最強の賞金稼ぎ

変狸

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4 港にふく爆風

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 乗り込んでしばらく。二人は今日も船の上で甲板作業。
 ノブオはマストから伸びるロープをほかの船員とともに操ってマストに風邪を集める。
 一方、ミリーは操船については素人のため掃除や洗濯といった雑用を主な仕事とした。それも洗濯と言っても水を使うことは当然できないため服は使ったものを天日で乾かすかよっぽど汚れていたら少量の水でもみ洗い。
 掃除も海から引き揚げた海水を使い甲板にブラシ掛けをするといったようなもの。
 元使用人でもある彼女からすればとても考えられない世界だがアグサの顔を思い出し何も考えず作業に没頭する。
 そんな彼女を困らせていたのは船員たちからのセクハラ。セクハラと言っても体を触るといった生易しいものじゃない。
 彼女を見て性的な発言をするのは序の口、胸をもむ、股に手を入れる、挙句の果てに無理やり押し倒しレイプしようとするものまで出てくる。
 だが、その一連の出来事は事が起こる前にノブオが出ていき事を収めるということが多かったが、ある日のこと。
 昼間の忙しさが嘘のように静まり返った夜。
 ミリーは一人、星空を眺めていた。

「思えば、遠くまで来ました」

 一人、気持ちの整理をつけようとしているミリーの周囲に数名の男が。
 すぐにそのことに気が付いたミリーは腰を低くし警戒する。

「おう、怖い怖い。だが、やっぱ美人はどんな顔してもきれいだな」

「御託はいい、さっさとやっちまおう」

 男たちはそういうと一斉にミリーに襲い掛かった。男たちは完全に油断していた。相手が女だということに、そして美人であるということにうつつを抜かしていた。
 狭くむさくるしい船の上に最多一輪の花、もはや我慢の限界だった。
 もはや幻の花園は目の前、いざと意気込む。が、そうはいかない。
 素早くミリーはとびかかってきた男の首を掴みひねる。骨が折れるような音とともに男が地面に倒れこむ。それを見てほかにとびかかろうとしていた男たちが立ち止まる。
 彼らは荒くれものだが、荒くれものゆえに危険なものをかぎ分ける嗅覚を持ち合わせていた。その嗅覚は間違いなく目の前の美女から感じるものだと。

「く、くそが!」

 それを信じられなかった男が再びミリーに正面から突撃する。
 男はミリーにつかみかかり押し倒そうとするが、次の瞬間m目の前からミリーが消えた。そして、気が付くと男は星空を眺めていた。
 そして考える暇も与えずミリーは男の腹を力強く踏みつける。たまらず男は腹を抑えてのたうち回る。

「何やってる!」

 そこでようやく、事態に気が付いたノブオと船長が現れる。

「これは、いったい・・・」

 その様子を見た船長は状況をうまく読み取れなかった。

「だから言ったんだ。彼女には手を出すなと」

「おい、うちの船員は」

「ああ、悪い。片方はもう死んじまってる。この埋め合わせはいつかするよ」

「し?」

「ああ、首をぽっきりとな」

 それを聞いて倒れて動かなくなっている船員に船長が近づいて脈を図ろうとするが。

「ない」

 脈は完全に止まっていた。
 ノブオは仏に手を合わせると船員たちのほうを向く。

「見た通りだ。彼女にちょっかいをかけようものなら次はお前らがこうなる。それが嫌ならもう彼女にそういうことをしないことだいいな!」

 ノブオはそういってうめいている船員を担ぐと船長に「医務室に運ぶよ」と言ってその場を後にする。
 その後につづいってミリーも歩いていくが、すでに船員たちの目には彼女はかわいい女の子ではなく獰猛な怪物に映っていた。



 そしてさらに半月と少し。道中、化け物に襲われたり海賊に襲われる、ということもなく船は無事目的地のツルノヤ港に到着する。
 もとより航路が完全に確保されているため棄権はあまりないためノブオもそこまで心配しておらず予想の範囲だった。
 船が港に入る前。二人は自分の荷物の整理を行っていた。

「しっかし、まあ、見違えたなミリーちゃん」

 カバンに荷物を積めながらノブオはふと思ったことを口にする。

「そうでしょうか」

 対してミリーは実感がない。この半月は彼女にとってアグサの付き人をしていたほどではなかったがリハビリには十分だった。彼女にとってはようやく調子が戻ってきてまともに動けるという気持ちのほうが強かった。

「ああ、最後の方は船員とのいざこざも減ってたしな。まあ、仕掛けてくる向こうが悪いんだが」

 その時、二人に近づいてくる人影が。

「いや、ご苦労だった二人とも」

「ん、船長どうしたんだ」

 それは、二人を船に乗せてくれた船長。かれは、今回の航海が無事終わって喜んでいる、という顔ではなかった。とても神妙な面持ちで二人を見ていた。

「すまん、ここで船を降りてくれ」

「どうしたんだよいきなり。港はもう目と鼻の先だぜ」

「さっき船員から報告があった。港で軍が張ってるそうだ。おそらくお前らのことを探してるんだとおもう」

 申し訳なさそうにしている船長の後ろでは船員たちが集団で二人のほうを見ている。

「なるほど、わかったよ。短い間だったがありがとよ。行くぜ、ミリー」

「は、はい」

 ノブオとミリーは立ち上がっると階段を上り船の船尾のほうへと向かう。

「じゃあ、うまくやれよ船長」

「すまねえ」

「無理言ったのはこっちだ。悪く思う必要はねぇよ。報酬は後で俺んちに来てくれ。そんときには家も再建できてると思う」

「あの、ボートは」

 二人が別れを惜しんでいる中、ミリーが先ほどから思っていたことを口にする。

「ねえよ、飛び降りるぞ」

「え、まって!」

 そんなミリーの制止も聞かずノブオはミリーを抱えて船尾から海に飛び込む。ばしゃーんと音を立て水しぶきを上げながら。



 二人が陸に上がったのは町から少し離れた岩場だった。

「ようこそ。ゲール帝国へ」

「もっと、ましな方法はなかったんですか?」

「つってもな、あのまま行くのも問題あったし。今回は正規の入国じゃないしな」

 服とマントを絞りながらノブオはミリーに小さなカプセルを渡す。

「これは?」

「乾燥機だよ。と言っても応急処置だけど。拳で握ってつぶせば着てるものを乾燥してくれる」

 言われた通りミリーがカプセルを握りつぶすと瞬時に服が乾燥する。ただし、海水のせいで服がパリパリになってしまっているが。

「ウェイバーと合流すれば着替えを用意してくれてるはずだからそれまで我慢してくれ」

 ノブオもそういって拳でカプセルをつぶして服を乾燥させる。

「よし、さっそくで悪いがこれからの予定を説明するぞ」

 ノブオはそういって腰のポーチから地図を取り出す。
 それを見てミリーは驚く。

「ゲール帝国には精巧な地図があると聞いていましたがまさか、これほどの物が」

「と言ってもまだこの大陸とその周辺だけだがな」

 彼は地図の端のほうを指さす。

「ここら辺が今、俺たちがいる場所。でウェイバーとの合流を予定してたのはこの先の牧場跡地だ」

「大丈夫なんですかそこは」

「安心とは言えないが、ここよりはましだ。少なくとも新しい服とあったかいスープはあるはずだ」

 そういってノブオが地図を直そうとしたとき周辺を黒装束を着た集団に囲まれる。

「まあ、すんなりいかせてくれるわけないよな。ミリー行けるか」

「問題ありません」

「よし、じゃあ行くぜ」

 ノブオは拳に手袋をはめミリーは両手を構え有無を言わせず、黒装束たちに突撃する。
 対して黒装束たちは冷静にナイフを取り出し構え二人を待ち受けた。

「悪いが初めから全力で行かせてもらう」

 ノブオはそういって両手を合わせナイフを出現させる。そして、敵に向けて投擲する。
 しかし黒装束たちはそれを難なく回避する、が、

「ミリー! 耳と目をふさげ!」

 ノブオがそう叫ぶと同時に強烈な音と光があたりに広がり黒装束たちの視界と聴覚を奪う。

「走るぞ」

 敵がひるんだことを確認し二人は走り出す。
 敵が気づいた時には二人はどこにもいなかった。
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