最強の賞金稼ぎ

変狸

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2 いざ大舞台へ

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 ミリーがノブオ達の住んでいる家にやって来て早くも一か月近く経過した。
 
「ミルドレッド様、朝食をお持ちしました」

 だが、彼女は自分が目が覚めた部屋に閉じこもり外との接触を絶って自分の殻にこもっていた。
 扉をノックししばらくたっても返事がないことを確認するとウェイバーは「ここに置いておきますね」と言って扉を開けず朝食を乗せたトレーを床に置き階段を降りる。
 ウェイバーが下におりるとテーブルについて朝食を食べているノブオが彼の様子を見て溜息をもらす。

「今日もダメか」

「はい。食事は召し上がられているようなのですが」

「まあ、それだけでも十分な進歩か」

 ノブオはそういって立ち上がると食器をキッチンまでもっていく。

「じゃあ、俺、集会所に行ってくるからあとは」

 ノブオがそう言ったとき。突然、窓から何かが投げ込まれる。二人はすぐにそれが手榴弾だと判断しウェイバーは壁を、ノブオは机を倒し遮蔽物にして瞬時に身を隠す。
 そして、ドッという大きな爆発音と共に部屋に強烈な衝撃が走り部屋の中は一瞬にして瓦礫が散乱した廃墟のようになる。
 そしてレバーアクション式のショットガンやリボルバー式拳銃を構えた男たちが侵入してくる。
 男たちが警戒しながら廊下を進んでいくと。突然、男たちが進んでいる廊下の右側の壁が砕けそこから腕が付き出てきて男を一人掴むと目にもとまらぬ速さで男を引きずり込んでいった。
 一瞬のことに男たちは反応できなかったが、すぐに腕が出てきた壁に向けて手に持った銃器を発砲する。
 発射された弾は薄い壁をぶち抜き、反対側まで見える穴をいくつも作る。
 しかし、発砲した男達は違和感を感じた。
 いくら撃っても人に当たった気がしない。どこにいるかわからず撃っているのだから、当然のことなのだが、散弾を打ち込んでいるので体のどこかには当たっているはずと男たちは思うが、壁の向こうからは声どころか瓦礫が落ちる音すら聞こえない。
 警戒していた時、ミシミシという音を立てて男が散弾銃を撃ち込んだ壁が倒れてくる。
 男たちがそれに気が付くと一斉に入口に向かってはしりだす。しかし、振り返るとすでに入り口には分厚い鉄板が降りてきて通路をふさぐ。ならばとリビングに通じているはずの扉を開けようとするが、開かない。

「どけ!」

 ショットガン持ちがそういって扉のドアノブに向けて引き金をひく、しかしドアノブを破壊することなくむしろ、散弾がすべてはじき返され兵士数名の体や手足に当たるという大惨事を起こしてしまう。運が悪いものは頭に当たりこと切れる。
 右からは倒れてくる壁、出口はふさがれている、おまけに扉もあかずあまつさえ味方に死者まで出してしまう。それでも男たちはすぐさま方向転換し、廊下の奥まで走る。
 先に何があるかはわからない。だが、退路をたたれた男たちはそちらに進むしかなかった。
 一気に走り出す。うち何人かは壁が倒れてくる前に廊下から抜け出すが、それ以下の大勢は倒れてきた壁の下敷きとなる。
 壁が倒れる前に廊下を抜け台所に出れた兵士は3名。
    彼らはホッと胸を撫で下ろしたが、そこで待っていたのは、満面の笑みを浮かべたノブオだった。

「ようこそ、我が家へ。歓迎してやるよ、盛大にな」

 そういうと彼はは素早く3人に近づき一番近くにいた兵士を殴り飛ばすと素早く二人目の首筋に蹴りを入れる。
 だが、次の瞬間。残り一人がノブオに向けて持っていたショットガンを発砲。
 散弾はノブオを貫通しその先にいた兵士の頭部をぐちゃぐちゃにする。

「あ~らら。こいつはひでぇ。脳みそまでむき出しになっちまってやがる」

 しかし、散弾を至近距離で喰らい体がズタズタになっているノブオはけろっとして自分の目の前でミンチになった兵士の状態をみておえ~と舌を出す。
 その状況に恐怖を覚え動けなくなる兵士。すると、今度は一番初めにノブオがのした兵士がもそもそっと動き出す。

「まだ動けんのか」

 そういってノブオは、もがいている兵士の襟をつかみ持ち上げようとする。
 そのとき、持ち上げた兵士の手から何かが落ちる。ぼとっと重そうな音をさせて落ちたそれは四角い直方体に懐中時計がコードでつながれた代物。

「ウェイバー!」

 物体を確認した瞬間、ノブオは叫んだ。
 そして、その声に反応しリビングにいるウエイバーが天井を突き破り2階のミリーを掴みさらに天井を突き破り空へと大きくジャンプしたかと思うと、ミリーを背中に乗せ自身の手を蝙蝠の翼のように変化させ飛びあがる。

「な、なんで・・・」

「口を閉じていてください。でなければ舌を噛みますよ」

 いきなり外に連れ出され困惑するミリーにウェイバーがそういった瞬間、ノブオがいるはずの家が強烈な衝撃と熱風を放って爆発する。
 空にいた二人は衝撃をもろに受け、海の方に吹き飛ばされる。
 ミリーは訳も分からず次の瞬間には海面に着水していた。



 町の中心部の浜辺から離れた岩場の影。
 海まで吹き飛んだミリーは濡れたメイド服を脱ぎ、岩に服を広げて乾かす。

「ミリーさま」

 ウェイバーが桶とその中に洗濯板を入れてやってくる。

「これにお着替えください」

 そういってウェイバーは、桶から大きな麻袋のような物と紐を取り出し彼女に渡す。
 差し出された物を見てミリーはいらないと言いかけるが、

「くしゅん」

 体が冷えたのかくしゃみが出てしまい仕方なく受けとり岩影に向かう。
 岩影に入ると振り返りウェイバーの様子をうかがう。
 その事に気がついたウェイバーは、

「ご安心を。私におなごの裸体を覗き見る趣味はありません」

といって彼女を安心させようとする、
 しかし、そう聞いてもミリーは安心できない。相手は女好きであるあの男の使用人、何をしてくるか分かったものじゃない。
 ミリーはそう思い一層警戒を強めながら服を脱ぎ始める。

「すいません、衣服はすぐにこちらに」

 ウェイバーはそういって彼女の足元に持ってきた木製の桶をおく。

「衣服を長時間潮風にさらすのはあまりよろしくはありませんから」

 ウェイバーの言うことを聞いてミリーは服を脱いで桶に入れる。
 服を脱ぎ終わると、頭からウェイバーが持ってきた麻袋のようなものを被りあいている穴から両手と頭を出す。そして、こしにひもを回してくくる。こうすることで体に服がフィットするのである。
 最後に、一番下に入っていた女性用下着をはきウェイバーの前に出る。

「すみません、何分いきなりの事でしたのでそのようなものしかなく」

 ウェイバーは申し訳なさそうにそう言って頭を下げた。

「あの」

 その様子を黙ってみていたミリーは、表情一つ変えることなくウェイバーに問いかける。

「なぜ私は、いきなり海に落ちてこんなことになっているのか、説明を求めます」

 しかし、その声には若干の怒気が含まれることからから彼女が怒っているのはウェイバーには簡単に分かった。
 彼女の問いに答えるため、ウェイバーが口を開こうとしたとき。

「待ちな」

 突然、聞こえてきた声に反応して二人は近くの岩の上に目を向ける。

「二人とも、待たせたな」

 そこには、岩の上で腕を組み仁王立ちしているノブオの姿があった。

「いえ、別に待っておりませんが、旦那様」

「おいおい、そこはよくご無事でした、とかいうところだろ」

「お言葉ですが旦那様、今はおふざけをしている場合でしょうか?」

 余りにもみっともない姿の自分の主人を残念に思ったウェイバーが口を出す。

「まあそうだな、よっと」

 対してノブオは怒るでもなく普通に返して岩を降りる。

「さてそれじゃあ、付いてきてくれるか二人とも。悪いが余裕がなくてな」

「待ってください」

 一方的に話を切ろうとしたノブオの前にでる。

「これはどういうことですか。いったいなにが、どうして」

「まあ、まあ、落ち着いて」

 取り乱すミリーの肩をポンポンと叩いて耳元に顔を近づけた。

「監視されてる」

「え」

「そこの岩陰。あと、あっちにある大型船」

 ノブオは片手で海の方を指さす。その先には彼が言った通り大きな帆船が停泊していた。

「連中は監視役。俺たちの動きを逐一、上の連中に報告してるのさ。あの船は今回の作戦本部てとこだな。だからこんなとこ、さっさと移動するに限る」

 ノブオはそういってウェイバーの顔を見る。
 主人の考えを読み取ったウエイバーはお辞儀をすると右手を上げて指を鳴らす。するとウェイバーが忍者の分身の術のごとく分裂して四方八方に散っていく。

「ではこちらで陽動を行っておきます」

「ありがとさん。じゃあ行こう」

 ノブオに連れられミリーとウェイバーはマールの街を歩く。

「よくわかりましたね。あの船がゲール帝国の船だと」

「ああ。見事にここいらで使われてる帆船に偽装してるけどな、船員の動き、統率が取れすぎてる。それこそ軍隊みたいな規律の取れ方だ」

 それを聞いてミリーはなるほどと思い納得する。

「しかし、よろしかったのですか旦那様。陽動だけで」

「ああ、すぐにこの町を立つつもりだからな。ここで時間食ってこっちの思い通りにいかなくなるのは面倒だ。まあ、そう焦るなって。準備は必要だけどすぐに暴れられるようになるって」

 彼の話を聞いてウェイバーは「わかりました」と言って一歩下がり二人の後ろを歩く。
 そこで、ミリーは先ほどから気になっていたことをノブオに聞くことにする。

「どこにむかってるんですか?」

「な~にすぐにわかるさ」

 だが、ノブオはなかなか本題を話さない。
 その態度にミリーはいらいらするが相手に話すきがない以上、これ以上の詮索は無意味と判断する。
 そうこうしていると3人がやってきたのは港。

「よし、あの船だ」

その中でもひときわ大きな帆船の甲板で船乗りたちに指示を出している男に声をかける。

「よぉ、船長」

「ん、だれだ」

 ノブオが呼びかけると男は甲板から飛び降りて三人の前に着地する。

「おお、ノブオか。最きん見んからてっきりよそに行ってるもんだとばかり思ってたよ」

「まあ、いろいろ忙しくてな。ところで、前お前に金貸したよな。そういうお店に行きたいけど金がねえって事でさ」

「あ、いや、今、手持ちはそんなに・・・」

 そういう船長のわきに回り肩を組む。

「いやいや、金の話じゃない。少し協力してほしくてな。俺に、いや俺たちに」

「お、俺にいったい何をしろと」

「簡単。お前さん、次の航海予定はたしかゲール帝国のツルノヤ港に行くんだよな。その航海に俺たちも同行したいだけさ」

 船長はノブオからの提案を聞いて一瞬、ビックと体を震わせると顔から血の気が引いていった。

「な、あんた正気か! 勘弁してくれよ」

「正気も正気さ」

「あんたがよくても俺たちがどんな目に合うか」

 彼はよっぽど嫌なのだろう、首を横に振って両手を激しく横に振り「やめてくれやめてくれ」と繰り返す。

「大丈夫。ほら」

 そんな船長ののどもとにノブオはナイフを突き立てる。

「これでお前さんは俺に脅されたって口実が付く。俺たちは現地までの足を手に入れる。WINWINだ。それとも今ここで死ぬか?」

「わ、わかったよ! やればいいんだろやれば!」

「悪いな船長」

「そう思うんなら、今度からこんな無茶な頼みはよしてくれ」

 そういって船長は甲板に戻っていく。
 そして、入れ替わるようにミリーがノブオに話しかける。

「ゲール帝国に向かうんですか?」

「ああ、今回の件。狙いは間違いなく君さ。でなけりゃ俺の家を吹っ飛ばすなんていう派手なことはしない」

「どういうことですか?」

「あら、わかんない。暗部の従者をしてたのに」

「え、どういうこと・・・」

「ま、無理もないか」

 そういってノブオは腰のポーチからこの世界の世界地図を出す。
 だが、世界地図など見たこともないミリーはそれが何なのか理解できなかった。

「一から説明するからよく聞いとけよ。今俺たちがいるのがここ、3っつあるうちの一番小さな大陸の左端。ここが今俺たちがいる場所。で、今から俺たちは海を渡ってゲール帝国の港町まで向かう。大体、船の上で1ヶ月から2ヶ月くらい過ごすことになる。というわけでウェイバー」

「はい、ミリー様。こちらを」

 ミリーが振り返るとウェイバーが革製のカバンを手に持って待機している。

「中には船上での生活に必要と思われるものを入れてあります。基本的には食料と水。そして、着替え用の下着と服が2枚ずつ。それ以外にもいくつか」

「は、はい」

「くれぐれもお気お付けください」

 ウェイバーは頭を下げるとすたすたとどこかに歩いて行ってしまう。

「ウェイバーには先に向こうに行っていろいろ準備しておいてもらう」

「船より早く、ですか?」

「ああ、あいつは空飛べるからな」

「え」

「さあ、船に乗り込むぞ。船酔いには気を付けないとな」

 そう言ってノブオはすたすたと帆船に乗り込んでいってしまう。
 それを「まってください!」といいながらミリーも乗り込んでいく。
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