魔女との世界の歩き方

第四章 【アンデットの悲劇】

第三節 【異常な強さ】

ある程度スケルトンや小型の魔物のアンデットの数が減ってきて、敵の中心でもあるオークのアンデットが見えてくるまで約一時間ほど経っただろうか。
既にほとんどの冒険者の体力は消耗されてきてしまっていた。

今までろくに休憩も取らず戦闘を繰り返してきたのだ、熟練の冒険者といえど流石に疲れてしまう。
ギルドマスターの指示のもと半数が休憩に入って残りの半数で前線を維持することになった。

勿論普通の冒険者では抑えきれないので上級冒険者を多く残している。
だが十分ほどたった頃、前線が押されてきてしまっていた。

考えられるのは少しずつ現れるようになってきたオークのアンデットだ。
アンデットは元の能力よりも弱くなるというのが普通なのでこの状況は異常と言える。
ルーンたちが倒したオークたちはそれこそ異常なまでに強かったがそれでもアンデットと化したオークならば上級冒険者ならば押さえ込めるはずだ。
休憩も不十分にルーンたちや他に休憩をしていた冒険者たちは前線へと戻っていった。

ルーンたちが到着する頃には、前線にいた冒険者たちは傷だらけになってしまっていた。
後衛の魔法使い系職が必死に回復魔法を使う中、前衛職などの他の冒険者たちでオークのアンデットを攻撃するがビクともしなかった。

それはルーンたちも同じだったので、どうやらこのアンデットたちは何らかの力によって強化されているようだ。
それも十中八九影の魔女の力によってだろう。

全員でどうにか一匹ずつ倒していくことはできるのだが、それでは間に合わずに都市が壊滅してしまうだろう。
それならばリスキーだが大本を潰しに行ったほうが良いだろう。

だがオークでこれだけの強さだ、オークロードのアンデットを倒すにはルーンたちの力では全く足りない。
だからといって他の冒険者たちを連れて倒しに行ってしまうと、都市の防衛が手薄になってしまう。

「一体どうすればいいんだ！」

戦いながらカインは言ったがその答えを持つ者は居ない。
今は崩れかけている前線をどうにかするしか出いることがない。

そうなればルーンたちができるのは目の前にいる敵を少しでも倒すことだ。
そう考えたルーンは攻撃を開始し、

「乱れ打ち！」

と叫ぶが、今回ルーンが打った【乱れ打ち】は広範囲に向けて打ったものではない。
すべての矢を一箇所に向けて打つコントロールを身につけることができていたルーンは、オークのアンデットに向けて千本近くに及ぶ矢を叩き込んだ。

たちまちオークのアンデットは声にならない叫び声を上げてその場に倒れこんだ。
火力は必要だがどうにかすれば倒すことはできるのだ。

それを目にした他の冒険者たちは少なからず現状をどうにかしようと一心不乱にアンデットたちを倒しにかかった。