魔女との世界の歩き方

第一章 【山を繋ぐ大橋】

第七節 【突入】

オークの叫び声とカムイの魔法の爆撃音が鳴り響く洞穴の中を三人は進んでいる。
カムイは仲間の存在を確認してから騒動を起こすように伝えてあるので、現在のカムイの位置付近にカムイの仲間たちがいるということだ。

カムイの現在位置はアイリスが探知できるようになっている。
魔法使い系の魔力を扱う存在は、魔力を感知することができる。
アイリスは【六人の魔女】という最高位の魔法使いなので、その探知性能も大幅に上がり細かい位置まで分かる。

「この先、左の穴です！」

左に曲がると逃げてきたオークたち数匹と鉢合わせた。
すぐにエルが飛び出し、斧を縦に振るう。

「うるああぁぁっっ！」

オークが遠くへと吹き飛ばされる。
オークは成人男性以上の体格があるはずで、さらに凶暴化しているはずなのだがエルは持ち前の馬鹿力で問答無用に吹き飛ばした。

「ぐえっ」

オークの情けない声が聞こえる。
壁にたたきつけられて、失命したようだ。

「おらおら、張り合いがねえぞ！」

エルは片っ端からオークをなぎ払っていく。
後衛であるルーンたちは何もできずにただただ見守っていた、エル単身でもオーク数匹には勝てるらしい。

「エル、お疲れ」

数分でオークを一掃したエルは満足した顔で、

「ありがとよ、さっさと先に進もうぜ」

と言って走り出した。

その後、オークと何度が鉢合わせたがすべてエルが処理し、難なく進んでいった。
まだ爆撃音が続いているので、カムイはまだ抵抗しているのだろう。
音も着実に近づいてきているので、だいぶ近くに来ているはずだ。

「もうすぐカムイのところに着きます、戦闘準備を整えといてください」

と、アイリスが言ったのでルーンは弓を構えながら進んだ。
アイリスは懐から本のようなものをとりだした、ルーンはアイリスの戦闘を見るのは初めてだ。

「これは魔道書です、六人の魔女は基本的にそれぞれ適応した魔道書を持っています。私がもっているのは【水の書】です」

この世界では魔法使いもいろいろな種類があり、一番典型的なのは魔法使いとそのまま呼ばれる呪文を唱えて発動するタイプでカムイもその内だ。
そのほかにも僧侶や精霊魔法使いも魔法使いのカテゴリーに含まれる。
その中でアイリスは魔道書使い、ブックマスターと呼ばれる魔法使いで世界中では数が限られた存在だ。
そもそも魔道書の数も少なく、発見例も少ないので魔道書使いを最初に選べる魔法使いはまずいない。
その中でも四台元素の一つである【水の書】を持っているアイリスはさすが六人の魔女といったところか。

走り続けていると、大きく開けた場所に出た。
大量のオーク達が一箇所に集まっていて、そこから炎系統の魔法が飛び出してきているところを見ると、そのなかにカムイがいるのだろう。

「カムイ！大丈夫か！」

と、ルーンが叫ぶと大量のオークがルーンたちの方を向きカムイの姿が見えた。
怪我をしているようだが、大丈夫そうだ。
その奥には檻が見える、この中にカムイの仲間がいるのだろう。

「よし、やるよアイリス！エル！」