僕たちの物語

haruka

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私だけの物語

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私だけの物語


???「本当にいいんだな?」
???「後悔しても遅いぞ。お前が選択するそれは、おそらく今の彼にとって1番の苦痛だ。」

?⁇「いいの。」

???「…彼は何か罪を犯したのかい?」

???「いいえ、なにも。」

淡々と答えていた少女はニヤリと笑う。
不気味な笑顔は、なにかを心より願う少女のそれとは似て非なるものだった。

???「わかった、では代償として……」

???「ずっと…ずっと見てるからね和」

一瞬見せたその顔はまるで相手を信じ、
助けを求めるかのような幼気な女の子の顔をしていた


???「代償は確かに受け取ったよ」

???「そう」

そうだった
名前がわからないと面白くないね
名前を明かしておくと、

まぁ、本を読んでくれたみんなにはわかるだろうけど一応ね

代償を受け取った側は、ミタマ、真名をウカノミタマ
ここ以降では、ミタマと表記するよ
とある東国の島国で信仰されている神様の名前だ
彼、彼女は代償を差し出すことで願いを叶えてくれる神様らしいよ


そして、代償を差し出した側は、美華、渡辺 美華
詳細は……まぁ、いいか
どうせ後でわかることだ
さて、続きを見てみようか……



ミタマ「願いはこれで最後か?」

美華「ええ、今ので最後よ」

「最後に一つ、聞いてもいいか?」

ミタマは興味を示す

「何?」

適当に返す

「本当の願いはなんなんだい?」

美華の顔が少し歪む

「僕が叶えてあげられるかもしれないのになんで私に教えてくれないの?」

「貴方には絶対に無理」

そう投げ捨て、その場から立ち去ろうとする美華を

「言ってみなきゃわからないだろう?」

ムッとしたようにミタマは後ろから言う

「もう私に関わらないで、それが今の最大の願いよ」

「…わかったわかった、このことにはもう触れないから」

また願いに来てくれよとミタマは続ける

「そうだね、考えとく」

と興味なさげに美華は言葉を放る




「明日には存在が消える」
そう両親には伝えておいた、そして、その後の計画も全て

両親は初め驚いていたが、
最終的には私の考えに同意してくれた

我ながらすごく身勝手だと思う

……私は、この願いがなければ後6年も生きれるか怪しい

私自身が死を身近に感じ、死を嫌う私は死から逃げようとした
私は生まれた時から病弱で、入退院を繰り返した
よくある話かもしれないが私にとっては史上最悪で、普通の事だった

自暴自棄になることも多々あった
それは波のように押し寄せ、不安の海は私を飲み飲んでいく
死んでしまいたい、でも死ぬのは怖いと言う身勝手な矛盾に嫌になる

そんな時、中学2年生の夏、例の如く不安の波に溺れていた時だ
ミタマと名乗る何者かに出会った、

それは代償を払えばなんでも願いを叶えてくれた

だが、私の病気は治せないらしい
理由は教えてくれなかった…今はまだ話せないと言われた

でも、簡単な願いならそれほどの代償はなかった

そしてふと、思ってしまった


話は過去に戻る……


「私のこと、消してもらうことはできる?」

思わず言葉に出してしまった

帰ってきた答えは

「可能」

だけだった、お喋りだったそいつはいきなり重い口調で話してきた

空気が張り詰める
息をするのも辛い
気持ちが落ち着かない


「それは、その願いはできるかできないかと言われれば、できる」

だが、と続ける

「お前を消すと言うことはこの世からお前の存在を消すことだと言うことを忘れるな」

そんな口調で話されると言葉が詰まる

「……記憶を残しておけるは人は最大で三人だ。その選択はあまりお勧めしない。なぜなら残された側はとてもじゃないが安らかな気持ちにはなれないだろう。」

「それでも、それでもその願いを叶えたいなら……協力してやる」

空気が戻ってくる
酸素を取り込める
気持ちを落ち着ける

「その前に助けてあげたい人がいるの、その人は、齋藤 和」

「珍しいね、君がそこまで思う人なのかい?」

「幼なじみだよ」
「彼も、私と同じようにいきなりの理不尽に飲み込まれた人
そして、今にも消えてしまいそうな雰囲気をもつ人」

「彼は、彼の両親は中学3年生の時、ある日突然失踪した」

ミタマは驚く顔を見せない

「で?願いはなんなんだい?」

要求はなんなんだと急かされる

「……誰がそんなことを願ったの?」

ミタマが固まる

「ごめん、だけど、その"質問"には答えられない」

「またそれ?」

「こればかりは譲れない
これは彼の願いと相容れない質問だから」

「そっか、」

「いやぁびっくりしたなぁ、いつから気づいてた?」

笑っているのに冷たい言葉
その言葉はが宙を舞う
なんでわかったんだろうか?
自分でもわからないが、
全てが仕組まれているかのように感じる違和感
そして、私が知っている世界と何かが異なる
そんな、世界から自分だけ取り残されたような感覚のせいだろう

「……なんとなくよ」

数秒の沈黙の後にそっかと興味が薄れたように返すミタマ

これはわたしの妄想なのかもしれないが、彼の両親は事故死していたはずだ

……なのに、ここでは"失踪"している事になっている

誰かが願ったのだろう。
そう思った

…確証なんてものはなかった


久々に彼と会った、そんなに打ちひしがれている様子はなく
元気そうなのが少し不気味だった

私は彼と仲良くなるために幼なじみと言う立場を利用し、付き合うまで発展させた

全ては、私のエゴだった
彼には救われてほしい、生きる目標を見つけてほしい
そんな独りよがりのエゴ

この時から、いや、もっと前から私は彼のことが好きだったのだろう
だが、その感情を押し隠し、そのエゴを盾にしていた

……だって、これは私が叶えた"願い"なのだから

彼の意志は全く関係ない

……そしてもう三つ願いを叶えた

私が消えた後も私の部屋は今のままで保つ、そして、私の家族と彼の記憶はそのままにしておくと言う願い
最後の願いは私が考える中で最悪の場合の備え
こうなってほしくはないが、備えは大事だ

だいぶ代償はを取られたが、彼のためになるならなんてことはなかった

彼と過ごす時間は一瞬で過ぎ去り、愛おしいと思う時間は日に日に長くなっていく

タイムリミットは卒業式までの約3ヶ月

それまでに出来るだけ彼との距離を詰める

……死は刻一刻と近づいてくる

そして、前も書いたようについこの間両親に話した
私はもうすぐに死ぬ事
彼、和を手助けしてほしい事
......そして、"私"がすべき事

私がすべき事は、私にとっては簡単だが、彼にとってはとても難しい事だろう

だってそれは、"彼に現実を見せる"事なのだから

ミタマのことは話さなかった
両親が何を考えるか分かりきっている

私は、卒業前日に、全てを打ち明ける
彼が何を言おうとも決してやめない

そう心に決めた


はずだった、
彼と長いこと、とは言っても3ヶ月と少しだが、一緒に居たせいだろう
彼に現実を話すことを躊躇う
彼に情が移ってしまった

唐突に恐怖は私を襲う
私は明日死ぬ……はずだ

忘れかけていたあの恐怖が、死に対する恐怖が蘇る

でも、何も残せないのはもっと嫌だ
葛藤しているうちに気がつけば朝になっていた

「今日、私は全てを彼に話す」

結果がどうであれ私は彼に全てを話さなければいけない

学校が終わり、和と一緒に下校する

…彼に現実を見せる時が近づいてくる


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今回はこれで終わりにしよう

次は、隠されていた真実が明らかにされるよ

お楽しみに





私だけの物語  (完)
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