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学園編
猶予
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「どういうこと!?」
戸惑ったような母親の声に目を開けた。こちらに向けられたナイフが、一定以上近づけないかのように止まっている。
「魔力は感じないわ、何をしたの答えなさい!!」
「み、身に覚えがありません」
本当に全くもって身に覚えがない、どういうことだろうかと思わずナイフを凝視していたら、母はナイフから杖に持ち替えた。ぐわっと、激しい風圧で体を叩きつけられ咳き込む。
「魔法は大丈夫そうね、ということは呪術だけに反応を。いえでも、そんな魔法は……。一つあったわね、丁度今年だったかしら聖女が学園に入ったのは。以前の呪いには影響がないけれど、聖女の祈りが効いている今、新しい道具を手に入れなくてはね。あなたが素直なら、そんな手間はかからないのだけれど」
聖女の祈り……? ミレーユがなにかをしてくれたのだろうか。そんなことを考えていたら、そっと頬を母親に撫でられ、ぶわっと鳥肌がたつ。
「ねぇ、ティア。あなたは私の娘なのよ。血を分けた娘。であれば、母親の役に立つべきだと思わないかしら。私に手間をかけさせないで頂戴。殿下と婚約破棄、するでしょう?」
娘にこんなことをする人を母親と認めるわけがないでしょうと、怒鳴ってしまいたいが恐怖で声が出ない。かといって頷く気にもなれずに、グッと口を噤んだ。
「……はぁ、従う気はなさそうね。時間の問題だというのに。キャシー、ティアを離していいから、部屋の隅に行きなさい」
キャシーは、素早く拘束を解き、壁際へと行く。嫌な予感がして拘束が解けた瞬間逃げようとしたが、何かに足が掴まれたような感触がして動けない。母の杖が禍々しく光始め、恐怖から目を離すことが出来ずにまじまじと見てしまう。
「こっちはできそうね。王国の中でも、使える人間はほんの一握りなの、後悔することになるわ。まぁ気が変わったらいつでも言いなさい」
ぶわっと、勝手に体が持ち上がった。四肢が空中で見えない何かに拘束されているのを感じる。
「っっっ!!??」
急に右肩を引き裂かれたかのような痛みが走り、声の出ない絶叫をしながら、右肩に目をやった。右肩は問題なくついているがそれが信じられないほどの激しい痛み。
「結構強情よね、あなたも」
そう、母親がつぶやいた瞬間に、左肩にも同じ痛みが走った。あまりの痛みに、口をパクパクとさせることしかできない。お腹……、足……、膝……、痛みがあちこちに広がり意識をもうろうとさせていると、急に拘束された感覚がなくなり落下して、背中を床にぶつける。
「流石にこの魔法は私にも負担が大きいわね、聖女の祈りをどうにかした方が早いわ。いいでしょう、あなたの強情さに最後の機会をあげましょう。あと一か月の時間をあげるわ。一か月後に返事を聞くから、それまでに気持ちの整理をすることね。もちろん、その時に拒絶しようものなら、今以上に苦しむことになるわよ。廃人にならなければよいわね」
今以上の痛みって何!? 魔法が無くなってもまだ痛みが尾を引いていて、動くことも出来ずに体の震えが止まらない。
「キャシー、部屋まで返してあげなさい、私は休むわ」
ぐっと、腕をキャシーにつかまれ引っ張られた。この部屋にこれ以上いたくなくて引っ張られるまま、震える足を無理やり動かして自室に帰る。キャシーがいなくなった瞬間に力が抜けてその場にへたり込んだ。
「お嬢様!? 大丈夫ですか?」
「出て行って、今日はもう休むわ」
喋る気力も沸かずに、そのまま布団にもぐりこむ。何か言っているような気もするが聞くのも億劫で耳を塞ぎながら目を閉じた。
真っ暗な空間にいた。目の前に浮かび上がるのは禍々しい杖。杖が人を飲み込めそうな大きさの熊型の魔物に姿を変える。肩に強靭な牙ががぶりと突き刺さる。激しい痛みに絶叫をあげながら体を起こした。
「朝……?」
いつの間にか眠っていたようだ。外は少しだけ白んでいる。早朝に目が覚めたが、汗がぐっしょりで気持ち悪い。起きた気配に気づいたのか、汗をぬぐっているとフラメウが入ってきた。
「まだ学校までは時間がございますし、湯あみの準備をしますね」
「えぇ、丁度湯あみをしたいと思っていたの、お願いするわ」
昨日のことを聞かずに、何もなかったように接してくれる気遣いがありがたくて、それに甘えて何もなかったように返す。湯あみをされながら、ぼんやりとこれからを考える。
与えられた時間は一カ月。母親に従って婚約破棄を受け入れるか、断固として拒絶してまた苦しみを味わうか。全部投げ捨てて楽な死に方でも探すか。どうしたもんかなぁ、頭がちっとも働かない、考えれば考えるほど気持ち悪さがこみ上げてくる。
何も考えたくない。途中で考えることを放棄して制服に着替えて馬車に乗り込んだ。
戸惑ったような母親の声に目を開けた。こちらに向けられたナイフが、一定以上近づけないかのように止まっている。
「魔力は感じないわ、何をしたの答えなさい!!」
「み、身に覚えがありません」
本当に全くもって身に覚えがない、どういうことだろうかと思わずナイフを凝視していたら、母はナイフから杖に持ち替えた。ぐわっと、激しい風圧で体を叩きつけられ咳き込む。
「魔法は大丈夫そうね、ということは呪術だけに反応を。いえでも、そんな魔法は……。一つあったわね、丁度今年だったかしら聖女が学園に入ったのは。以前の呪いには影響がないけれど、聖女の祈りが効いている今、新しい道具を手に入れなくてはね。あなたが素直なら、そんな手間はかからないのだけれど」
聖女の祈り……? ミレーユがなにかをしてくれたのだろうか。そんなことを考えていたら、そっと頬を母親に撫でられ、ぶわっと鳥肌がたつ。
「ねぇ、ティア。あなたは私の娘なのよ。血を分けた娘。であれば、母親の役に立つべきだと思わないかしら。私に手間をかけさせないで頂戴。殿下と婚約破棄、するでしょう?」
娘にこんなことをする人を母親と認めるわけがないでしょうと、怒鳴ってしまいたいが恐怖で声が出ない。かといって頷く気にもなれずに、グッと口を噤んだ。
「……はぁ、従う気はなさそうね。時間の問題だというのに。キャシー、ティアを離していいから、部屋の隅に行きなさい」
キャシーは、素早く拘束を解き、壁際へと行く。嫌な予感がして拘束が解けた瞬間逃げようとしたが、何かに足が掴まれたような感触がして動けない。母の杖が禍々しく光始め、恐怖から目を離すことが出来ずにまじまじと見てしまう。
「こっちはできそうね。王国の中でも、使える人間はほんの一握りなの、後悔することになるわ。まぁ気が変わったらいつでも言いなさい」
ぶわっと、勝手に体が持ち上がった。四肢が空中で見えない何かに拘束されているのを感じる。
「っっっ!!??」
急に右肩を引き裂かれたかのような痛みが走り、声の出ない絶叫をしながら、右肩に目をやった。右肩は問題なくついているがそれが信じられないほどの激しい痛み。
「結構強情よね、あなたも」
そう、母親がつぶやいた瞬間に、左肩にも同じ痛みが走った。あまりの痛みに、口をパクパクとさせることしかできない。お腹……、足……、膝……、痛みがあちこちに広がり意識をもうろうとさせていると、急に拘束された感覚がなくなり落下して、背中を床にぶつける。
「流石にこの魔法は私にも負担が大きいわね、聖女の祈りをどうにかした方が早いわ。いいでしょう、あなたの強情さに最後の機会をあげましょう。あと一か月の時間をあげるわ。一か月後に返事を聞くから、それまでに気持ちの整理をすることね。もちろん、その時に拒絶しようものなら、今以上に苦しむことになるわよ。廃人にならなければよいわね」
今以上の痛みって何!? 魔法が無くなってもまだ痛みが尾を引いていて、動くことも出来ずに体の震えが止まらない。
「キャシー、部屋まで返してあげなさい、私は休むわ」
ぐっと、腕をキャシーにつかまれ引っ張られた。この部屋にこれ以上いたくなくて引っ張られるまま、震える足を無理やり動かして自室に帰る。キャシーがいなくなった瞬間に力が抜けてその場にへたり込んだ。
「お嬢様!? 大丈夫ですか?」
「出て行って、今日はもう休むわ」
喋る気力も沸かずに、そのまま布団にもぐりこむ。何か言っているような気もするが聞くのも億劫で耳を塞ぎながら目を閉じた。
真っ暗な空間にいた。目の前に浮かび上がるのは禍々しい杖。杖が人を飲み込めそうな大きさの熊型の魔物に姿を変える。肩に強靭な牙ががぶりと突き刺さる。激しい痛みに絶叫をあげながら体を起こした。
「朝……?」
いつの間にか眠っていたようだ。外は少しだけ白んでいる。早朝に目が覚めたが、汗がぐっしょりで気持ち悪い。起きた気配に気づいたのか、汗をぬぐっているとフラメウが入ってきた。
「まだ学校までは時間がございますし、湯あみの準備をしますね」
「えぇ、丁度湯あみをしたいと思っていたの、お願いするわ」
昨日のことを聞かずに、何もなかったように接してくれる気遣いがありがたくて、それに甘えて何もなかったように返す。湯あみをされながら、ぼんやりとこれからを考える。
与えられた時間は一カ月。母親に従って婚約破棄を受け入れるか、断固として拒絶してまた苦しみを味わうか。全部投げ捨てて楽な死に方でも探すか。どうしたもんかなぁ、頭がちっとも働かない、考えれば考えるほど気持ち悪さがこみ上げてくる。
何も考えたくない。途中で考えることを放棄して制服に着替えて馬車に乗り込んだ。
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