姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました

饕餮

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ミランダの末路

 特にこれといった変化もなく月日は流れ、わたくしは今日、学園を卒業いたしました。

 ミランダの処遇を聞いた翌月にデビュタントを迎えました。エスコートは父となった伯父様がしてくだり、その後、わたくしのお披露目をカレスティア家で行いました。
 お茶会には母となった伯母や姉となったいとこが連れていってくださり、他にも友人ができましたし、学園生活も私生活も充実した日々でした。
 それから婚約者に関してですが、両親は悩んでおりましたが、わたくしは婚姻しないことを決めました。確固たる理由と呼べるものはないのですが、しいていうのであれば、ミランダと双子だということが原因です。

 ミランダが語った記憶では神を名乗る者から魅了と隷属の魔法を奪ったので使えるようになりましたが、本来は血筋に現れるそうです。ミランダのように、突発的に発生する、というのはほぼないそうです。
 我が国にはそういった血筋の方はおりませんが、別の国にいらっしゃるそうで、そちらはきちんと管理されているのだとか。
 あと、ミランダの魔法ですが、双子の姉であるわたくしも少なからず影響を受けております。それが、魅了と隷属両方の耐性と防ぐことです。
 表面だけみればいいことだとは思います。けれど、もし婚姻して子や子孫に、耐性や防護ではなくミランダと同じ魔法が現れてしまったら? もし、ミランダのように悪意をもって使ってしまったら?
 そう考えたら、子孫を残そうとは思えませんでした。

 元両親どちらの先祖にも……カレスティアの先祖にも、魅了か隷属の魔法を持つ方はいないのです。国外から嫁いでいらした方もいないそうです。
 両家の家系図を、婚姻した家まで遡って見ても、魅了か隷属を持つ方はいないのです。どうしてなのかと思われたのと同時に、ミランダとわたくしは元両親の子ではないのではないかと疑われました。
 けれど、二人とも面立ちは母に似ておりましたし、髪色はミランダが母、わたくしは父と同じで、瞳の色はミランダが父、わたくしは母と同じでしたので、その疑いは早々に消えました。

 とはいえ、ミランダの荒唐無稽な話もあり、今はわたくしに耐性があって防御ができていても、いつかそれが逆転し、子や孫にミランダの性質が現れて生まれないとは限らないのです。なので、わたくしは血を残すことをやめました。
 カレスティアの家族や殿下たち王族にも、ジョンパルト家の領地経営をお願いされたり説得されたりしましたけれど、わたくしは頑として譲りませんでした。混合型の禁忌魔法は、残してはならないと言って。
 それを聞いた家族は、わたくしの決意の固さとその危険性を考慮してくださり、わたくしの説得を諦めました。王族は……わかりません。何か考えているようでした。
 ――のちに、王族を説得できなかったことを後悔することになります。

 あの日、三つ目の魔法を見つけてオビエス様が褒めてくださったこともあり、宮廷魔導師を目指そうと、学園では魔術関連を専門に学びました。特に付与に関する魔法です。
 わたくしに耐性があり、防御できているのであれば、それを魔道具に込めればいいのではないかと考えたからです。
 魔道具ができれば、この先もし同じ出来事があったとしても、防ぐことができるようになりますし、隣国にいるという魅了と隷属を扱う方にその魔道具を渡すことができるかもしれないのです。
 存在がはっきりしているのは隣国だけですが、もしかしたら別の遠い国にも、わたくしたちと同じような理由で苦しんでいる方がいるかもしれません。そういった理由もあって付与ができる宮廷魔導師になろうと考えたのです。
 もちろん、他の魔法も学びましたし、オビエス様が使っていた魔法も習いました。宮廷魔導師となる以上、禁忌以外のありとあらゆる魔法を学ばなければならないのです。
 とはいえ適正もありますから、全ての魔法を扱えるかといえばそうではないのですが、幸いなことにわたくしは全魔法に対して適正があり、中でも防御と付与は突出していたのです。
 だからこそ、付与を中心に、より深く学びました。

 魔導師の試験はとても難しかったですが、無事に合格いたしました。
 翌月からは宮廷魔導師として勤務いたします。
 とはいえ、新人ですので、希望の部署につけるかどうかわかりません。それでもわたくしは、いつかミランダがいる塔に行きたいと考えておりました。

「卒業おめでとう」
「ありがとうございます、お父様」

 卒業式とパーティーが終わり、父と一緒にカレスティア家へと戻ると、家族や使用人たちが待っていました。家族と使用人たちに祝福され、部屋に戻りましたが、いつの間にか寝ておりました。

 翌日、家族と使用人たちの総勢で改めて卒業をお祝いされ、パーティーを開いてくださったのです。思い出に残る、温かなパーティーでした。


*****


 卒業して数年が経ちました。
 現在のわたくしは、宮廷魔導師となって一月後にミランダが塔に配属となり、希望通り魅了と隷属の単独と混合型の防御魔法を付与する仕事をしております。
 そう、ミランダのことは過去形なのです。
 塔に連れて来られたミランダは、魅了と隷属の魔法がどこに宿っているのかと探される、実験動物と同じ扱いをされていたのです。わたくしが塔に来た時のミランダは何かの液体に浸かっていてすでに目はなく、両腕や足、首には何本もの管が繋がれていて、生きているのか死んでいるのかわからない状態でした。
 その管の色は黒かったのですが、きっと血の色がわからないような配慮がなされていたのでしょう。配属されて案内されたそれが最初に見たミランダでした。

 一月後、呼ばれていった先で見たミランダは、同じように液体に浸かっていました。胸からお腹にかけて開かれており、中は空っぽでしたが管はありませんでした。そこにいた魔導師様によると、すでに亡くなっているのだそうです。
 ですが、ミランダの荒唐無稽な話から、魅了と隷属の魔法がどこから発生していたのかわからず、残るは皮膚や頭の中を調べるだけの状態だったのだそうです。

 この時も最初の時もなんとか我慢しましたが、自室に帰ったあと、吐き戻してしまいました。まさか、そんな状態のミランダに会うとは思っていなかったからです。
 けれど、あの状態を見て、子孫を残さないと決めたのは正しいと感じました。それほどに危険な魔法であり、魔法を宿す方が少ないために、研究が進んでいないのです。
 塔に入るにあたり、わたくしに限り一度塔に配属になれば、二度と別の部署にいけないと言われました。
 その時はどうしてそのようなことを聞くのかわかりませんでしたが、ミランダの
姿を見て、耐性と防御があるとはいえ、わたくしがすぐに塔へと配属になった理由を察しました。
 魔道具に魔法を付与するのはもちろんですけれど、もしミランダのように魅了と隷属魔法を発現されても困るから、監視の意味もあるのです。今は大丈夫でも、いつかミランダと同じ魔法が発現したら、ミランダと同じ末路を辿るのでしょう。
 もしかしたら、わたくしが死んだあと、ミランダと同じ扱いをされるのかもしれません。

 そんな可能性もあったのですが、結局は老齢になるまで発現することはなく、死ぬまでずっと魔道具に付与をしてすごすことになります。

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