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占いは当たらないよね
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高二の二学期が始まって二週間が経とうとしている今日。
俺、巻島直樹は泣いている。
六月から付き合っていた彼女にフラれた。しかも、俺史上最悪な形で。
きょうも一緒に帰る約束をしていたから、日直だった俺は早く仕事を済ませ、彼女のクラスに急いだ。教室の戸を開けようとした時、彼女と誰か男の話声がしたから、そっと覗いてみたんだ。
そしたら、そいつとキスしてた。男の顔は見えない。
俺はその場を動けなくて何をどうしたら良いのかも分からず、間抜けな顔で立ち尽くしていたと思う。
彼女が「直樹は顔が可愛いからアクセサリー感覚で横に置いてた。でも本当は聡くんみたいな男らしい人が好きなの。」なんて言うんだよ。しかも、その聡って男は一年の時に同じクラスで、俺が一番仲の良かった奴。もちろん今でも仲は良い・・・と思ってた。
その後の事はよく覚えてなくて、何か言って別れたんだと思う。彼女から言い出したのかもしれないし、俺が言ったのかもしれないけど、俺がフラれたんだからどっちでも同じ事だ。
気付いたら、自分の席で窓の外を見ながら泣いてた。
だって、向こうに告られて付き合ったけど俺だってちゃんと彼女を好きになったし、夏休みだって沢山遊びに行って、それなりにエッチもしてたし。・・・・でも、その時には既に聡とも繋がっていたのかもしれない。
今日、友達と彼女を同時に失った。最悪だ。朝テレビで観た運勢は一位だったのに。さっきまで幸せだったのに。なんでこんな事になったんだろうな。
「あれ?直樹まだ居たの??」
俺の沈み切った気持ちとは真逆の明るい声で元気よく入ってきたのは、二年になって仲良くなってつるんでる野田圭一郎。
こいつはモテるイケメン野郎だ。身長も高く180cm以上はある。168cmの俺には羨ましい身長だ。一部の女子からは王子と呼ばれているらしい。そして性格も良いんだよな。
「どうしたんだ?直樹・・・泣いてる?」
「いや、大丈夫。もう帰るよ。」
俺はいつも「悩み事とかなさそうだね」って言われるくらい能天気な自覚はあるが、今ばかりはいつもみたく上手く笑う事が出来なくて頑張って笑ってみたけど、既に涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔で笑ったところで全然ごまかしきれなかったから心配してくれた圭一郎に全てを話した。
彼女をちゃんと好きだったこと。
でも向こうは本気じゃなかった事。
仲の良い友達とデキてた事。
俺はモテないから、やっとできた彼女だったんだ。それがこんな形で終わるなんて。
「お前は悪くないよ。俺は直樹の事好きだよ。明るくていつもニコニコしてるし優しいし面白い。そんなひどい奴の事なんて忘れてしまえよ。直樹にはもっとイイ娘がいるはずだよ。」
「くそぉ~お前に言われるとなんか腹立つな。このイケメンが!俺はお前みたいにモテないんだよ。少し分けろよその身長!・・・・罰としてお前が慰めろ!」
そう言って、圭一郎の胸に抱きつきまた泣いた。
そんな俺に呆れもせず、ぽんぽんと背中を叩いて頭をヨシヨシしてくれる。お前は行動もイケメンだなっ!こいつと友達になって良かった。ありがとう!
圭一郎に話を聞いてもらったお陰で思ったよりも早く立ち直った俺は次の日の昼休みに、別れた事を他の友達にも報告した。
「まあまあ元気出せ。」
そう言って、パックの牛乳を差し出してきたのは田中順一。一年の時からのツレでスポーツマンの爽やかイケメンだ。
「今度、俺と合コン行こうぜ!」
と言って、ビン牛乳を渡してきたのは石中友也。二年で同じクラスになってから仲良くなった。
「直君も別に彼女なんて無理に作らなくていいんだよ。それより皆で遊ぼうぜ!」
と、ミルクパンをくれたのは西川健介。こいつは俺の事を「なおくん」と呼ぶ。モテそうなんだけど彼女はいない。
「ありがと・・・ってなんで皆揃って牛乳なんだよ!嫌味か!」
「だって、身長欲しいんだろ?」
「まったく。人が気にしてることを言うなよな。しかも健介は何でミルクパンなんだよ!」
「え?だって牛乳はパックとビンしかないじゃん。」
人のコンプレックスをグイグイと抉ってくる奴らだけど、皆良い奴なんだ。これも、俺が落ち込まないようにわざとふざけてるって分かってる。あの時は辛かったけど、こいつらといれば大丈夫。凄く楽しい。
「あれ?圭一郎は?」
俺にくれたはずのミルクパンを頬張りながら健介が聞いてきた。
「なーんか、一年の子に呼び出されたってさー。」
「まじかっ!また告られてんのか。あいつは。」
「うらやまっ!てか、あいつ今フリーだっけ?」
「うん。確かフリーだな。」
「じゃあ付き合うんだろうな。あいつ来る者拒まずだもんな。」
「圭一郎って良い奴なのに、何でそこだけはユルッユルなんだろうな。」
「まだ本気になれる相手が見つからないだけだよ。多分。」
「いいよなーモテる奴は。」
「はぁ~・・・もうすぐ体育祭だなぁ・・・。」
告白かぁ~・・・モテるの羨ましいな、マジで。でも俺はちょっと今は彼女とかいらないかな。
完全に立ち直った訳じゃないけど、思い出しても辛くはない。どちらかと言うと元カノの事よりも聡に裏切られた方がショックだ。
・・・でもまぁ、聡も好きだったなら俺の惚気話とか聞くの辛かったんだろうな。普通にヤッたとか報告してたしな。ごめんな、聡。
俺、巻島直樹は泣いている。
六月から付き合っていた彼女にフラれた。しかも、俺史上最悪な形で。
きょうも一緒に帰る約束をしていたから、日直だった俺は早く仕事を済ませ、彼女のクラスに急いだ。教室の戸を開けようとした時、彼女と誰か男の話声がしたから、そっと覗いてみたんだ。
そしたら、そいつとキスしてた。男の顔は見えない。
俺はその場を動けなくて何をどうしたら良いのかも分からず、間抜けな顔で立ち尽くしていたと思う。
彼女が「直樹は顔が可愛いからアクセサリー感覚で横に置いてた。でも本当は聡くんみたいな男らしい人が好きなの。」なんて言うんだよ。しかも、その聡って男は一年の時に同じクラスで、俺が一番仲の良かった奴。もちろん今でも仲は良い・・・と思ってた。
その後の事はよく覚えてなくて、何か言って別れたんだと思う。彼女から言い出したのかもしれないし、俺が言ったのかもしれないけど、俺がフラれたんだからどっちでも同じ事だ。
気付いたら、自分の席で窓の外を見ながら泣いてた。
だって、向こうに告られて付き合ったけど俺だってちゃんと彼女を好きになったし、夏休みだって沢山遊びに行って、それなりにエッチもしてたし。・・・・でも、その時には既に聡とも繋がっていたのかもしれない。
今日、友達と彼女を同時に失った。最悪だ。朝テレビで観た運勢は一位だったのに。さっきまで幸せだったのに。なんでこんな事になったんだろうな。
「あれ?直樹まだ居たの??」
俺の沈み切った気持ちとは真逆の明るい声で元気よく入ってきたのは、二年になって仲良くなってつるんでる野田圭一郎。
こいつはモテるイケメン野郎だ。身長も高く180cm以上はある。168cmの俺には羨ましい身長だ。一部の女子からは王子と呼ばれているらしい。そして性格も良いんだよな。
「どうしたんだ?直樹・・・泣いてる?」
「いや、大丈夫。もう帰るよ。」
俺はいつも「悩み事とかなさそうだね」って言われるくらい能天気な自覚はあるが、今ばかりはいつもみたく上手く笑う事が出来なくて頑張って笑ってみたけど、既に涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔で笑ったところで全然ごまかしきれなかったから心配してくれた圭一郎に全てを話した。
彼女をちゃんと好きだったこと。
でも向こうは本気じゃなかった事。
仲の良い友達とデキてた事。
俺はモテないから、やっとできた彼女だったんだ。それがこんな形で終わるなんて。
「お前は悪くないよ。俺は直樹の事好きだよ。明るくていつもニコニコしてるし優しいし面白い。そんなひどい奴の事なんて忘れてしまえよ。直樹にはもっとイイ娘がいるはずだよ。」
「くそぉ~お前に言われるとなんか腹立つな。このイケメンが!俺はお前みたいにモテないんだよ。少し分けろよその身長!・・・・罰としてお前が慰めろ!」
そう言って、圭一郎の胸に抱きつきまた泣いた。
そんな俺に呆れもせず、ぽんぽんと背中を叩いて頭をヨシヨシしてくれる。お前は行動もイケメンだなっ!こいつと友達になって良かった。ありがとう!
圭一郎に話を聞いてもらったお陰で思ったよりも早く立ち直った俺は次の日の昼休みに、別れた事を他の友達にも報告した。
「まあまあ元気出せ。」
そう言って、パックの牛乳を差し出してきたのは田中順一。一年の時からのツレでスポーツマンの爽やかイケメンだ。
「今度、俺と合コン行こうぜ!」
と言って、ビン牛乳を渡してきたのは石中友也。二年で同じクラスになってから仲良くなった。
「直君も別に彼女なんて無理に作らなくていいんだよ。それより皆で遊ぼうぜ!」
と、ミルクパンをくれたのは西川健介。こいつは俺の事を「なおくん」と呼ぶ。モテそうなんだけど彼女はいない。
「ありがと・・・ってなんで皆揃って牛乳なんだよ!嫌味か!」
「だって、身長欲しいんだろ?」
「まったく。人が気にしてることを言うなよな。しかも健介は何でミルクパンなんだよ!」
「え?だって牛乳はパックとビンしかないじゃん。」
人のコンプレックスをグイグイと抉ってくる奴らだけど、皆良い奴なんだ。これも、俺が落ち込まないようにわざとふざけてるって分かってる。あの時は辛かったけど、こいつらといれば大丈夫。凄く楽しい。
「あれ?圭一郎は?」
俺にくれたはずのミルクパンを頬張りながら健介が聞いてきた。
「なーんか、一年の子に呼び出されたってさー。」
「まじかっ!また告られてんのか。あいつは。」
「うらやまっ!てか、あいつ今フリーだっけ?」
「うん。確かフリーだな。」
「じゃあ付き合うんだろうな。あいつ来る者拒まずだもんな。」
「圭一郎って良い奴なのに、何でそこだけはユルッユルなんだろうな。」
「まだ本気になれる相手が見つからないだけだよ。多分。」
「いいよなーモテる奴は。」
「はぁ~・・・もうすぐ体育祭だなぁ・・・。」
告白かぁ~・・・モテるの羨ましいな、マジで。でも俺はちょっと今は彼女とかいらないかな。
完全に立ち直った訳じゃないけど、思い出しても辛くはない。どちらかと言うと元カノの事よりも聡に裏切られた方がショックだ。
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