異世界転生したけど、生きるのが無理ゲーなのでフラグ折ります。

千宮寺みるく

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しつっっこい!!!

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 三日後。
 俺はいつものように布団に沈み、ユースから渡された薬草茶を「苦い」と文句を言っていた。
 その時――。

「アディル様ッ!!」
 使用人が扉を乱暴に開け、悲鳴のような声をあげる。

「ど、殿下が……! 塩焼き鳥を山ほど持って、こちらに向かっております!!」

(やっぱり来やがったあああああ!!!)

 俺は反射的に布団を被る。
 魂の疲弊がさらに二割増しになった気がした。

「ユース……防げ」
「……前回より手強いですよ。塩焼き鳥という餌まで用意してます」
「くっ……推しより危険な王子め……!」

 そうこうしているうちに、廊下から例の落ち着いた声が響く。

「アディル、元気かい? 今日は君の好きなものを持ってきたよ」

 その声とともに、香ばしい匂いが部屋に漂い始めた。
 ……くそっ、美味そうだ。

「……うぐ……」
「アディル様、鼻を押さえてください! 匂いに釣られたら負けです!」

 ユースが真剣な顔で窓を開け、匂いを逃がそうとする。
 だが、殿下は既に扉の向こうまで到達していた。

「開けてくれないかな? せっかく温かいうちに持ってきたのに」
「殿下!」
 ユースが立ちはだかる。

「アディル様は療養中です。脂っこい食べ物は控えさせています」
「塩焼き鳥は脂っこくないよ。ほら、串に刺さっているだけだ」
「串に刺さっているかどうかは問題ではありません!」

 扉の前で繰り広げられる、王子と神官の謎論争。
 俺は布団の中で震えていたが……同時に、腹が鳴った。

(……食べたい)

 その小さな雑念を、殿下は見逃さなかったのかもしれない。
 扉越しに、低く甘い声が落ちる。

「アディル……一口だけでもいいんだ。ほら、君のために持ってきたんだよ」

 ぐらりと心が揺れる。だが――。

「アディル様ッ! 罠です!!」
 ユースの必死の声で、現実に引き戻される。

「……お前が言うなら……我慢する」
「よくぞ耐えました!」

 ユースはそのまま扉を閉め切り、「殿下、後日正式にお礼を差し上げます」とぴしゃり。
 しばらくして、足音が遠ざかっていった。

 勝った……のか?

 だがユースが振り返った瞬間、俺は見てしまった。
 彼の手の中に――串に刺さった塩焼き鳥。

「……あれ?」
「殿下が“食べたら捨てるのはもったいない”と置いていったので、私が毒味のために……」
「ふつーに食ってるだろ、それ!」

 結局、俺も半分だけ食べさせられた。
 熱々で、涙が出るほど美味かった。

「……うま……」
「だから言ったでしょう、罠だと」
「……罠でも、うまいものはうまい……」

 こうして俺は、魂の疲弊をさらに一割減らしつつ、王子の執念深さに本気で恐怖することになったのだった。
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