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平穏な日々
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殿下が来なくなって、十日が経った。
……静かだ。あまりにも静かすぎて、逆に怖い。
けれど、布団の中で心の底から思う。
(ああ……平和って、こういうことだな)
殿下の足音も、扉をノックする音もない。
その代わり、毎日やって来るのは――ユースだけだ。
「おはようございます、アディル様。今日の体調は?」
「昨日よりは……マシかな。熱も下がったし」
「よかった。では、今日は少しだけ外の空気を吸ってみましょうか」
「いや、布団が恋人だから」
即答する俺に、ユースはため息をつきつつも笑う。
こいつ、最初の頃は「外に出ましょう!」と力ずくでカーテンを開けていたのに、最近は俺のペースに合わせるようになった。
代わりに、布団の上でできる暇つぶしを持ってきてくれる。
「今日は神殿の子どもたちが描いた絵です。アディル様、どれが一番好きですか?」
「……この太陽のやつ。やたら攻撃的な光線出てるけど」
「それ、描いた子も“殿下の目みたいで怖い”って言ってました」
「わかってるじゃないか、その子」
笑いながら、俺は絵を壁に貼っていく。
気づけば、部屋の一角が子どもの絵でいっぱいになっていた。
ある日、ユースが小さな木の箱を持ってきた。
「これは?」
「薬草を育てるキットです。アディル様が水やりしてくれれば、花が咲きます」
「俺が……?」
「はい。魂の回復には、生きているものを世話するのが良いそうですよ」
俺は渋々、水差しを持たされる。
布団から手を伸ばして、ちょろちょろと水をかける。
「……これ、ちゃんと育つのか?」
「ええ。もし枯らしたら、私が責任を取って追加の苗を持ってきます」
「責任ってそういう意味じゃないだろ」
でも――正直、悪くない。
日々少しずつ芽が伸びていくのを見ていると、自分もほんの少し元気になった気がする。
別の日の夕方。
ユースが帰り際、ふと振り返った。
「……殿下が来ない間、アディル様がこんなに穏やかな顔をされるとは思いませんでした」
「それ褒めてる? けなしてる?」
「褒めてます。……本当に、ずっとこうならいいのに」
そう言って笑う顔が、妙にまぶしく見えた。
俺は「……お前、最近ちょっとずるい笑顔するよな」と呟く。
「そうですか? では明日もその笑顔を見に来ます」
「……あーはいはい」
扉が閉まり、部屋に再び静けさが戻る。
芽を出した薬草の鉢を見つめながら、俺は布団に沈み込む。
(……平和って、案外悪くないな)
……静かだ。あまりにも静かすぎて、逆に怖い。
けれど、布団の中で心の底から思う。
(ああ……平和って、こういうことだな)
殿下の足音も、扉をノックする音もない。
その代わり、毎日やって来るのは――ユースだけだ。
「おはようございます、アディル様。今日の体調は?」
「昨日よりは……マシかな。熱も下がったし」
「よかった。では、今日は少しだけ外の空気を吸ってみましょうか」
「いや、布団が恋人だから」
即答する俺に、ユースはため息をつきつつも笑う。
こいつ、最初の頃は「外に出ましょう!」と力ずくでカーテンを開けていたのに、最近は俺のペースに合わせるようになった。
代わりに、布団の上でできる暇つぶしを持ってきてくれる。
「今日は神殿の子どもたちが描いた絵です。アディル様、どれが一番好きですか?」
「……この太陽のやつ。やたら攻撃的な光線出てるけど」
「それ、描いた子も“殿下の目みたいで怖い”って言ってました」
「わかってるじゃないか、その子」
笑いながら、俺は絵を壁に貼っていく。
気づけば、部屋の一角が子どもの絵でいっぱいになっていた。
ある日、ユースが小さな木の箱を持ってきた。
「これは?」
「薬草を育てるキットです。アディル様が水やりしてくれれば、花が咲きます」
「俺が……?」
「はい。魂の回復には、生きているものを世話するのが良いそうですよ」
俺は渋々、水差しを持たされる。
布団から手を伸ばして、ちょろちょろと水をかける。
「……これ、ちゃんと育つのか?」
「ええ。もし枯らしたら、私が責任を取って追加の苗を持ってきます」
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俺は「……お前、最近ちょっとずるい笑顔するよな」と呟く。
「そうですか? では明日もその笑顔を見に来ます」
「……あーはいはい」
扉が閉まり、部屋に再び静けさが戻る。
芽を出した薬草の鉢を見つめながら、俺は布団に沈み込む。
(……平和って、案外悪くないな)
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