単純な俺たちのありふれた恋の話

みーくん

文字の大きさ
17 / 45

圭一郎 可愛いに上限は無いと知る

しおりを挟む


 昼休みに一年の女子に呼び出された。

勘弁してほしい。昼休みは直樹とくっついて過ごせる貴重な時間なんだよ。



 話の内容も想像がつく。指定された場所に行くと、その子はもう待っていた。



「先輩。好きです、付き合ってください。」

「ごめんね。好きな人がいるんだ。」

「でも、彼女はいないって聞きました。」

「うん。彼女はいないよ。(彼氏だから)」

「本当に好きなんです。好きな人の代わりでもいいです。」

「あいつの代わりなんていらない。ごめんね。」



あー早く直樹の隣に行きたいなんて考えていたから油断した。いきなり抱きついてきてキスされた。



 咄嗟に突き飛ばし「無理やりするなんて最低だな」と強く言い放つと、その子は泣きながら去って行った。・・・マジで最悪だ。



 戻る前に水道でゴシゴシと口を洗った。・・・気持ち悪い。

はぁ~直樹にキスしてほしい。



 教室へ戻ると直樹の姿はなかった。

友也が、他のクラスの奴に捕まって話してると教えてくれた。



 昼休みに直樹は帰ってこなかった。昼休みどころか、五時間目が始まっても直樹は戻らない。



 どうしたんだ?何かあったのか?



 授業が終わるまで直樹は戻ってこなかった。でも、荷物は置いたままで机の上も昼休みの前の状態だ。携帯に電話してもカバンの中から音がする。



 直樹。どこに行ったんだよ。なにかあったのか?



 ホームルームが終わると、焦った様子の友也に呼び止められた。



「圭一郎!・・・単刀直入に言うけど。昼休みに圭一郎が女の子とキスしてるのを直樹も俺も見た。直樹が一人にして欲しいって言ったから、早く戻って来いよって言って別れた。」



・・・え?・・・直樹、あれを見たのか?・・・あの女のせいで直樹を傷つけたのか?



「圭一郎。大丈夫だよ。直樹はちゃんと分かってるから。圭一郎に非が無い事は分かってる。『ただの嫉妬だ。こんな顔を圭一郎には見せられないだろ』って笑ってたから・・・でもまさか戻ってこないとは思わなくて」



「俺探しに行くわ!友也、ありがとう先に帰って!」

「さっき三年棟は探したけどいなかったから!」

「ああ。ありがとう!」



 なんだよ直樹。一人になるくらいなら、その感情も全部俺にぶつけてくれればいいのに。全部受け止めるよ。直樹の事なら。直樹。傷つけてごめん。



 お願いだから、一人で泣いてないで。





 どれくらい探し回っただろうか。もう外は真っ暗だ。

シーンとした廊下に微かにヒックヒックと誰かが泣いている声が聞こえる。



 声を頼りに歩いていくと『備品・教材庫』と書かれた部屋に着いた。

耳を当てると確かにこの部屋の中から聞こえる。ドアをガタガタするけど鍵がかかっていて開かない。



「だれ~?だれかいるの?おばけ?」



涙声で弱々しい声が中から聞こえる。この声!絶対に直樹だ。



「直樹!直樹いるの?」

「えっ。けーいちろー?ほんもの?おばけ?・・・おばけはいらないです。」



 な、直樹!!こんな時にすご~く不謹慎なんだけども・・・なんか直樹がめちゃくちゃ可愛いことになってる!!・・おばけはいらないですって!おばけに話しかけてる!!可愛すぎる!!



「直樹。おばけじゃないよ。俺だよ。本物だよ。」

「本物のおばけ?え?本物の圭一郎?本当?」

「待ってて!鍵持ってくるから!」



 急いで鍵を取りに行ってドアを開けて電気をつけると・・・



 ちょこんとソファーに座って、大きな瞳から涙を流しながらモグモグと口を動かしパンを食べている直樹がいた。



「あ・・・本物の圭一郎だった。よかった。・・・へへ」



!!!何なのこの子!可愛すぎる。

何で真っ暗な中でパン食べてるのとか色々聞きたいことはあるけど、とりあえずやっと会えた愛しい人を力いっぱい抱きしめた。



「直樹。ごめんな。友也から全部聞いた。」

「いや、違うんだ。圭一郎は全然悪くない!ただのヤキモチだから、少しだけ気持ちを落ち着かせようと思ってここに来たんだ。」

「うん。」

「そして、クリスマスは圭一郎とケーキが食べたいな。とか楽しみだなって考えてたら寝ちゃったんだよ。鍵かかって出れないし、暗くて怖くてさ。何かあっちこっちからガタガタ音がして。」

「それで怖かったのか?もう大丈夫だからな。」

「うん。探してくれてありがとう。俺、おばけだけは怖いんだよぉ~。」



 眉を下げて子供みたいに困ったような顔をする直樹が可愛くて仕方ない。

何なんだよ。可愛すぎるだろ。可愛いに上限は無いのか!



「もし、おばけが来たらパンをあげて帰ってもらおうと思って一つ食べないで残しておいたんだ。いたずらされたらいやだしな。」



っ!おいおい直樹!それはハロウィンだろ!?ごちゃまぜになってるぞ。

何なのその勘違い。・・・超~可愛いんですけど!やっぱり上限が見つからない。



 帰りは、あの日のように直樹をおんぶして帰った。



「直樹。もう些細な事でも一人にならないでよ。どんな感情でも受け止めるよ。俺、本当に直樹が大切なんだよ。だから一人で泣かないで。」



「うん。ごめんな。これからはそうする。俺も圭一郎が大切だよ。」



 もっともっと直樹を大切にしたいと心から感じた一日だった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話

八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。 古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

処理中です...