〜The Secret Garden〜『薔薇の花園』という超高級会員制ボーイズクラブで、生涯支えたい運命の人に出会いました。

鱗。

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第二章『罪』

『御方』の、驚きの正体

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目覚めると、汗をびっしょりと掻いていた。髪も、それを受け止めていた枕までしっとりと濡れていて、用意されていた綿100%のパジャマが汗を吸収してくれたおかげで、布が身体に張り付いている部分が気持ち悪い。今が何時かは分からないけれど、一度起きてシャワーでも浴びて、着替えをし直した方が良さそうだった。


ベッドからむくりと起き上がり、出窓の外に広がる光景を見て溜息を吐く。真っ暗な水平線と、その上にぽっかりと浮かんだ月が、この場所が離島である事を、そして、この場所に俺を連れてきた人物の気分次第でしかここを出られないのだという事実を思い知らせる。俺は一体、いつまでこの場所にいればいいんだろう。


年頃の女の子なら喜びそうな天蓋付きのベッドから降りて、備え付けの風呂場に向かう。流石にパジャマは一着しか用意されていないので、この場所に初めて来た時に着ていた自分の洋服をクローゼットの中から選んだ。綺麗にクリーニングされているので、清潔さは勿論の事、新品みたいな仕上がりになっている。安物の、しかもセール品だったのだけど、随分と仰々しい扱いを受けているうちに、それなりな顔付きをしてくるものだから、不思議な物だ。


シャワーをザッと浴びて、ドライヤーで髪を乾かしながら、俺はさっき見た夢をぼんやりと思い出していた。教会にある深い森の中にある、さらに古びた小さな教会。そこに集まる、異様な熱気に包まれた大人達。祭壇の前に立つ豊かな髭を蓄えた男と、その斜め後ろにひっそりと立つ、枯れ枝の様に頼りない相貌の母。そして……


『異質な格好』をした少年が、祭壇の前に現れて人々を見下ろし、跪いた母の頭に向けて、小さな手を翳していた。


あれは、あの光景は、一体。過去の記憶、なんだろうか。今までずっと忘れていたけれど、昼間祐樹先生と話をした影響を受けて、古い記憶の糸を、漸く手繰り寄せられたのかも知れない。あの少年を、俺は何処かで。あの少年こそが、俺がお兄ちゃんと呼んで慕っていたという人物、御方なのか?


しかし、祐樹先生が話していた話が本当なら、御方はその当時、母親と共に海外でひっそりと暮らしていた事になる。ならば、あの少年は、一体何者なんだ。そして、祭壇の前に現れたその少年の、あの姿。あの異質な姿を見ても、幼い俺は全く動揺していなかった。つまり、少年のあの姿を、俺は見慣れていたという事になる。


だからこそ、俺は、お兄ちゃんと呼んでいた少年の顔を思い出せなかったんだ、と深く納得した。あんな姿でいれば、思い出せなくて当然だ。だって、あの少年は……


髪を乾かして、この一週間でだいぶ見慣れた部屋に戻る。クリーニングされて戻ってきた自分の服に着替え、枕元に用意されているミネラルウォーターのペットボトルを開封して、一口含んだ。そうして一息ついた所で、静かに部屋の扉をノックする音が聞こえた。信じられない事に、この部屋には、というかこの建物がある島には何処を見渡しても時計という物が存在しないので、今が何時かは把握できないけれど、恐らく真夜中だろうという事くらいは分かる。だから、こんな夜更けに一体誰が尋ねてきたのか不思議に思って。とは言え、御方の所有するこの島に野盗なんて入る隙間も無いだろうし、そんな人間がご丁寧にノックをしてくる筈もない。この建物を隅から隅まで手入れしている使用人さんが俺に用事でも伝えに来たのかなと思い、何の警戒心も抱かずに、どうぞ、と扉に向かって声を掛けた。


だけど、その時になって、そういえば俺は、ここに無理矢理連れて来られた拉致被害者で、自分の意思とは無関係に軟禁されている状態なんだよなと、フッと思い出したりもしたのだけど。返事を返した次の瞬間に部屋に入ってきた、恐ろしく美しい相貌を持つ美男子を見た瞬間に、全てがどうでも良くなった。


はいはい、どうせ、俺はここにいる人間の誰しもに、腕っ節ではまるで適いませんとも。何故って、纏っている空気が違うから。自分自身が小さい頃から格闘技を習ってきたから分かるけど、使用人どころか庭師のおじさんに至るまで、絶対に何かしらの武道経験を積んだ、選りすぐりの人材が登用されているに違いない。特にいま目の前にいる、軽く俺を取り押さえた経験のある、慎也さんとかはね。


「よう。元気?」

「……一応は」

「なら良かった。御方も、お前の体調に関しては心配されていたから、これで安心するだろ」


それって本当ですか。誘拐犯が被害者の体調心配するなんて、ドラマや映画やらに描写されたフィクションだろう。身代金を要求しておきながら、実際はもう殺されてるっていうのがセオリーで、警察だってそのつもりで捜査してるって、アメリカかどっかの警察特番で言っていたぞ。この場合、俺に対する身代金なんて要求しやしないだろうけど。というか、大きな括りで言ったら、俺は御方にとって身内の分類に入るのだろうし……嗚呼、考えただけで嫌になってきた。本当に、さっさと自分の国に帰りたい。


「起きてるなら丁度良いや。御方がお前に会いたがってる。着いてきな」


いや、絶対に嫌なんですが……と言って断れる空気ではない。御方の機嫌を損ねたら、それこそ一生この島から出られないなんて話になってしまうかも知れないし。それに、何より、俺のこの胸の中に広がる疑問や疑惑を晴らす為には、一度直接御方と対峙して話をするのが、一番手っ取り早い。だから、俺は渋々と頷いて、部屋を出て御方が待つであろう場所へと向かった慎也さんの後に着いて行った。


御方という人がどんな人なのか、俺は、祐樹先生と話しているうちに、その人物像が朧げながら見えてきていた。太極を見ながら、その中で一番正しい選択を選び取り、行動に移す際には誰よりも迅速で、自己判断能力に長ける人物。俺ですらTVで見た事のある有名な経営者や政財界の重鎮なども、薔薇の花園にいた時には良く見掛けたりはしていたけれど、御方と相対した時の圧倒的なオーラとは比べるに値しない。しかし、祐樹先生の口から語られる、何処か親しみすら感じる数々のエピソードからは、誠実に接すれば、こちらの疑問には答えてくれそうな、そんな雰囲気を感じ取れるのだ。


数多の人間達の信仰を一身に受けるに値する、硬軟併せ持つ類稀な存在。そんな人が、何故こうまでして俺みたいな人間に興味を抱き、手元に置き続けるのか。その訳を知るためにも、そして、俺の中にある疑問を解消する為にも、俺は御方に会っておく必要があると思っていた。しかし、思っていたよりもずっと早くそのタイミングが来てしまった。対峙するに当たっての気持ちを作っておく余裕すらない。雲上人だとは常日頃から思っていたけれど、人の都合を全く考えていないところは、祐樹先生から取り入れた情報を加味しても、やはりどうしても苦手だ。


「初めに会った時よりは、良い面する様になったな。なんかあったの?」


前を行く慎也さんが、振り向きもせずに俺に話し掛けてきた。廊下には点々とランタンの照明が焚かれていたけれど、足元まで綺麗に照らすほどの明るさではなく、慎也さんの上半身は、夜の闇にぼんやりと浮かび上がっている様に見えた。こう言っては何だけど、少しだけ不気味だった。


「何かって、いえ、特には。でも、環境が環境ですから、それに、これでも色々と経験してきましたし……」


その経験の中には、拉致軟禁されて、いつ帰れるか分からない環境に突然放り出された、というものも含まれているんだけど、それを慎也さんに向かって口に出せるほど、向こう水にはなれそうにない。


「そっかぁ。でも俺の目から見ると、そういう事じゃないっつーか……あ、アレだ。そういえばお前、ロサ・フェティダとヤッたんだっけ?なんか、それまで童貞だったらしいじゃん。多分それだなぁ、きっと」


あからさま過ぎる、ど直球の台詞に言葉を失う。この人、確か花園出身の薔薇だったよな?だとしたら、俺から見てこの人は先輩に当たる筈なんだけど、だとしたら、どうなんだ、この品性のカケラもない言葉選びは。いいのか、こんな人が、御方の側近で。御方は、一体何を考えて、こんな不作法極まりない人を自分の最も身近な場所に配置しているんだ。御方という人が、分かりそうで分からなくて、酷く混乱する。その俺の混乱を他所に、慎也さんは話を続けた。


「お前に会ったら、これだけは聞いときたかったんだけどさ。あいつが好き好んで自分の身体を許すとは思えないんだよね。だから、どうやってお前があいつとヤれたのか知りたいんだけど、教えてくれない?」


なんて、ずけずけと物申してくる人なんだ。こんな、稀代の天才に彫刻された美術品みたいな顔をして、こんなに明け透けに話を振ってくるなんて。そもそも、この人がロサ・フェティダさんの同僚だというのは知識として知っているけれど、そんな同僚のプライベートな話にこうまでして首を突っ込んでいけるなんて。あなたにどれだけの権利があるっていうんだ。俺は、ロサ・フェティダさん自体まで馬鹿にされた様な気持ちになって、腹が立って仕方が無かった。


「なんで、貴方にそんな話をしなくちゃいけないんですか」

「あいつが、俺の元恋人だから」


 時が止まる。呼吸すら。


「あいつはずっと、キスしか許してくれなかった。だから、お前にあいつが抱かれたって聞いて、最初はお前に無理矢理ヤられたんだと思った。でも、そうじゃないんだろ?」


言われている意味が、頭に浸透していくのに、然程時間は掛からなくて。


「だから、教えて。あいつは、どうしてお前に肌を許したのか」


俺は、自分自身の罪深さを、自覚したんだ。


「………あの晩、御方が、ロサ・フェティダさんと『同じ人種』だとロサ・フェティダさんの口から告げられたので。そんな人を興奮させられるだけの交配が行えたら、絶対に無理だと諦めていた御方の気を引けるかもしれないと、話したんです」


ぱりん、と薄いガラスが割れた様な音が、廊下に響いた。ハッとして正面を向くと、骨董品的価値が高そうなブローチや宝飾品が並べられたガラスのショーケースが、慎也さんの拳で粉々に打ち砕かれていた。


「お前、運良いな。今じゃ無かったら、どれだけお前が御方に気に入られてる奴でも、ぶん殴ってたよ」

「………悪運だけは、良いので」


まるで、悪魔に魅入られているかの如く。


「次に会った時は、覚えてろよ」

「もう出会わない事を祈ってますよ」


本当は、殴って欲しかった。好きな人の身体を手に入れる為に、躊躇いなく手を汚した自分を。だけど、それをこの人に告げた所で、どうにもならない。だったら、次に会った時に持ち越される話に持って行った方が、俺としても都合が良い。俺は、誰かに文字通り打ちのめされたかった。だから、この場に漂う空気を敢えて冷たいままにし、お互いの間に緊張感を保ち続けた。


ショーケースを横殴りして割った慎也さんの拳は深い裂傷を受けていて、そこから鮮血を滴らせている。しかし、慎也さんはその拳に何の処置も加えずに、再び歩き始めた。その背中からは、怒りに満ちたオーラが立ち昇っていて。かつて愛していた人の純潔を守ってやれなかった自分自身に向ける憤りすらも、その身に纏っている様だった。


無言のまま薄暗い廊下を歩き続け、階段を三階分程度上がった所にあった大きな観音開きの扉を開けると、一気に開けた場所に出た。この、城という表現が似つかわしい建物にあって、屋上とも呼べる場所に案内されたのだと分かった俺は、そこに広がる光景に圧倒された。


人工的な灯り一つ無い、満点の星空。360度を樹海と海に囲まれ、月明かりだけが周囲を照らす光源となっている。その、大自然が生み出す圧倒的な景観に息を飲み、俺はその場から動けなくなった。そんな俺の耳は、ふふ、という風に乗ってやって来た誰かの含み笑いを拾った。その声の主を探す様に視線を走らせると、その声の主……御方は、すぐに見つかった。豪奢な絨毯が敷かれたその上に椅子を置き、天蓋の内側から銀色のワイングラスを片手に、悪戯が成功した子供染みた笑顔を浮かべて、こちらを見ている。その笑顔を見た俺は、俺にこの景色を見せる事自体も、俺をこの場に呼び寄せた理由の一つとしてあるのだろうなという意思を、そこから感じ取った。


「この景色が気に入って、私はこの島を購入したんだ。感想はどうだ?」


屋上には、御方の為に酒席が用意されていた。俺の分の席も用意されていて、例え俺がどんな状態であっても、この場所に引き摺り出されていたんだろうなというのが明白に理解できた。


「……こんな景色、生まれて初めて見ましたよ。単純に、凄いと思います」

「そうだろう。なら、君をこの場所に連れてきて正解だったな。それにしては、私に対する感謝の気持ちが見受けられないのが不思議だが……まぁいいだろう。同席する事を許す。座りたまえ」


本当に不思議そうにしている所が、癇に障って仕方が無い。けれど、いまこの場で俺の苛立ちや鬱憤を爆発させても意味がないし、機嫌を損ねさせでもして、本当にこの場所に置き去りにでもされたら一大事だ。誘拐犯と拉致被害者の立ち位置は未だに持って健在なのだから、俺が無事に母国に帰国を果たせるまでは、大人しく言う事を聞いていなくてはならないだろう。だから、俺は御方に用意された席まで近付き、失礼致します、と一応礼儀を通してから、その席に座った。


「どうやら、心配していた体調については問題無さそうだな。君に何かあっては、私としても困ってしまうからね」

「……おかげ様で、生活に関しては、何の不足も無く過ごせていましたから」

「当たり前だとも。不足があるなどと、私が許す筈も無い。他に何か、困っている事は無いかい?君が望むなら、私が何でも用意してみせよう」


背筋が、ぞわり、と粟立つ。なんて、分かりやすい秋波だろうか。御方は絶世の美男子であるのはさる事ながら、蠱惑的で妖しい色香を纏わせた、危険過ぎる人物だった。地位も権力も金も思い通りになり、人心すらも掌握してきた、まごう事なき支配者階級の人物。そんな人が、普通であれば一瞥すらも与えられず、話を聞く価値すら無しと掃いて捨てられる様な存在である俺に、どこまでも気を遣ってくる。


自分を気に入って欲しいのか何なのか意図は不明だけれど、そんな雲の上にいる様な存在の人物に気を遣われるのは、普通であれば悪い気はしないだろう。しかし俺は、俺に向けて最大限の持てなしと気遣いを向けてくる御方に、薄気味の悪さしか感じられ無かった。手を握ってこないだけ、まだ救いがあるか。それにしても、不気味だ。この人は、こんなに俺みたいな奴に気を遣ってきて、一体どういうつもりでいるんだろうか。


………もしかして本当に、俺の事を?


ブルッと、身震いをする。冗談じゃない。自分が薔薇になる前は、御方にその存在を認められたら、いつかその内『そんな流れ』にもなるかもしれないな、とぼんやり考えていた時期もあったけれど。ロサ・フェティダさんという愛する人と身体を結んだ経験をした俺は、仕事だと割り切った関係であろうとも、もう他の人になんて絶対に触れたくない、とまでに潔癖に考えるようになっていた。


他の人に触れた所で自分の身体が反応するとも思えないし、そもそもの欲求が湧いて来ない。この一週間、自分の身体を慰めた時にも、頭に思い描くのは、あの人の艶かしい肢体を組み敷いた時の記憶ばかり。一晩で身体が作り替えられてしまったのは、あの人ではなく自分の方だったのだ、と確信を抱いてしまうほどに、俺はロサ・フェティダさんに夢中だった。


あの人に会いたい。
あの人に触れたい。
あの人に愛を囁きたい。


だから、物理的にも心理的にも、俺とロサ・フェティダさんとの間を隔たらせている元凶である御方を、俺はどうしても許せなかった。


「貴方に何か用意して欲しい物なんてありません。ただ、これだけはお願いしたい事があります」

「なんだね?言ってごらん」

「ロサ・フェティダさんを……あの人を、貴方から解放して下さい」


御方が、どれだけの執着を俺に見せ、俺の気を引こうとも、俺は御方の気持ちに応えようなどとは思わない。けれど、あの人が御方の目には見えない呪縛から逃れ、自分の意思でその生を歩いていける様になる手伝いが出来るなら。


俺はこの身を御方に委ねても、構わない。


一晩だって、二晩だって、一週間だって、まるで前世で契りを交わした恋人同士の様に、睦み合う覚悟は出来ている。ロサ・フェティダさんの前でしか反応しなくなり、男としての機能を失った身体を抱えていても。だから、その身体が、まるで使い物にならなくなったとしても。ロサ・フェティダさんの美しい肢体を、御方のその身に重ねて、あの人の為に、俺は。


「……私は、あの子を縛り付けていたりはしていないよ。あの子はあの子なりの意思で、花園の為に動いていてくれている。自由意志はあの子にあって、それに口を出せる権利は、例え私にだってありはしないと考えているよ。だから、私からあの子に働き掛けられる事は、何もないんだ」

「貴方が、あの人に自分の生を生きよと促してくれるだけで良いんです……だからッ」

「君に、あの子の生きる道を奪う権利があるとでも?随分と自分の価値を高く見積もったものだね。一度交配した程度の関係性で、あの子の全てを知ったつもりになっているのだとしたら、思い上がりも甚だしい」

「……貴方は、あの人に触れてもいないじゃないか!!」


怒りを通り越して、悲しみすら感じてしまった俺の声量は、どんどんと抑えられないものになっていった。御方の斜め後ろに控えていた慎也さんが、御方の前に、スッと手を差し込み、身体の前面をグイッと俺に向ける。その眼光は鋭い。この場所に連れて来られて、初めて朝食を用意された時の様に、俺に対しての気遣いを感じさせる様な態度は微塵も感じられ無かった。こうして静止されるのが二回目であるという事実も裏付けとしてあるのだろうが、この人と俺の間には、ロサ・フェティダさんとの件もある。もはや、この人からは、俺に対する敵意以外の感情は感じ取れなくなっていた。


「あの人は、貴方に触れて貰いたくて、その一心で俺に自分の身体を許したんだ!!殺したいほど憎いと思っている、この俺に!!それが、どれだけの覚悟だったか……ッ絶望の先にある希望の為に、あの人は、自分の純潔を俺に託したんですッ!!あの人を唆してでも、あの人の身体が欲しかった俺の罪は消えない。だけど、それだけの覚悟を持ってしても、貴方に触れて欲しかったあの人の気持ちは、踏み躙らないで下さい!!」


俺が、ずっと御方に向けて言ってやりたかった言葉を涙を滲ませながら感情と共に吐露すると、目の前にいる、慎也さんの瞳に宿っていた敵意が、フッとその色を変えた。『お前……』と、小さく俺に声を掛けてくるも、何か言葉を続けようという意思は、そこからは感じ取れない。俺としても、いまは慎也さんに構っていられるだけの心理的余裕はないので、慎也さんには申し訳ないけれど、いまは一旦無視をして、御方に向けて力強い視線を向けた。


「あの人に触れてあげて下さい。そうすれば、あの人は、自分の生を歩いて行ける。花園の為に生き、花園の為に死ぬと、自分に呪いをかけたあの人を救えるのは、きっと、貴方だけなんです……貴方が、俺に何を望んでいるかは分かりません。けれど、貴方があの人を救ってくれるのなら……俺はこの身を貴方に捧げても構わない。例え、それが一生涯であっても」


俺は、あの人を、ロサ・フェティダさんを、愛している。けれど、俺にはあの人が救えないかもしれないと思い始めている以上、俺があの人の為にしてあげられる事は少ない。ならば、この身を賭してでも、あの人の為にしてあげられる最大限の助力はしてあげたい。もう再びあの人に会えなくても、一生このまま、この島に囲われる存在になったとしても。


あの人に、幸せになって貰いたい。


「は、……っ、ははははッ!!」


この場の空気に全くそぐわない、快活という言葉以外に表現しようの無い笑い声が、何の遮る物の無い満点の星空に溶けていく。その笑い声を発した人間が、今までずっと対峙していた御方だという事実を脳が受け入れられず、当惑した。


「はー、……いや、君はこれで本気なんだろうから、笑うのは流石に失礼だった。すまなかった」 


素直に頭を下げて謝ってくる御方に、ギョッとしたのは俺だけでは無かった様で。目の前にいる慎也さんも、その後方にいつの間にか位置していた新庄さんも、驚きの表情を浮かべている。その新庄さんの右手は自分の懐に伸ばされていて、何かを握り締めている様な格好で固まっていた。もしかして、その手に握り締めているのは拳銃か何かだったのかもしれないが、その正体は分からない……分からなくて、何よりだ。


「自分の身体にどれだけの自信と価値を見出しているのかは分からないが、その意気や良し。気に入った。私の手元に置いても良いかもしれないと考えてしまうほどにね……だが、君には悪いが、例えそうなったとしても、私はあの子に触れるつもりはない」


揺るぎない決定事項を告げてくる御方の瞳に宿る意思は固く、俺のこの全てを掛けた交渉が決裂した事実を、ただ静かに俺に告げた。


「そんな……」


俺の意識は絶望に追いやられ、いつの間にか立ち上がっていた身体から力が抜けて、そのまま椅子にその全体重をすとん、と乗せた。頭を抱えて、くそ、と小さく漏らす様な悪態を吐き、そのまま嗚咽する。


惨めだった。お前になど、何の価値も無いと言われた様な気持ちになって。どれだけの執着を見せていても、結局この人は、雲上人以外の何者でもない。御方にとってみたら、実際に俺の価値なんて、たかが道端に転がっている石ころ程度の存在なんだ。過去に一度、それに足を取られ、蹴躓いてしまったが為に、恨みを抱えている……きっと、その程度の存在なのだろう。けれど、それを受け入れるだけの心の余裕は無かった。それを受け入れてしまったら、俺は、自分自身を保っていられない。


「しかし、君があの子に寄せる親愛の気持ちと、あの子を救いたいという熱意を、このまま無碍にしておくのは忍びない。それは、この場にいる誰しもの総意だ。そうだろう?慎也」

「え?俺ですか?」


突然話し掛けられた慎也さんが、自分の顔を指差してキョトンとしている。『何でいま俺?』と顔に書いてあるので、その心情は察するに余りあった。


「そうだろう?要。お前だって、この子を見て、何とかしてやりたいって、思うよなぁ?」


より一層砕けた口調で、今度は更に遠くにいる新庄さんに向かって声を掛ける。新庄さんは、懐に伸ばしていた手をスッと下ろして苦笑し、その場で御方に向かって頭を下げた。


「私の心は常に、貴方様と共にあります」

「ふふ、なら、私が今から話す事は、全て私の『独り言』だ。二人共、そのつもりでいる様に」

「「はっ、」」


新庄さんと慎也さんが、同時に勢いの良い返事を返す。そして、それを受けた御方が、左手を使ってその場の空気を払う様な仕草をした。すると、慎也さんは俺の目の前から自分の身体をスッと外し、新庄さんのいる場所まで下がっていった。俺達のいる酒席に向かって、二人並んで直立不動の体勢を取っている。遠目で見ても、全く隙というものが見当たらない。けれど二人共、その存在感は先程までとは比べ物にならないくらいに小さくなっていた。


「さて、人払いは済んだ。これから話す話は、大いなる暇を弄んだ私の独り言だ。だが、質問があれば随時受け付けよう。それくらい、私にとっては、児戯に等しいからね」

「………はぁ、分かりました」


何がなんだか、一体何が始まったのか話についていけないけれど、ここで『待った』を掛けられるほど、俺は胆力に溢れた人間ではない。なので、取り敢えずは、御方のする話に合わせて話を進めていき、分からなくなってきたらその都度質問をしてみようという気持ちに切り替えた。


「よし、ならば……どこから話したものかな。恐らく、先生とも話をしていただろうから、私の事についての知識はある程度備わっていると考えてもいいだろうが、一応お浚いはしておこうか。私が、君の母国で最大規模を誇る信仰宗教の教祖、『御方』であるという事実は知っているね?あれは嘘だ」

「待った」


御方と自分の顔の前に、ぴたりと手を出して、俺のこれまでの人生で最も切実な『待った』を掛ける。すると、御方はこちらを悪戯っ子の様な目で見つめながら、にこりと微笑んだ。


「おや、私はいつまで待てばいいのかな?」

「いや、その、ちょっと……話が全く、頭に入って……いや、内容は理解しているんですが」

「ふむ、難しい話をしたつもりはないんだがな。それに、こんな序盤で『待った』を掛ける様では、私の独り言の面白みが君に全く伝わらないじゃないか」


独り言に、面白みなんてあるんでしょうか……なんて言う突っ込みは、それこそ無粋なんだろうか。気を取り直して、俺は、大いなる暇を弄んだ御方(?)の独り言の続きを促した。


「貴方が、御方ではないのだとしたら……貴方は、誰、というか、何者なんですか?」

「私は私だよ。御門 蓮という名前も本物だし、私が先代の残した愛妾の子供なのは本当だ。しかし、その経歴に付いては、大部分が嘘で塗り固められている。最も、公の場においての行動や、セレモニーに参加したりする『表』の仕事を担当しているから、全くの影武者という訳では無い。御方と私は、コインでいう所の裏と表の様な存在。とはいえ、私の役割は広報的な立ち位置がその大半を占めているから、どうしても私の方が御方その人よりも目立ってしまうのだけれどね。しかし、それが私の本来の役割であり、本質だ。私の身体が例え灰燼に帰しても、御方にとっては何の傷にもならない。新しい、御方の表を担当する人間が用意されて、その肉の盾を持ってして、御方の身の安全性を高めればいいのだから……つまり、私の代わりは幾らでもいるのさ」


最後の一言、一言一句までをも、まるで読み上げる様に口にした御方……だと思っていた人物は、『こんな実質的な権限すら持たない傀儡に遜る必要などない、自分の事をもっと気軽に『蓮』と呼んでくれ』と朗らかに笑った。俺は、与えられた情報量と俄には信じられない真実を前にして、ぴくりとも身体を動かせずにいた。


ずっと御方だと思い込み、憎しみを抱いていた人物が、影武者だった。これは、恐らくこの信仰宗教の信者だけでなく、世界中の人間を仰天させる事実だろう。そんな、極めて秘匿性の高い情報を、こんなにもあっさりと口にする御方……蓮さんの豪胆さに、呆気に取られた。しかし、それと同時に、俺は深い納得も得ていた。蓮さんが俺に対して行ってきた行動やこれまでの言動と、御方という人間が俺に働き掛けてきた言動や行動は、まるで一致しなかったからだ。人物像が全く把握出来なかったのも当然だ。二人の人間に対する印象を、一人に統合しようとするのは、土台無理な話なのだから。


つまり、今まで俺に強い執着心を露わにしてきた人物は、目の前にいる影武者であった蓮さんではなく。本当の教祖としての権能を有した、本物の『御方』の方であるという事だ。


「……質問して、いいですか?」


視線だけで、どうぞ、と促される。だから俺はそれを受けて、緊張でカラカラに乾いてしまった喉から声が出しやすい様に、ごくりと唾を飲み込んでから口を開いた。


「なら……本当の『御方』とは、何者なんですか?」


結局、その声は少しだけ掠れてしまったけれど。あまりの真剣みを帯びていたおかげか、情け無いを形にしたような格好にはならなかった。


「……御方の名前までは教えられない。しかし、その経歴を語る事は難しくはないよ。御方は、先代の教祖である父が、正妻との間に授かられた実子だ」

「え……?でも、正妻の方は確か……」

「あぁ、先生からどこまで話を聞いているのかと思えば……ふふ、君は、相当先生に気に入られている様だね」


あの人が知ったら相当嫉妬しそうだな……と意味深な言葉を残して、蓮さんは続けた。


「確かに、正妻であられた奥方は、私達親子の存在を知った心労もあって、自死を図られた。しかし、御子であらせられた後の御方は、その一命を取り止められたのだ。私の母は狡猾な人でね。海外にその身を移し、その存在を父に隠されて生活している一方で、着々と自分の派閥を作り上げていった。その内、いつの間にか母の作った派閥は教会内での最大派閥となり、教祖である父ですら、その声を無視出来なくなった。結局、生まれつき身体の弱かった御方よりも、海外の生活に慣れ、広い見聞を有している『外での修行』を積んだ私の方が、教会の将来の展望は明るいものであると判断が下され、私が教祖を継承する流れが出来上がったんだ。気質が穏やかで、もとより信者の出身ではなく、『箔』という理由から見合いで無理矢理教会内に取り入れられた奥方は、自分の派閥を作り、周囲の人間の総意を固めていった野心家の私の母に、母親としても女としても負けてしまった。その為、自分の居場所を無くしてしまったと感じた奥方は、自死という道を選ばれたのだ」


俺は、言葉を失った。教会内での地位を得る為に、自分の身体と、息子である俺ですら利用した母を知る俺としては、蓮さんの身の上は他人事では済まされない話だったからだ。女性という生き物の怖さを知っていたつもりだったけれど、蓮さんの母親は、まるでその存在そのものが悪を体現している様な人物だと思った。正妻である奥方は、どんな気持ちで嫁ぎ、子を成し、果てていったのか。その心情はどうあっても分かりようがないけれど……実子を自死に巻き込もうとした点だけは、同情出来なかった。


「なら、何故……御方はその存在を秘匿されてしまったんですか?」


生きていたなら生きていたで、宗教的に見ても死の淵から甦った『神の子』として崇めるに相応しいエピソードとなりそうなものなのに。何故、そんな風に扱わなかったのか疑問に思い、質問をする。すると、蓮さんは少しだけ憂いを帯びた眼差しを、夜の帳が下りて久しく時間が経過した暗い海へと向けた。


「神の子として大切に扱っていただけでなく、晩年に授かった事によりその愛情を深く注いでいた実子を、下手をしたら本当に失ってしまったかもしれないという衝撃を受けた父……教祖は、呆気なく精神を病んでしまった。その為、二度と同じ目には遭わせてなるものかと、その存在そのものを幹部らに向けて公然の秘密とし、最も信頼し、懇意にしていた幹部が管理する教会に、御方を軟禁した。そして教祖は、その命が尽きるその時を迎える時になって、私の母に反旗を翻したんだ」

「反旗……?」

「あぁ。遺言に、『家督の全て、教祖の持つ権能の全てを、正妻との間に出来た実子に授ける』と遺したんだよ……そして、暗躍にその生涯を賭していた私の母は、悪魔がその身に取り憑いた狂女であると教会から正式に認められ、その場で『粛清』された。そして、教祖である父の遺言の通りに、相続と御方の襲名が行われた。私の目の前で、まるで何事も無かったかの様に、淡々と。父は、深く愛していた実子である御方を死に追いやろうとしていた私の母を許さなかった。そして、この私もね」


この場合の『粛清』が、何を意味しているのか。俺の想像力が至る範囲で考えるだけでも、気が重くなる。その場にいた蓮さんにとっては、到底忘れられない記憶だろう。しかし、そんな生き地獄を味わった蓮さんの人生は、まだ続いている。蓮さんは、自分の命が風前の下に晒されている自覚を持ち、母親と同じ道を歩まされる現実を、その葬儀後の大会議の場において受け入れたのだという。


しかし、事態は予想だにしない展開を迎えたのだった。


「私に銃口を向けた幹部の前に、突然御方がそのお姿を現された。そして、銃口の先に晒されながら、御方は私に、こう仰られたんだ」





『いま、この時、貴方の命は救われました。これからは、一度死んで生まれ変わったという気持ちを胸に生きていって下さい。この、俺の様に』





「……私がいまこうして、喜んで御方の肉の盾をしているのは、あの時、私が御方に、この命を救われたからだ。それが、例え父に買収された幹部連中や御方の手によって準えられた予定調和だったとしても、私は御方になら騙されてもいいと思えた。御方は、そんな私の忠誠を受け入れると、速やかに教祖の為に用意された席に着き、我々に向けて鷹揚に言い放った」






『我に従え、さすれば導かん』






次元の違う、一般に生きる人間には、及びのつかない話をされた俺は放心状態になって、ただ話を聞くだけの木偶の坊に成り果てていた。そんな俺を見ても、蓮さんは笑うでもなく、呆れるでもなく、俺の様子を然もありなんと受け入れて。銀色のワイングラスに注がれた赤ワインを一口含んでから、にっこりと笑みを浮かべた。


 「私が偉そうな態度をしてもそれなりに様になっているのはね、その時の御方の真似をしているからに過ぎないんだよ。だから、こう見えても『俺』は演技派なんだ」

「……とても演技には見えませんよ」


俺は思いっきり、あなたに最初に会った時から、その空気に飲まれ切っています。というか、そういえばどうして最初、この人俺の前で全裸でいたんだ……?と唐突に疑問に思って、俺はその質問を口にした。後から思えば、その素朴な疑問は、フィクションよりもタチが悪い現実を受け入れられなかった俺の頭が弾き出した、完全なる失言でしかなかった。


「あぁ、あれは要があんまりしつこくて草臥れてしまって、君に会う為だけに着替えるのが億劫になってしまっただけだよ。どうやら、私がロサ・フェティダと交配している君を見て珍しく褒めたから、あまり気分が良く無かったらしい。その後も、何故自分以外に肌を見せたのかと五月蝿くって。それはお前の所為だろうと言っても、機嫌がずっと悪くてね……だから、最近は座ってばかりいるよ」


はぁ、と淑女の様な憂いを帯びた溜息を吐きながら、愚痴の体を成した惚気話を聞かされて、どうしたらいいか分からなくなる。主従カップルのスパイス要因にされている感は否めないのだけれど、それに関して文句を言うのは筋違いだろう。俺が悪い訳ではないんだけど、ここは素直に謝っておくのが吉かと思い、すみませんでした、と平謝りする……勿論、新庄さんの方に向かって。


しかし、新庄さんは俺の謝罪を受けても、にこりともしなかった。今のこの場においての会話は、蓮さんの大いなる暇を持て余した独り言という括りになっているので、反応したらしたで問題になるのは分かっている。分かってはいるんだけど、怖い。


「あの……蓮さんが影武者みたいな扱いだとして、ロサ・フェティダさんは、本当の御方と蓮さんの、どちらに忠誠を誓っているんですか?」


空気を変える為に、何か別の話に持っていくか、話の軌道修正を図らなくちゃ、と考えているうちに、ふと、ロサ・フェティダさんがあれだけの信仰を捧げている人物が、一体どちらであるのかという疑問が頭の中に降って湧いた。俺個人にとってはとても重要なその疑問に、何故早く行き当たらなかったのかと自分を激しく責めたけれど、こうしてロサ・フェティダさんの存在が話題に上ったタイミングを選べたから、後になって話を聞けなかったと後悔するよりはまだマシかと頭を切り替えた。


「……あの子が忠誠を誓い、信仰の対象としているのは、御方ただ一人。あの子は、御方の意思を尊重し、御方を守る為だけに存在している。あの子が花園にいるのも、あの子が御方にそうあるべきと定められ、あの子がそれを選んだからだ」

「なら、もしかして、御方は……」


パズルのピースが、次第に手元に揃っていく感覚を覚える。しかし、そのピースは全てにおいて模様が描かれておらず、どれだけ組み上げてもその絵の全体像は定まらない。確信に至るには、まだ程遠い。しかし確実に、そして着々と、『御方』という人物の全容は暴かれていく。


「答えの一つに辿り着いた様だね。そう、御方は………あの、『薔薇の花園』にいらっしゃる」


あれだけの信仰を傾けて、誰よりも御方のその御身を大切にしているロサ・フェティダさんが、御方の側を離れる訳が無いと考えつけば、答えを出すのは簡単だった。御方が薔薇の花園にいる関係者の誰かであると考えれば、どこまでもすんなりと話が纏まるのだ。確かなヒントを得た俺は、ゆっくりと手元に揃ってきたパーツを握り締めて、キッと前を向いた。


「……俺は、いつ本国に帰れますか?」

「君が望むなら、いつでも帰国の準備をしようとも。ただ、私からも君に、お願いしたい事がある」

「なんでしょうか?……俺に出来る事があれば、言って下さい」


はやる気持ちはあるけれど、これだけの機密性の高い話をする為には、御方の目から逃れられる環境に、無理矢理俺を送り込むしか無かったのは、当然理解できる。そして、そこまでの綱渡りをしてまで、蓮さんが行動を起こした理由は何かを同時に考えていけば。


俺は蓮さんに、多大なる恩がある、という結論に至るのだ。


「………あの子を、助けてやってくれ」


蓮さんは、俺と同じ様に、ロサ・フェティダさんを救いたいと願っている人なんだ、と。


「分かっています……俺は絶対に、ロサ・フェティダさんを救ってみせます」

「………ふふ、君なら、多分そう言うと思っていたよ。君を私の手元に置けないのは残念だが、こればかりは仕方がない」

「すみません、蓮さん。だけど、俺はやっぱり、あの人と生きていきたいんです」

「それでいい。あの子を頼んだよ、リリー……いや、真司」


何処か寂しげに、それでいて沈痛な面持ちで俺に願いを託した蓮さんに、力強く頷く。すると、蓮さんは俺とは反対に力無く笑ってから、俺に向けて謝罪を口にしたんだ。御方でもなく、ただ一人の人間として、静かに。


「何もしてやれなくて、本当に、すまない」
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