魔女との世界の歩き方

第二章 【都市リグレット】

第九節 【謎の青年】

ギルドに行くと、朝とは打って変わってとても静かな状態になっていた。
ほとんどの冒険者はまだ迷宮に潜っているようで、迷宮から帰ってきたのはルーンたちが最初のようだ。

「こんばんは！今回はどのようなご用件でしょうか？」

受付嬢は朝からとても忙しかったのにも関らず、いつもの笑顔でルーンたちを迎えてくれた。
早速剥ぎ取った魔物の素材と宝石などの換金できる物などをカウンターに出し、受付嬢に鑑定してもらった。
買取金額はやはり高めになっていて、消耗品を補充しても溜めておける分までありそうだ、これならこれだけの冒険者が迷宮に行きたがるのも分かる。
そして冒険者が売った素材が市場に出回ればもっとこの都市も豊かになって色々な人が都市に来てくれるので、誰にとってもメリットとなる。

ルーンとしてもそれはとても良いことで影の魔女についての情報が流れてくる可能性がある。
当分この都市で活動することになるので色々と動きやすくなるからだ。
一通り用件は終えたのでそのまま宿に戻り夕食をとり、各自武器の手入れなどをしながら眠りについた。

次の日、ルーンたちは一通りの支度を終え再び迷宮へと向かうことにした。
都市の外に出るために歩いていると今日もなぜか人々が騒がしく感じる。
耳を立てているとどうやら夜中の間に迷宮を攻略してしまった人物がいるらしい。

流石に気になってしまったルーンたちはギルドに寄っていくことにした。
ギルドの扉を開けるとやはりギルドは騒がしくなっていて、昨日と同じく受付嬢があわただしく働いていた。

「なあ、今度は何があったんだ？」

カインが近くに居た冒険者に話しかけた。

「今日の早朝にギルドに全身血まみれの男が現れたらしいんだ、そいつは素材と一緒に迷宮内部の情報を全てギルドに売ったんだよ。今ソロで迷宮を最速攻略した奴が居るって事でギルドも色々と大変なことになっているらしい」

血まみれの男という言葉をきいたルーンたちには分かった、昨日の謎の青年がソロで迷宮を攻略しきったということだ。
迷宮には特定の階層にボスが居ることがある、それをパーティーで攻略するのも大変なのにそれをソロで攻略しさらに連戦までしているのだ。
常人からすれば並外れた能力を持っていた謎の青年にルーンたちは驚いてしまった。

謎の青年が持ってきた迷宮の情報を受付嬢に聞いたところ、階層は三十六層に分かれていて九階層ごとにボスがいるらしい。
マップデータもあるようだが、そこは自分たちで攻略したいので聞かずに、ルーンたちはギルドを出て迷宮へと向かった。