単純な俺たちのありふれた恋の話

みーくん

文字の大きさ
44 / 45

―番外編 3年生― 卒業!

しおりを挟む


 遂にこの日が来た。

 俺たちの楽しい高校生活が終わりを迎える日。
圭一郎と同じ学校に一緒に登校できるのも今日が最後。

「おはよ。」
「おはよ。・・・何か寂しいな。直樹と一緒に学校へ行けるのも今日が最後か。」
「ん。早かったね。ほら家は近いし・・・いつでも会えるよ。でもやっぱり俺も寂しいわ。」

 俺たちは、永遠に学校に着かなければいいな、なんて話しながら最後になる通学路を、いつもより少しだけゆっくりと歩いた。
 


 俺たちは4月から違う大学に通う。
圭一郎は、建築科のある大学。
俺は、兄ちゃんと同じ大学の美容学科に通う。

 前に話していた『同棲』は先延ばしとなったけれど、幸い二人の通う大学は比較的近くで実家から通える圏内にある。それならば二人とも実家から通った方が近くに居られるという判断で、お互いに実家暮らしにすることにしたのだ。

 ついでに、順一は県外の大学へ進学するため少し遠くへ行ってしまう。彼女から遠距離恋愛は無理と言われ落ち込んではいたものの、別れずに頑張れるだけ頑張ると言っていた。

 友也は、二年のホワイトデーから咲ちゃんと付き合っており今も良好な仲を保っている。地元のIT系の専門学校に行く友也と、保育士になるために短期大学に通う咲ちゃん。今では友也の方が咲ちゃん好き好きオーラが凄く、学校が離れるのが嫌だと駄々をこねていた。

 健介は、当たり前のように彼氏の魔王様と同じ大学に合格し4月から同棲をするらしい。魔王様も俺と圭一郎の関係を知っているので、今度4人で遊びに行こうと誘われている。




 そして

 卒業式も終わり皆が教室を出ていくのを見送り、圭一郎と二人きり。

「直樹が居てくれたから、俺の高校生活は凄く幸せだったよ。」
「うん、俺も。二年になって初めて話したときは、まさか付き合うなんて思っても無かったよな。」
「本当。友達になってすぐに直樹はイイやつだっていうのは分かってたけど、こんなに好きになるとは思ってなかったな。」
「・・・圭一郎。ありがとう。これからもよろしくね?」
「うん。俺も!」
「大学行って、可愛い子から言い寄られても・・・浮気するなよ?」
「するわけないだろ!俺は直樹じゃないと意味がないんだ。」
「ははっ!冗談だよ。」

 そして、初めて教室でキスをした。最初で最後の教室でのキスだった。

 少し遅れて外に出ると、三年生を見送る後輩達の姿もあり人で溢れかえっていた。

 一緒に来たはずの圭一郎は、あっという間に同級生や後輩の女子に囲まれていた。

いつもなら嫉妬する場面なのだが、今日の俺は違うのだ!さっきキスもしたし今日が最後なので彼女たちに少しだけ圭一郎を貸してあげよう!!少しだけな!!

 圭一郎、告白されてもバッサリと断って帰って来いよ。

 順一達を探そうとキョロキョロしていると不意に声を掛けられた。

「ごんちゃん?どーしたの?」
「直樹君・・・ちょっと話があるんだ。」
「うん。なに?どーした?」
「俺、一年の時から直樹君を好きだったんだ。恋愛対象として。」
「え?」
「いや!いいんだ。別に返事が欲しいわけじゃないんだ!付き合っている人が居るのも知っている。だから、今日が最後だから気持ちだけ伝えようと思ったんだ。」
「・・・そっか。ごめん気付かなくて。ありがとう。体育で同じチームになったときとか楽しかったよ。・・・ごんちゃんは柔道で大学推薦だろ?がんばれよ!応援してるから!」
「おう。ありがとう。・・・本当に大好きだった。直樹君も元気でね。」
「うん。ありがとう。またね。」

 ごんちゃんの気持ちに全く気付いていなかったから凄く驚いたけど、逆に気付いてなかったから良かったのかもしれないと思った。ごんちゃんは大会で全国優勝もしたから、もしかしたらオリンピックとかにも出場するような凄い選手になるかもしれない。そのときは圭一郎と一緒にテレビで応援しよう。

 その後も、圭一郎はなかなか女子の波から抜け出せず、俺は友達と写真を撮ったり知らない男の子に話しかけられたりしながら過ごしていた。

 一番驚いたのは、体育祭の時に借り物競争で俺を抱き上げていった一年王子が薔薇の花束をくれたことだ。本数は数えてないけどマルッとなった花束だから、それなりの本数はあると思う。ビックリして呆気にとられてる時に不意打ちで唇にチュッとされた気もしたが、無かったことにしようと思う。

ていうか、高一のくせに大人だよな。

 結局、圭一郎と再会したのは昼を過ぎた頃だった。

「圭一郎。終わったの?」
「うん。ごめん!ってか何?その薔薇の花束!誰から?!」
「一年王子。」
「っくそ!あいつやっぱり・・・。」

「ねぇ~圭一郎。そんな事よりさぁ~。」
「ん?な、なに?」
「疲れたから圭一郎とゆっくりイチャイチャしたいんだけど。」
「っ!!俺も!!うちの親、また仕事行ったから来る?」
「うん。行く!!・・・あっ。ねえねえ。」

 そう言って圭一郎の袖をクイッと引っ張り耳に口を寄せ・・・

「ねえ、イきたい・・・。」

 と甘ったれた声で囁いた。

 お馴染みの圭一郎の真っ赤な顔を見ながら

『この制服でこの顔を見るのも最後か。』

 と、しみじみと感じた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話

八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。 古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

処理中です...