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2巻
2-3
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† † †
「はーはっは、そんなに胡散臭いチラシが大量に来ちゃ、あんたも堪ったもんじゃないだろうな」
ヤマダイが豪快に笑う。山のような巨体がゆらゆら揺れて、椅子が悲鳴を上げている。
「そうなんですよ。何だかいろんな人から狙われてるようで気味が悪い」
話の流れで俺も席に着いた。
隣に恐縮した面持ちのハジク、目の前の席にヤマダイが座っている。
そしてヤマダイの隣にもう一人……巨体の影に隠れて見えなかったが、小柄な男が座っていた。
彼はゲツサンと言って、ヤマダイとは長くコンビを組んでいる間柄らしい。
そのゲツサンが口を開いた。
「本当に狙われてるのかもしれない。気を付けて」
「え? どういうことですか?」
「最近窃盗が増えてるみたい。お金持ちや、高価な物を扱うお店が狙われてるみたいだから、用心したほうがいいよ」
「へぇ……それは怖い。気を付けます」
隣の席から「うっ」と呻き声が漏れた。
どうやら今の話はハジクにも効いたようだ。ようやく分かったか。
「全く、最近のこの国はちょっとおかしいぜ。冒険者の失踪が止まったと思ったら、今度は窃盗なんてよぉ、世界一の治安が聞いて呆れる」
《ルーデン》は騎士団を中心とした軍事力と厳しい法の規制によって《ラフタ》一安心・安全を謳っていた。
その治安が揺らいでいるという。
「冒険者の失踪って止まったんですね」
「あぁ、近頃は聞かねぇな。一体何だったのか分かってねぇけどよ」
失踪事件が減ったっていうのも初耳だ。普段他の冒険者と話をしない分、いろいろと参考になるな。
「ま、そのうち分かるだろ。こんな職業やってると、嫌でも耳に入っちまう」
「ヤマダイさんの職業って何ですか?」
「俺か? 俺は『宝探し』をやってるよ。お宝話には常に網張ってるから、いろんな情報が紛れてくんのさ」
「『宝探し』……そんな職業があるんですね。ゲツサンさんも?」
「僕は『武道家』だよ」
おお、それは聞き覚えがある。
俺と一緒に召喚された人達の中にもいたはずだ。
「お前、そんな職業だったのか」
それまで押し黙っていたハジクがヤマダイに向かって言った。
「あん? 悪いかよ」
「悪かない。そうじゃなくて……何かなかったか? さっきの兄貴の話の中で、『宝探し』のお前がピンとくるような物は」
「チラシのことか? ねぇよ。十中八九、全部ぼったくりだろうよ。ってか、それを聞いてどうすんだっつーの」
「う、うるさい。聞いてみただけだ!」
ハジク……仮にチラシの中に何か凄いものが紛れてても、名誉挽回にはならないからね。そもそも俺に届いたチラシだしね。
「全部ぼったくりですか。やっぱり、高額過ぎですもんね」
溜息交じりに言うと、ヤマダイは首を横に振った。
「いいや、違うぜ。安過ぎるんだ。そのチラシが謳う効果が本物なら、そんな値段じゃ済まねぇ。少なくともゼロが二つ足りねぇな。だからそのチラシのアイテムは全部偽物ってこった」
「ゼロが二つって数億マーク……ほえー、凄い。だけど、似たような効果の物は実在するってことですか」
「ああ、あるぜ。それよりももっと凄いお宝がな。例えば『智者の愚物』」
「『智者の愚物』?」
「かつての〈六賢〉が作った強力な魔法道具の総称だ。人の心を操り魔を見通す炎『蒼い太陽』、術者に無限の魔力を与える『理捨汲々の石』、纏っている限り絶対に死なない法衣『不退纏』、敵を打ち滅ぼすまで超人的な速さで移動できる『撃滅の具足』、そして万人を魅了する花『婀娜華』の五つ。俺が死ぬまでに絶対一つは手に入れたいお宝達よ」
「おお、それはちょっとワクワクしますね」
「だろ? 男はそうだよなぁ」
仲間を見つけた、という風に嬉しそうに笑うヤマダイ。
「ところでなんで愚物なんですか?」
「ん……まぁ、そりゃあなんだ。本人達は悪ふざけで作っちまったらしいが、どうにも強力過ぎてな……国一つ滅ぼしてしまうくらいには」
「はい!?」
「あ、あくまで下手を打つとだぜ? ちゃんと使えば問題ねぇ。それに、扱いに困った馬鹿な連中によってどこかに封印されちまったからよ。使いたくても使えねぇ。おかげで今ではこの世で最も有名なお宝になっちまったぜ」
はっはっはーとヤマダイは笑う。
それって見つけないほうがよいのでは? と意見するのは野暮だろうか。
ついでに六賢なのに五つしかないのは何故……? まぁいいや。きっと俺には一生縁のないアイテムだ。
しかし魔法道具か……それはプレゼントとしては有りだな。
あいつ、魔法には妙なこだわりがあるし、自信を持っていそう。
もし賢者としての能力が増すような代物をあげられれば、喜ぶ気がする。
「ヤマダイさん、女の子受けしそうな魔法道具なんてご存じです?」
「うん? そりゃ、やっぱり『婀娜華』だろーよ。なんせ、どんな男もいちころだからな」
「あ、いや……そういうことじゃなくて。もっとこう、手頃で、魔法使いが重宝しそうな物で」
「それだったら『理捨汲々の石』に違いねぇ。なんせ、無限の魔力だからな」
「そういうことでもなくて……一旦、『智者の愚物』から離れて考えてください」
「なんでだ?」
「そりゃあ、そんな物、高額だしレアすぎるし、手に入る訳がないです……」
ああ、そうだ。自分で言って気付いたけど、そもそも魔法道具って、どれも嘘みたいに高いのだった。それなりの効果の物なら尚更、安く手に入る訳がない。
馬鹿なこと聞いちゃったなー。
「それはどうかな」
「え?」
ニヤリと笑って席を立つヤマダイ。
「こいつを見てみろよ」
そう言って、ヤマダイはそれまで座っていた席――その後ろの柱を指差す。
なんだ?
彼の巨体で隠れていた柱には、紙が貼られていた。丸っこい文字で、チラシのようにカラフルな文字が並んでいる。タイトルは『メリッサのお願い』だ。
チラシじゃない、これは――
『メリッサのお願い
依頼主:メリッサ・バローズ
依頼品:トクゾーの涙
報酬:理捨汲々の石(フェイク)
備考:応募者面接あります♪』
――依頼書。かなーり癖が強いけれど、依頼書だ。
「『理捨汲々の石』……のフェイク? 何です、それ?」
「なんだ、知らねぇのか。本物そっくりに作った模造品のことだ。贋作さ」
「贋作……つまるところは偽物ってことですよね?」
「くっく、まぁそうだ。だが偽物だといって馬鹿にはできねぇぞ。世の中には偽物を作ることにこだわる変人がいる。そんな奴らが作った偽物は見た目がそっくりなのは言うまでもねぇが、どれも相応の力を持ってんのさ。力がなけりゃ、決して世には出さない。『贋作家』って連中はそんなプライドを持った奴らだ」
「詳しいですね。ということは、このフェイクもそれなりの力があるということですか」
「フェイクの中から本物を見極めるのも『宝探し』の仕事だからな、そのへんはよく分かってるつもりだ。ま、この報酬がどの程度のアイテムかは、今の時点では何とも言えねぇ。依頼品の希少性次第さ」
「なるほど……」
依頼品である『トクゾーの涙』がどれくらいレアアイテムなのかが問題だ。
トクゾー……一体どんなモンスターだろう。名前からはあまり強そうな感じはしないな。
少しイメージしてみても、ゆるキャラみたいなのしか出てこない。
「トクゾーって知ってます?」
「知らんな。だがここに特徴が載ってるぜ」
お、ほんとだ。よく見れば依頼書に書いてある。
「えーっと、特徴は……素早い。逃げ足が速い。身を隠すのが得意……だけ?」
何だそのモンスターは……
ヤマダイがバシンと背中を叩く。
「お前はそういうのが得意だろ?」
そう言われて思い浮かんだのは、大きめの〈ファトム・ラビット〉だった。
「……確かに」
3 メリッサの依頼
《ルーデン》の城の西側に位置する商店街。
冒険者御用達の店が多く連なるこの通りに、依頼主メリッサも店を構えているらしい。
ギルドで貰った依頼書にある地図を頼りにきょろきょろしながら歩く。
そして地図が指し示す場所――紫の布でぐるりと覆われたようなテント型の店舗――の前で足を止めた。
「え、ここ?」
この店には見覚えがあった。半信半疑で名前を探すと、店の入口付近に『メリッサ魔道具店』という赤字の刺繍が見つかった。
何度見返しても、依頼書に書かれてあった連絡先と同じ。
……あの子の言う通りだ。俺って鈍くさい。
『メリッサ魔道具店』はユキのペンダントを買った魔法道具店だった。前回は名前を見逃していたみたい。
その時は女同士の睨み合いに巻き込まれた上に、必要経費とはいえ結構な額を使った。いや、使わされた感がある。要するにあまり良い印象のない場所である。
はぁ、もう当分来ないだろうと思ってたのに。
苦手なんだよね、ここの店主……メリッサさん? 一見おっとりして見えるけど、何か裏がありそうで。
ちゃんと名前を覚えていれば、わざわざ来なかったかもしれない――なんて後悔し始めていると、バンッと勢いよく店の扉が開いて、中から男が飛び出してきた。
「ひ、ひぃぃ! も、もう勘弁してくれ」
冒険者風のその男は傍目にも取り乱しているのが分かった。
何かに怯えたような表情。
「俺は降りる、俺は降りるから!」
それだけ言い残し、男は逃げるように去っていく。
……うん。やっぱり、やめておこう。
目の前で起こった異常事態に、くるりと回れ右。
あれはただ事ではない。何か、嫌~な予感がする。ギルドに戻ってもう一度情報収集すべき――
「あらぁ」
背後から甘い声が届く。
ぎこちなく振り返ると、店の色と同じ、紫の髪がトレードマークのお姉さんが微笑んでいた。
遅かったー。
メリッサは俺を見つけると「あらあら」と笑顔で近寄ってきた。
そのまま「お久しぶりぃ」とか「今日は一人?」などとしきりに話しかけられ、最終的には「お得意様だから、お茶でも飲んでいって」と腕を取られた。
そして逃げる間もなく店の中へ……
お得意様、ね。一度しか来たことがないのに、この歓迎ぶりはやりすぎじゃないか。絶対に逃がさないという強い意思を感じる。
何かまた高額な物を売りつけようと企んでいるのかもしれない――そんな予感がしたので、この店に来た理由をちゃんと話すことにした。
「へぇ、それじゃあなたも依頼書を見て訪ねてくれたのねぇ」
「そういうことになります」
丸いテーブルの対面に腰かけたメリッサは「ん~、どうしよっかなぁ」と迷った素振りを見せた。
あてが外れた、という感じではなさそう。気にしすぎか。
「ま、いいかぁ。面白そうだし」
考えがまとまったらしい彼女は、俺を見据えて言った。
「面接するぅ?」
「え、もう?」
「問題あるぅ?」
唐突に言われて戸惑う。
確かに依頼書には書かれてあった。しかし事前にあると分かっていても、そして何度やっても緊張するもの、それが面接。
相手が美人のお姉さんなら尚更だ。
ま、今回は落ちたからといって就職できなくなる訳でもない。むしろ、この場所から早く退散できる。
落ち着いて、気楽にいこう、気楽に。
「いえ、大丈夫です」
ドキドキしながらそう答えると、メリッサは楽しそうに笑う。
「では質問」
ゴクリ。
「あなたは、一人でここへ来たのぉ?」
「それはさっき答えた気がしますけど……見ての通り、一人で来ましたよ」
「それは、あなたの意思でぇ?」
「えぇ、まぁ。何人かとは話をしましたけど」
「あの子とは相談してないのぉ?」
「あの子ってツララですか? してませんよ」
「報酬はどうするのぉ?」
「……言わなきゃいけないです? それ」
「もちろん」
「……あの子にあげる予定です」
「まぁ、素敵!」
「一体何なんですか、この質問――」
「合格~」
「え?」
合格してしまった。
「依頼の内容を具体的に説明するわねぇ」
「ちょ、ちょっと待ってください。今ので合格なんですか?」
「そうよぉ、おめでと~。本当、仲が良いのね、あなた達」
なんだそれは……全然意味が分からん。
「もっとこう、レベルとか職業とか、確認すべきことがあると思うんですが」
「必要ないわぁ。〈ツヴァイ・ハーゼン〉の一人で、賢者ちゃんの彼氏でしょ? それで十分よぉ」
「コンビです」
「うふっ、どっちでも一緒」
あぁ、やっぱり苦手だ、この人。
頭を抱えていると、メリッサがじっとこちらを見て言った。
「どうする? やめる? 今なら間に合うわよ」
「急に真顔にならないでくださいよ……怖いでしょ。やります、やりますよ。せっかく受かったんだから」
「あら本当? ありがとう~。じゃあ、ちょっとこれを見てくれる? 奴らの居場所を教えるから」
そう言ってメリッサがテーブルの上に地図を広げる。
トクゾーの住処はギルドで照会しても出てこなかった。
だけどなんだ、生息地が分かってるのか。それなら話が早い。
「奴らはここにいるわぁ」
メリッサが指し示したのは《ルーデン》の東地区の一画だ。
「……すみません、街の中に見えるんですが。本当にここで合ってます?」
「そうよぉ。調べてあるから間違いない。昼間はここに隠れて、夜になったら動き出すのぉ」
街中にそんなモンスターが……知らなかった。今日は新しい情報ばかりだ。
「夜行性か。昼は寝ている?」
「かもねぇ。呑気に寝ているかもしれないわぁ。腹立たしい」
「は、はぁ」
「だけどそんなのは行ってみれば分かること。重要じゃないわぁ」
「へ?」
「重要なのは、この場所に、私の大事な物や、この辺のお店からくすねた商品も隠されているということよぉ」
「くすねるって……そんなモンスター、本当にいるんですか?」
メリッサは俯いて溜息をついた。やれやれ、という感じで。
そして顔を上げた時は再び真顔になっていた。
「いる訳ないじゃない。相手は人よ」
「……人?」
「ヒ・ト」
きっぱりと言い切るメリッサ。
嫌な汗が額にじわりと浮かんでくる。
「ちょっと、意味が分かりません。依頼はモンスターを倒すことでしょう?」
「いいえ、あなたの使命は、奪われた物を取り返すことよ」
ああ……何となく分かってきました。これは……ダメだ。これ以上、ここにいてはいけない。
身の危険を感じて席を立つ。
「帰ります」
「帰さない」
素早く振りぬかれる杖。
ガシャンと扉が施錠される音が鳴る。
「ここまで聞いたからには帰さない。どうしても帰るというのなら、少しの間眠ってもらうことになるわよ」
「な、何するんですか」
「うふふ」
今度はどこからともなく小瓶を取り出し、俺の目の前に掲げるメリッサ。
「ラシアの花って知ってる? 精神に強く作用する花なんだけど、最近良いものが手に入ってね……睡眠用に作ってみたの。これだけで十日は熟睡できるんじゃないかしら」
液体がゆらゆら揺れる。
「……さっきの人もこうやって脅したんですか?」
「あの人は面接をするまでもなくお断りしたの。だけどなかなか帰らずにしつこかったから、少し怖い思いをしてもらったわ」
なんて人だ……。滅茶苦茶だ。
「こんな依頼はおかしい。相手が人間なんて、依頼書には書かれてなかったじゃないですか」
「依頼書にはちゃんと書いてあるわよ」
そんな馬鹿な。
もう一度確認しようとギルドから持ってきた依頼書を取り出すと、メリッサがさっとそれを奪い取った。
「あら、綴りが少し違うわね。【偽物】」
今気付いた、とわざとらしく驚いてみせると、メリッサは依頼書に杖をかざす。
ほのかな光と共に、杖がかざされた部分の文字が入れ替わっていく。
やがて光が消え、「ほら」と差し出された依頼書はこう訂正されていた。
『依頼品:トーゾクの涙』
「げっ……」
トクゾーが……
「よりにもよって、この私から盗みをはたらくなんて、本当にお馬鹿さん」
笑うメリッサ。影の射すその笑みは、真顔よりも怖い。
新たに並び替えられた文字を指で撫でながら呟く。
「泣いても許してあげないんだから」
† † †
「ただいま」
「おう、おかえり……どうした?」
宿屋の親父が覗き込む。
「何か変ですか?」
「出かけてる間に何かあったのか? とんでもない災難に遭ったって顔してるぜ」
「災難……そうですね。真っ最中です」
「そ、そうか。気を付けてな」
親父の心配そうな声を背後に聞きつつ、二階の自室へ上がる。
部屋へ入り、扉を閉め切って一息。
ふぅ。確かに災難だった。
偽装、監禁、脅迫……事件です。
そしてこれから、その災難の真っ只中へ飛び込むことになっている。
結局、依頼を受けることを了承した。
もちろん十日も寝かされたくないというのもあるけれど、メリッサがこれだけは保証すると言ったので。
「フェイクの出来は最高よ」
興奮気味にメリッサは言っていた。報酬の品は高名な贋作家が作ったものらしい。
本物に勝るとも劣らない物を作り出す、天才とも称される人物が作ったというそれは、術者の魔力量を一・五倍に引き上げるという。
一・五倍……と言われても、そもそも魔力がよく分からない俺にとって、いまいちピンとこない数字だ。
「無限の魔力に比べると大したことない気がするんですが」
いろいろと不満が溜まっていたので、そう嫌味っぽく言ってみたんだけど……
「馬鹿言わないで!」
凄い剣幕で怒られてしまった。
「本物は他人の魔力を奪って自分のものに変える外法の魔具よ。人が扱っていいものではないわ」
……〈六賢〉って馬鹿なの? そりゃあ国も亡ぶよ。
メリッサ曰く、フェイクはそういったリスクはないという。ノーリスクで魔力量を引き上げる魔法道具など、魔法使い垂涎のお宝らしいのだ。値段は不明、他にないから。
分かっているのは、どんな魔法使い――たとえ賢者でも、いや、多彩な魔法を操る賢者だからこそ欲しがる一品だということ。それが今回の報酬。
なら……いいか。
そう思ってしまった。
「はーはっは、そんなに胡散臭いチラシが大量に来ちゃ、あんたも堪ったもんじゃないだろうな」
ヤマダイが豪快に笑う。山のような巨体がゆらゆら揺れて、椅子が悲鳴を上げている。
「そうなんですよ。何だかいろんな人から狙われてるようで気味が悪い」
話の流れで俺も席に着いた。
隣に恐縮した面持ちのハジク、目の前の席にヤマダイが座っている。
そしてヤマダイの隣にもう一人……巨体の影に隠れて見えなかったが、小柄な男が座っていた。
彼はゲツサンと言って、ヤマダイとは長くコンビを組んでいる間柄らしい。
そのゲツサンが口を開いた。
「本当に狙われてるのかもしれない。気を付けて」
「え? どういうことですか?」
「最近窃盗が増えてるみたい。お金持ちや、高価な物を扱うお店が狙われてるみたいだから、用心したほうがいいよ」
「へぇ……それは怖い。気を付けます」
隣の席から「うっ」と呻き声が漏れた。
どうやら今の話はハジクにも効いたようだ。ようやく分かったか。
「全く、最近のこの国はちょっとおかしいぜ。冒険者の失踪が止まったと思ったら、今度は窃盗なんてよぉ、世界一の治安が聞いて呆れる」
《ルーデン》は騎士団を中心とした軍事力と厳しい法の規制によって《ラフタ》一安心・安全を謳っていた。
その治安が揺らいでいるという。
「冒険者の失踪って止まったんですね」
「あぁ、近頃は聞かねぇな。一体何だったのか分かってねぇけどよ」
失踪事件が減ったっていうのも初耳だ。普段他の冒険者と話をしない分、いろいろと参考になるな。
「ま、そのうち分かるだろ。こんな職業やってると、嫌でも耳に入っちまう」
「ヤマダイさんの職業って何ですか?」
「俺か? 俺は『宝探し』をやってるよ。お宝話には常に網張ってるから、いろんな情報が紛れてくんのさ」
「『宝探し』……そんな職業があるんですね。ゲツサンさんも?」
「僕は『武道家』だよ」
おお、それは聞き覚えがある。
俺と一緒に召喚された人達の中にもいたはずだ。
「お前、そんな職業だったのか」
それまで押し黙っていたハジクがヤマダイに向かって言った。
「あん? 悪いかよ」
「悪かない。そうじゃなくて……何かなかったか? さっきの兄貴の話の中で、『宝探し』のお前がピンとくるような物は」
「チラシのことか? ねぇよ。十中八九、全部ぼったくりだろうよ。ってか、それを聞いてどうすんだっつーの」
「う、うるさい。聞いてみただけだ!」
ハジク……仮にチラシの中に何か凄いものが紛れてても、名誉挽回にはならないからね。そもそも俺に届いたチラシだしね。
「全部ぼったくりですか。やっぱり、高額過ぎですもんね」
溜息交じりに言うと、ヤマダイは首を横に振った。
「いいや、違うぜ。安過ぎるんだ。そのチラシが謳う効果が本物なら、そんな値段じゃ済まねぇ。少なくともゼロが二つ足りねぇな。だからそのチラシのアイテムは全部偽物ってこった」
「ゼロが二つって数億マーク……ほえー、凄い。だけど、似たような効果の物は実在するってことですか」
「ああ、あるぜ。それよりももっと凄いお宝がな。例えば『智者の愚物』」
「『智者の愚物』?」
「かつての〈六賢〉が作った強力な魔法道具の総称だ。人の心を操り魔を見通す炎『蒼い太陽』、術者に無限の魔力を与える『理捨汲々の石』、纏っている限り絶対に死なない法衣『不退纏』、敵を打ち滅ぼすまで超人的な速さで移動できる『撃滅の具足』、そして万人を魅了する花『婀娜華』の五つ。俺が死ぬまでに絶対一つは手に入れたいお宝達よ」
「おお、それはちょっとワクワクしますね」
「だろ? 男はそうだよなぁ」
仲間を見つけた、という風に嬉しそうに笑うヤマダイ。
「ところでなんで愚物なんですか?」
「ん……まぁ、そりゃあなんだ。本人達は悪ふざけで作っちまったらしいが、どうにも強力過ぎてな……国一つ滅ぼしてしまうくらいには」
「はい!?」
「あ、あくまで下手を打つとだぜ? ちゃんと使えば問題ねぇ。それに、扱いに困った馬鹿な連中によってどこかに封印されちまったからよ。使いたくても使えねぇ。おかげで今ではこの世で最も有名なお宝になっちまったぜ」
はっはっはーとヤマダイは笑う。
それって見つけないほうがよいのでは? と意見するのは野暮だろうか。
ついでに六賢なのに五つしかないのは何故……? まぁいいや。きっと俺には一生縁のないアイテムだ。
しかし魔法道具か……それはプレゼントとしては有りだな。
あいつ、魔法には妙なこだわりがあるし、自信を持っていそう。
もし賢者としての能力が増すような代物をあげられれば、喜ぶ気がする。
「ヤマダイさん、女の子受けしそうな魔法道具なんてご存じです?」
「うん? そりゃ、やっぱり『婀娜華』だろーよ。なんせ、どんな男もいちころだからな」
「あ、いや……そういうことじゃなくて。もっとこう、手頃で、魔法使いが重宝しそうな物で」
「それだったら『理捨汲々の石』に違いねぇ。なんせ、無限の魔力だからな」
「そういうことでもなくて……一旦、『智者の愚物』から離れて考えてください」
「なんでだ?」
「そりゃあ、そんな物、高額だしレアすぎるし、手に入る訳がないです……」
ああ、そうだ。自分で言って気付いたけど、そもそも魔法道具って、どれも嘘みたいに高いのだった。それなりの効果の物なら尚更、安く手に入る訳がない。
馬鹿なこと聞いちゃったなー。
「それはどうかな」
「え?」
ニヤリと笑って席を立つヤマダイ。
「こいつを見てみろよ」
そう言って、ヤマダイはそれまで座っていた席――その後ろの柱を指差す。
なんだ?
彼の巨体で隠れていた柱には、紙が貼られていた。丸っこい文字で、チラシのようにカラフルな文字が並んでいる。タイトルは『メリッサのお願い』だ。
チラシじゃない、これは――
『メリッサのお願い
依頼主:メリッサ・バローズ
依頼品:トクゾーの涙
報酬:理捨汲々の石(フェイク)
備考:応募者面接あります♪』
――依頼書。かなーり癖が強いけれど、依頼書だ。
「『理捨汲々の石』……のフェイク? 何です、それ?」
「なんだ、知らねぇのか。本物そっくりに作った模造品のことだ。贋作さ」
「贋作……つまるところは偽物ってことですよね?」
「くっく、まぁそうだ。だが偽物だといって馬鹿にはできねぇぞ。世の中には偽物を作ることにこだわる変人がいる。そんな奴らが作った偽物は見た目がそっくりなのは言うまでもねぇが、どれも相応の力を持ってんのさ。力がなけりゃ、決して世には出さない。『贋作家』って連中はそんなプライドを持った奴らだ」
「詳しいですね。ということは、このフェイクもそれなりの力があるということですか」
「フェイクの中から本物を見極めるのも『宝探し』の仕事だからな、そのへんはよく分かってるつもりだ。ま、この報酬がどの程度のアイテムかは、今の時点では何とも言えねぇ。依頼品の希少性次第さ」
「なるほど……」
依頼品である『トクゾーの涙』がどれくらいレアアイテムなのかが問題だ。
トクゾー……一体どんなモンスターだろう。名前からはあまり強そうな感じはしないな。
少しイメージしてみても、ゆるキャラみたいなのしか出てこない。
「トクゾーって知ってます?」
「知らんな。だがここに特徴が載ってるぜ」
お、ほんとだ。よく見れば依頼書に書いてある。
「えーっと、特徴は……素早い。逃げ足が速い。身を隠すのが得意……だけ?」
何だそのモンスターは……
ヤマダイがバシンと背中を叩く。
「お前はそういうのが得意だろ?」
そう言われて思い浮かんだのは、大きめの〈ファトム・ラビット〉だった。
「……確かに」
3 メリッサの依頼
《ルーデン》の城の西側に位置する商店街。
冒険者御用達の店が多く連なるこの通りに、依頼主メリッサも店を構えているらしい。
ギルドで貰った依頼書にある地図を頼りにきょろきょろしながら歩く。
そして地図が指し示す場所――紫の布でぐるりと覆われたようなテント型の店舗――の前で足を止めた。
「え、ここ?」
この店には見覚えがあった。半信半疑で名前を探すと、店の入口付近に『メリッサ魔道具店』という赤字の刺繍が見つかった。
何度見返しても、依頼書に書かれてあった連絡先と同じ。
……あの子の言う通りだ。俺って鈍くさい。
『メリッサ魔道具店』はユキのペンダントを買った魔法道具店だった。前回は名前を見逃していたみたい。
その時は女同士の睨み合いに巻き込まれた上に、必要経費とはいえ結構な額を使った。いや、使わされた感がある。要するにあまり良い印象のない場所である。
はぁ、もう当分来ないだろうと思ってたのに。
苦手なんだよね、ここの店主……メリッサさん? 一見おっとりして見えるけど、何か裏がありそうで。
ちゃんと名前を覚えていれば、わざわざ来なかったかもしれない――なんて後悔し始めていると、バンッと勢いよく店の扉が開いて、中から男が飛び出してきた。
「ひ、ひぃぃ! も、もう勘弁してくれ」
冒険者風のその男は傍目にも取り乱しているのが分かった。
何かに怯えたような表情。
「俺は降りる、俺は降りるから!」
それだけ言い残し、男は逃げるように去っていく。
……うん。やっぱり、やめておこう。
目の前で起こった異常事態に、くるりと回れ右。
あれはただ事ではない。何か、嫌~な予感がする。ギルドに戻ってもう一度情報収集すべき――
「あらぁ」
背後から甘い声が届く。
ぎこちなく振り返ると、店の色と同じ、紫の髪がトレードマークのお姉さんが微笑んでいた。
遅かったー。
メリッサは俺を見つけると「あらあら」と笑顔で近寄ってきた。
そのまま「お久しぶりぃ」とか「今日は一人?」などとしきりに話しかけられ、最終的には「お得意様だから、お茶でも飲んでいって」と腕を取られた。
そして逃げる間もなく店の中へ……
お得意様、ね。一度しか来たことがないのに、この歓迎ぶりはやりすぎじゃないか。絶対に逃がさないという強い意思を感じる。
何かまた高額な物を売りつけようと企んでいるのかもしれない――そんな予感がしたので、この店に来た理由をちゃんと話すことにした。
「へぇ、それじゃあなたも依頼書を見て訪ねてくれたのねぇ」
「そういうことになります」
丸いテーブルの対面に腰かけたメリッサは「ん~、どうしよっかなぁ」と迷った素振りを見せた。
あてが外れた、という感じではなさそう。気にしすぎか。
「ま、いいかぁ。面白そうだし」
考えがまとまったらしい彼女は、俺を見据えて言った。
「面接するぅ?」
「え、もう?」
「問題あるぅ?」
唐突に言われて戸惑う。
確かに依頼書には書かれてあった。しかし事前にあると分かっていても、そして何度やっても緊張するもの、それが面接。
相手が美人のお姉さんなら尚更だ。
ま、今回は落ちたからといって就職できなくなる訳でもない。むしろ、この場所から早く退散できる。
落ち着いて、気楽にいこう、気楽に。
「いえ、大丈夫です」
ドキドキしながらそう答えると、メリッサは楽しそうに笑う。
「では質問」
ゴクリ。
「あなたは、一人でここへ来たのぉ?」
「それはさっき答えた気がしますけど……見ての通り、一人で来ましたよ」
「それは、あなたの意思でぇ?」
「えぇ、まぁ。何人かとは話をしましたけど」
「あの子とは相談してないのぉ?」
「あの子ってツララですか? してませんよ」
「報酬はどうするのぉ?」
「……言わなきゃいけないです? それ」
「もちろん」
「……あの子にあげる予定です」
「まぁ、素敵!」
「一体何なんですか、この質問――」
「合格~」
「え?」
合格してしまった。
「依頼の内容を具体的に説明するわねぇ」
「ちょ、ちょっと待ってください。今ので合格なんですか?」
「そうよぉ、おめでと~。本当、仲が良いのね、あなた達」
なんだそれは……全然意味が分からん。
「もっとこう、レベルとか職業とか、確認すべきことがあると思うんですが」
「必要ないわぁ。〈ツヴァイ・ハーゼン〉の一人で、賢者ちゃんの彼氏でしょ? それで十分よぉ」
「コンビです」
「うふっ、どっちでも一緒」
あぁ、やっぱり苦手だ、この人。
頭を抱えていると、メリッサがじっとこちらを見て言った。
「どうする? やめる? 今なら間に合うわよ」
「急に真顔にならないでくださいよ……怖いでしょ。やります、やりますよ。せっかく受かったんだから」
「あら本当? ありがとう~。じゃあ、ちょっとこれを見てくれる? 奴らの居場所を教えるから」
そう言ってメリッサがテーブルの上に地図を広げる。
トクゾーの住処はギルドで照会しても出てこなかった。
だけどなんだ、生息地が分かってるのか。それなら話が早い。
「奴らはここにいるわぁ」
メリッサが指し示したのは《ルーデン》の東地区の一画だ。
「……すみません、街の中に見えるんですが。本当にここで合ってます?」
「そうよぉ。調べてあるから間違いない。昼間はここに隠れて、夜になったら動き出すのぉ」
街中にそんなモンスターが……知らなかった。今日は新しい情報ばかりだ。
「夜行性か。昼は寝ている?」
「かもねぇ。呑気に寝ているかもしれないわぁ。腹立たしい」
「は、はぁ」
「だけどそんなのは行ってみれば分かること。重要じゃないわぁ」
「へ?」
「重要なのは、この場所に、私の大事な物や、この辺のお店からくすねた商品も隠されているということよぉ」
「くすねるって……そんなモンスター、本当にいるんですか?」
メリッサは俯いて溜息をついた。やれやれ、という感じで。
そして顔を上げた時は再び真顔になっていた。
「いる訳ないじゃない。相手は人よ」
「……人?」
「ヒ・ト」
きっぱりと言い切るメリッサ。
嫌な汗が額にじわりと浮かんでくる。
「ちょっと、意味が分かりません。依頼はモンスターを倒すことでしょう?」
「いいえ、あなたの使命は、奪われた物を取り返すことよ」
ああ……何となく分かってきました。これは……ダメだ。これ以上、ここにいてはいけない。
身の危険を感じて席を立つ。
「帰ります」
「帰さない」
素早く振りぬかれる杖。
ガシャンと扉が施錠される音が鳴る。
「ここまで聞いたからには帰さない。どうしても帰るというのなら、少しの間眠ってもらうことになるわよ」
「な、何するんですか」
「うふふ」
今度はどこからともなく小瓶を取り出し、俺の目の前に掲げるメリッサ。
「ラシアの花って知ってる? 精神に強く作用する花なんだけど、最近良いものが手に入ってね……睡眠用に作ってみたの。これだけで十日は熟睡できるんじゃないかしら」
液体がゆらゆら揺れる。
「……さっきの人もこうやって脅したんですか?」
「あの人は面接をするまでもなくお断りしたの。だけどなかなか帰らずにしつこかったから、少し怖い思いをしてもらったわ」
なんて人だ……。滅茶苦茶だ。
「こんな依頼はおかしい。相手が人間なんて、依頼書には書かれてなかったじゃないですか」
「依頼書にはちゃんと書いてあるわよ」
そんな馬鹿な。
もう一度確認しようとギルドから持ってきた依頼書を取り出すと、メリッサがさっとそれを奪い取った。
「あら、綴りが少し違うわね。【偽物】」
今気付いた、とわざとらしく驚いてみせると、メリッサは依頼書に杖をかざす。
ほのかな光と共に、杖がかざされた部分の文字が入れ替わっていく。
やがて光が消え、「ほら」と差し出された依頼書はこう訂正されていた。
『依頼品:トーゾクの涙』
「げっ……」
トクゾーが……
「よりにもよって、この私から盗みをはたらくなんて、本当にお馬鹿さん」
笑うメリッサ。影の射すその笑みは、真顔よりも怖い。
新たに並び替えられた文字を指で撫でながら呟く。
「泣いても許してあげないんだから」
† † †
「ただいま」
「おう、おかえり……どうした?」
宿屋の親父が覗き込む。
「何か変ですか?」
「出かけてる間に何かあったのか? とんでもない災難に遭ったって顔してるぜ」
「災難……そうですね。真っ最中です」
「そ、そうか。気を付けてな」
親父の心配そうな声を背後に聞きつつ、二階の自室へ上がる。
部屋へ入り、扉を閉め切って一息。
ふぅ。確かに災難だった。
偽装、監禁、脅迫……事件です。
そしてこれから、その災難の真っ只中へ飛び込むことになっている。
結局、依頼を受けることを了承した。
もちろん十日も寝かされたくないというのもあるけれど、メリッサがこれだけは保証すると言ったので。
「フェイクの出来は最高よ」
興奮気味にメリッサは言っていた。報酬の品は高名な贋作家が作ったものらしい。
本物に勝るとも劣らない物を作り出す、天才とも称される人物が作ったというそれは、術者の魔力量を一・五倍に引き上げるという。
一・五倍……と言われても、そもそも魔力がよく分からない俺にとって、いまいちピンとこない数字だ。
「無限の魔力に比べると大したことない気がするんですが」
いろいろと不満が溜まっていたので、そう嫌味っぽく言ってみたんだけど……
「馬鹿言わないで!」
凄い剣幕で怒られてしまった。
「本物は他人の魔力を奪って自分のものに変える外法の魔具よ。人が扱っていいものではないわ」
……〈六賢〉って馬鹿なの? そりゃあ国も亡ぶよ。
メリッサ曰く、フェイクはそういったリスクはないという。ノーリスクで魔力量を引き上げる魔法道具など、魔法使い垂涎のお宝らしいのだ。値段は不明、他にないから。
分かっているのは、どんな魔法使い――たとえ賢者でも、いや、多彩な魔法を操る賢者だからこそ欲しがる一品だということ。それが今回の報酬。
なら……いいか。
そう思ってしまった。
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