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イタリアンレストラン その後
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翔馬が追い詰めたあとの男――ドン・M・ニールセンは、不気味なくらい素直だった。まあ、ドンの背後に立ち、肩を掴んでいる龍太郎がいるのだから、仕方がないのかもしれない。
とはいえ、翔馬があれこれ追及するも全部素直に吐いたわけではないようで、ときどき英語でなにやら呟いていた。小さな声ではあるが、翔馬も龍太郎も英語はしっかりとわかる人間だ。
なので、ドンが呟く声もしっかり聴きとっていた。
<……くそ、なんでバレたんだ? 以前ジェロに指摘された時、顔の整形しとけばよかったのか? そうすればまだ捕まらなかったとか>
<<……>>
<とりあえず、ネバダにある隠れ家はまだバレてないみたいだし、なんとかジェロかマイロに連絡を取ってラスベガスから撤退させなければ――>
ドンの呟きを黙って聞いている翔馬と龍太郎。こちらが黙っていることで勝手に喋らせようという二人の思惑は、ある意味成功していた。
特にドンが名を挙げた二人――ジェロとはジェロ・ルイス、マイロとはマイロ・ビショップといい、二人もドンと同じく国際指名手配犯であり、彼らが仲間だという確信が欲しかったのである。
その思惑は成功しているが、ドンが彼らに連絡を取ることはできないだろう。
なぜならばドンが捕まっているということもあるが、彼が無銭飲食の尋問を受けているとき、アメリカで二人を捕まえたと上司から連絡があったからだ。
それを踏まえ、翔馬はそのときにもらった情報を少し出してみることにした。
<へえ? フランスだけじゃなく、ベガスにも拠点があるんだ?>
<おう。ロスやワシントン、ニューヨークにもな>
<へえ! それ以外にもあるのかな?>
<あるぞー。ケンタッキーのルイビルにある競馬場の、近くに、も……>
翔馬の質問につい答えてしまっていたが、徐々にその声が途切れる。愕然とした顔をして正面にいる翔馬を見たドンは、満面の笑みを浮かべている彼を見てしまった。ただし、その目は笑っていなかったが。
もしやと思い、ギギギと油の切れた機械のような音がしそうなほどゆっくりとうしろを振り返れば、同じく笑みを浮かべた龍太郎がドンの顔を覗き込むように彼を見ていたが、やはりその目は笑っていなかった。
二人が英語を話していると理解した途端に冷や汗をかき始めるドン。その様子に、あり得ない、漫画の世界かよ! と内心で突っ込みを入れる龍太郎と翔馬。
それほどに、簡単に話してしまっていたのだ、ドンは。
<え、あ、いや、その>
<他にもあったら、今のうちに吐いておきなよ。あんたの肩を掴んでいる男の追及は、もっとえげつないから>
<え゛!?>
忙しなく目を動かして逃げ道を探すも、動こうとすれば肩に乗っている手に力が入り、上から押さえつけられるため逃げられない。じわじわと肩を掴んでいる指先が握力を増し、痛みすら感じるようになってくる。
そしてトドメとばかりに彼の仲間の現状を伝える。
<ああ、そうそう。あんたが言ってたジェロとマイロだけど>
<……>
<アメリカで逮捕されたってさー>
<う、嘘だ!>
<嘘じゃないよ。新聞社が号外の準備してるらしいよ? こっちもあんたの逮捕を受けて、号外が出るかもしれないねぇ>
<……っ>
真っ黒い笑みを浮かべて語った翔馬に、観念したのかドンは青ざめた顔色でガックリと項垂れ、翔馬の質問に答え続けた。
翔馬の質問すべて話し終えたドンは、そのまま警察署の檻の中へと連行されていく。後日、アメリカに強制送還及び裁判後に収容所行きになる。刑期がどれほどになるかはドンや彼の仲間たちが犯した犯罪次第だろう。
少なくとも、禁固八十年はいくだろうと翔馬は踏んでいる。
隠れ家や仲間などを聞きだし、そのすべての取り調べを終えるころには三時間が経過していた。これからICPO本部に戻ってあれこれ作業をすることを考えると、自宅に帰る時間が何時になるのか見当もつかない。
翔馬は独身だが、龍太郎は妻子ともにフランスにいるので、翔馬が運転して本部に戻る間に遅くなることを連絡すると、すぐに〝わかった〟と返信が来た。
「奥さんに連絡? いいな~、俺も奥さん欲しい~」
「欲しいなら、その飽きっぽくて子どもっぽい言動をヤメロ」
「え~? 捜査には役立ってるのに」
「公私を分けろと言ってるんだよ!」
SNSであれば、語尾に怒りマークがついているであろう強さの言い方に、翔馬は肩をすくめる。本人もわかってはいるのだが、どうにも分けられないことのほうが多い。
それ故に、友達以上恋人未満な関係ばかりの女性たちばかりなのだ。なんとも切ない。
それはともかく、今は仕事を優先しなければならない。本部に戻った龍太郎と翔馬はすぐ上司の下へと向かい、警察署でのあれこれを報告する。
『ボイスレコーダーは?』
『あります。ただし、途中から英語になるので注意してください』
『あ~、素が出た感じなのか』
『ええ』
翔馬が尋問を始めたときからずっと録音していた翔馬と龍太郎。真後ろにいた龍太郎のほうがより鮮明に聞こえるだろうと、龍太郎のボイスレコーダーを提出する。
その後は書類や情報の確認などを行いつつ上司に書類を提出。上司は上司でアメリカを筆頭にあちこちにあるICPO支部に連絡したりもらったりと、情報の更新などを行っている。
なんといっても世界規模での麻薬犯罪組織を壊滅に追い込める寸前なのだ。親組織だけではなく、下部組織も一網打尽にしたいのだろう。
特にアメリカはFBIが中心となって動いているという。その情報に、アメリカの本気度が窺えるというものだ。
結局、夜八時まで本部内にいたものの、『ドラはそろそろ奥さんと子どものところへ帰れ』という言葉と、『あとは俺たちが引き受ける』と夜勤の人間が引き継いでくれるというのでお願いし、龍太郎は帰宅。
『独身なんだから、大丈夫だよな?』
『予定もないんだろ?』
『え? いや、その、デートの約束が……』
『おいおい、嘘はいかんよ。さっき予定はないかって聞いたときなにも言わなかったじゃないか』
『ドラゴンはちゃんと申告してただろ』
そして翔馬に至っては、上司は同僚たちにあれこれお言われ、諦め顔で『あっ、ハイ』と返事をしたのだった。
それからなんだかんだと二週間後、ドンを頂点としたとある麻薬組織は、世界中にあった隠れ家や拠点などをすべて潰された。そして下部組織を含めたその部下たちも一網打尽となり、全員が檻や塀の向こうへと行くこととなる。
とはいえ、翔馬があれこれ追及するも全部素直に吐いたわけではないようで、ときどき英語でなにやら呟いていた。小さな声ではあるが、翔馬も龍太郎も英語はしっかりとわかる人間だ。
なので、ドンが呟く声もしっかり聴きとっていた。
<……くそ、なんでバレたんだ? 以前ジェロに指摘された時、顔の整形しとけばよかったのか? そうすればまだ捕まらなかったとか>
<<……>>
<とりあえず、ネバダにある隠れ家はまだバレてないみたいだし、なんとかジェロかマイロに連絡を取ってラスベガスから撤退させなければ――>
ドンの呟きを黙って聞いている翔馬と龍太郎。こちらが黙っていることで勝手に喋らせようという二人の思惑は、ある意味成功していた。
特にドンが名を挙げた二人――ジェロとはジェロ・ルイス、マイロとはマイロ・ビショップといい、二人もドンと同じく国際指名手配犯であり、彼らが仲間だという確信が欲しかったのである。
その思惑は成功しているが、ドンが彼らに連絡を取ることはできないだろう。
なぜならばドンが捕まっているということもあるが、彼が無銭飲食の尋問を受けているとき、アメリカで二人を捕まえたと上司から連絡があったからだ。
それを踏まえ、翔馬はそのときにもらった情報を少し出してみることにした。
<へえ? フランスだけじゃなく、ベガスにも拠点があるんだ?>
<おう。ロスやワシントン、ニューヨークにもな>
<へえ! それ以外にもあるのかな?>
<あるぞー。ケンタッキーのルイビルにある競馬場の、近くに、も……>
翔馬の質問につい答えてしまっていたが、徐々にその声が途切れる。愕然とした顔をして正面にいる翔馬を見たドンは、満面の笑みを浮かべている彼を見てしまった。ただし、その目は笑っていなかったが。
もしやと思い、ギギギと油の切れた機械のような音がしそうなほどゆっくりとうしろを振り返れば、同じく笑みを浮かべた龍太郎がドンの顔を覗き込むように彼を見ていたが、やはりその目は笑っていなかった。
二人が英語を話していると理解した途端に冷や汗をかき始めるドン。その様子に、あり得ない、漫画の世界かよ! と内心で突っ込みを入れる龍太郎と翔馬。
それほどに、簡単に話してしまっていたのだ、ドンは。
<え、あ、いや、その>
<他にもあったら、今のうちに吐いておきなよ。あんたの肩を掴んでいる男の追及は、もっとえげつないから>
<え゛!?>
忙しなく目を動かして逃げ道を探すも、動こうとすれば肩に乗っている手に力が入り、上から押さえつけられるため逃げられない。じわじわと肩を掴んでいる指先が握力を増し、痛みすら感じるようになってくる。
そしてトドメとばかりに彼の仲間の現状を伝える。
<ああ、そうそう。あんたが言ってたジェロとマイロだけど>
<……>
<アメリカで逮捕されたってさー>
<う、嘘だ!>
<嘘じゃないよ。新聞社が号外の準備してるらしいよ? こっちもあんたの逮捕を受けて、号外が出るかもしれないねぇ>
<……っ>
真っ黒い笑みを浮かべて語った翔馬に、観念したのかドンは青ざめた顔色でガックリと項垂れ、翔馬の質問に答え続けた。
翔馬の質問すべて話し終えたドンは、そのまま警察署の檻の中へと連行されていく。後日、アメリカに強制送還及び裁判後に収容所行きになる。刑期がどれほどになるかはドンや彼の仲間たちが犯した犯罪次第だろう。
少なくとも、禁固八十年はいくだろうと翔馬は踏んでいる。
隠れ家や仲間などを聞きだし、そのすべての取り調べを終えるころには三時間が経過していた。これからICPO本部に戻ってあれこれ作業をすることを考えると、自宅に帰る時間が何時になるのか見当もつかない。
翔馬は独身だが、龍太郎は妻子ともにフランスにいるので、翔馬が運転して本部に戻る間に遅くなることを連絡すると、すぐに〝わかった〟と返信が来た。
「奥さんに連絡? いいな~、俺も奥さん欲しい~」
「欲しいなら、その飽きっぽくて子どもっぽい言動をヤメロ」
「え~? 捜査には役立ってるのに」
「公私を分けろと言ってるんだよ!」
SNSであれば、語尾に怒りマークがついているであろう強さの言い方に、翔馬は肩をすくめる。本人もわかってはいるのだが、どうにも分けられないことのほうが多い。
それ故に、友達以上恋人未満な関係ばかりの女性たちばかりなのだ。なんとも切ない。
それはともかく、今は仕事を優先しなければならない。本部に戻った龍太郎と翔馬はすぐ上司の下へと向かい、警察署でのあれこれを報告する。
『ボイスレコーダーは?』
『あります。ただし、途中から英語になるので注意してください』
『あ~、素が出た感じなのか』
『ええ』
翔馬が尋問を始めたときからずっと録音していた翔馬と龍太郎。真後ろにいた龍太郎のほうがより鮮明に聞こえるだろうと、龍太郎のボイスレコーダーを提出する。
その後は書類や情報の確認などを行いつつ上司に書類を提出。上司は上司でアメリカを筆頭にあちこちにあるICPO支部に連絡したりもらったりと、情報の更新などを行っている。
なんといっても世界規模での麻薬犯罪組織を壊滅に追い込める寸前なのだ。親組織だけではなく、下部組織も一網打尽にしたいのだろう。
特にアメリカはFBIが中心となって動いているという。その情報に、アメリカの本気度が窺えるというものだ。
結局、夜八時まで本部内にいたものの、『ドラはそろそろ奥さんと子どものところへ帰れ』という言葉と、『あとは俺たちが引き受ける』と夜勤の人間が引き継いでくれるというのでお願いし、龍太郎は帰宅。
『独身なんだから、大丈夫だよな?』
『予定もないんだろ?』
『え? いや、その、デートの約束が……』
『おいおい、嘘はいかんよ。さっき予定はないかって聞いたときなにも言わなかったじゃないか』
『ドラゴンはちゃんと申告してただろ』
そして翔馬に至っては、上司は同僚たちにあれこれお言われ、諦め顔で『あっ、ハイ』と返事をしたのだった。
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