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―番外編 3年生― 卒業!
しおりを挟む遂にこの日が来た。
俺たちの楽しい高校生活が終わりを迎える日。
圭一郎と同じ学校に一緒に登校できるのも今日が最後。
「おはよ。」
「おはよ。・・・何か寂しいな。直樹と一緒に学校へ行けるのも今日が最後か。」
「ん。早かったね。ほら家は近いし・・・いつでも会えるよ。でもやっぱり俺も寂しいわ。」
俺たちは、永遠に学校に着かなければいいな、なんて話しながら最後になる通学路を、いつもより少しだけゆっくりと歩いた。
俺たちは4月から違う大学に通う。
圭一郎は、建築科のある大学。
俺は、兄ちゃんと同じ大学の美容学科に通う。
前に話していた『同棲』は先延ばしとなったけれど、幸い二人の通う大学は比較的近くで実家から通える圏内にある。それならば二人とも実家から通った方が近くに居られるという判断で、お互いに実家暮らしにすることにしたのだ。
ついでに、順一は県外の大学へ進学するため少し遠くへ行ってしまう。彼女から遠距離恋愛は無理と言われ落ち込んではいたものの、別れずに頑張れるだけ頑張ると言っていた。
友也は、二年のホワイトデーから咲ちゃんと付き合っており今も良好な仲を保っている。地元のIT系の専門学校に行く友也と、保育士になるために短期大学に通う咲ちゃん。今では友也の方が咲ちゃん好き好きオーラが凄く、学校が離れるのが嫌だと駄々をこねていた。
健介は、当たり前のように彼氏の魔王様と同じ大学に合格し4月から同棲をするらしい。魔王様も俺と圭一郎の関係を知っているので、今度4人で遊びに行こうと誘われている。
そして
卒業式も終わり皆が教室を出ていくのを見送り、圭一郎と二人きり。
「直樹が居てくれたから、俺の高校生活は凄く幸せだったよ。」
「うん、俺も。二年になって初めて話したときは、まさか付き合うなんて思っても無かったよな。」
「本当。友達になってすぐに直樹はイイやつだっていうのは分かってたけど、こんなに好きになるとは思ってなかったな。」
「・・・圭一郎。ありがとう。これからもよろしくね?」
「うん。俺も!」
「大学行って、可愛い子から言い寄られても・・・浮気するなよ?」
「するわけないだろ!俺は直樹じゃないと意味がないんだ。」
「ははっ!冗談だよ。」
そして、初めて教室でキスをした。最初で最後の教室でのキスだった。
少し遅れて外に出ると、三年生を見送る後輩達の姿もあり人で溢れかえっていた。
一緒に来たはずの圭一郎は、あっという間に同級生や後輩の女子に囲まれていた。
いつもなら嫉妬する場面なのだが、今日の俺は違うのだ!さっきキスもしたし今日が最後なので彼女たちに少しだけ圭一郎を貸してあげよう!!少しだけな!!
圭一郎、告白されてもバッサリと断って帰って来いよ。
順一達を探そうとキョロキョロしていると不意に声を掛けられた。
「ごんちゃん?どーしたの?」
「直樹君・・・ちょっと話があるんだ。」
「うん。なに?どーした?」
「俺、一年の時から直樹君を好きだったんだ。恋愛対象として。」
「え?」
「いや!いいんだ。別に返事が欲しいわけじゃないんだ!付き合っている人が居るのも知っている。だから、今日が最後だから気持ちだけ伝えようと思ったんだ。」
「・・・そっか。ごめん気付かなくて。ありがとう。体育で同じチームになったときとか楽しかったよ。・・・ごんちゃんは柔道で大学推薦だろ?がんばれよ!応援してるから!」
「おう。ありがとう。・・・本当に大好きだった。直樹君も元気でね。」
「うん。ありがとう。またね。」
ごんちゃんの気持ちに全く気付いていなかったから凄く驚いたけど、逆に気付いてなかったから良かったのかもしれないと思った。ごんちゃんは大会で全国優勝もしたから、もしかしたらオリンピックとかにも出場するような凄い選手になるかもしれない。そのときは圭一郎と一緒にテレビで応援しよう。
その後も、圭一郎はなかなか女子の波から抜け出せず、俺は友達と写真を撮ったり知らない男の子に話しかけられたりしながら過ごしていた。
一番驚いたのは、体育祭の時に借り物競争で俺を抱き上げていった一年王子が薔薇の花束をくれたことだ。本数は数えてないけどマルッとなった花束だから、それなりの本数はあると思う。ビックリして呆気にとられてる時に不意打ちで唇にチュッとされた気もしたが、無かったことにしようと思う。
ていうか、高一のくせに大人だよな。
結局、圭一郎と再会したのは昼を過ぎた頃だった。
「圭一郎。終わったの?」
「うん。ごめん!ってか何?その薔薇の花束!誰から?!」
「一年王子。」
「っくそ!あいつやっぱり・・・。」
「ねぇ~圭一郎。そんな事よりさぁ~。」
「ん?な、なに?」
「疲れたから圭一郎とゆっくりイチャイチャしたいんだけど。」
「っ!!俺も!!うちの親、また仕事行ったから来る?」
「うん。行く!!・・・あっ。ねえねえ。」
そう言って圭一郎の袖をクイッと引っ張り耳に口を寄せ・・・
「ねえ、イきたい・・・。」
と甘ったれた声で囁いた。
お馴染みの圭一郎の真っ赤な顔を見ながら
『この制服でこの顔を見るのも最後か。』
と、しみじみと感じた。
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