり様々な情景が頭のなかに溢れてきました。
あの夜、怖い辺境伯夫人を追い払ってくれた殿下。
もう貴方の隣に立つ自信がないと泣き言を言った私を、根気よく殿下は慰めて、何度も愛の言葉を紡いでくださった。 

『君だけを愛している、ずっと君だけを愛している』


だから私は「いつか」と自分から着ていたドレスを、ウェディングドレスに作り替えたいと、言った。
殿下はとても喜んでくださって、それまで手を繋いでいただけなのに、抱き締められて口付けされた。
あの夜、私はあんなに幸せだったのに、どうして?
どうしてこのドレスを染めてしまったの! 


『私がちょっと、そうしたら?って言ったからだよ。
 クラリスに贈ったドレスに似せた紫色に染められたドレスを、あの男に見せてやれば?ってちょっと言っただけなのにね?』

頭のなかの声が嗤いながら教えてくれました。
姿見の中の私が、私に嗤っていました。
呪いをかけたあの夜から、姿見で全身を映しても顔だけは見ないようにしていました。
クラリスに似た自分を見たくなかった。
でも、もうそこにクラリスは見えなくて、ただ私を嗤う私しか映っていなくて。


「見るな!見なくていい!」

殿下が私の腕を引っ張って、鏡の前から、鏡の中の私から姿を隠そうとするように左手で抱き締めて、右手を伸ばして。
右の肘で鏡を割られたのです。

鏡面にヒビが入っても、尚も殿下は肘で鏡を叩き付けて。
私を抱き締めた左腕は痛い程に力が込められていて。
まだ夏生地のシャツは裂けて、肘からは血が流れているのに。
鏡を粉々にするまで、殿下はそれを続けられたのでした。
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