異世界転生したけど、生きるのが無理ゲーなのでフラグ折ります。

千宮寺みるく

文字の大きさ
11 / 42

塩焼き鳥は裏切らない

しおりを挟む
 昼下がり。
 ユースが持ってきた塩焼き鳥を頬張りながら、俺は幸せの溜め息をついていた。

「……やっぱりこれだな」
「アディル様、そんなに塩焼き鳥がお好きなんですか?」
「好きだ」
「どうしてなんです? 貴族ならもっと豪華な料理があるのに」

 俺は少し考えて、串をくるくる回す。

「……塩焼き鳥はな、裏切らない」
「は?」
「焼けば香ばしい匂いがして、噛めばちゃんと肉汁が出て、塩加減も程よい。
 政治も派閥も関係なく、俺を歓迎してくれる」
「……なるほど、食べ物に忠誠を求めているんですね」
「そうだ。塩焼き鳥は俺の忠臣だ」

 ユースが笑いながら、俺の皿にもう一本置く。

「でも、他の料理だって裏切りませんよ?」
「いや、例えばソースをかけすぎたステーキとか、塩の効いてないスープとか……料理人の気分次第で裏切ってくる」
「……言い方が物騒です」
「その点、塩焼き鳥はシンプルだからな。塩と肉さえあれば成立する。完成度が安定してるんだ」

 ユースは苦笑しつつ、器用に串から肉を外して皿に並べる。
 俺はそのまま一本丸ごと齧りついた。

「それに、食べやすい」
「食べやすい?」
「皿もナイフもいらないだろ。片手で持って、かぶりつくだけでいい。疲れてても食える」
「……確かに、アディル様向きですね」
「だろ?」

 俺は満足げにもう一口。
 香ばしい皮とジューシーな肉が混ざり合い、自然と笑みがこぼれる。

「……うん、これだ」
「まるで恋人を褒めるみたいな顔してますけど」
「恋人より長く付き合える気がする」
「そんなにですか」
「そんなにだ」

 ユースは呆れたように笑い、残りの串を温め直してくれた。
 俺はそれを受け取り、また幸せのため息を漏らす。

「……裏切らないって、大事なんだぞ」
「はいはい。ではこれからも、忠臣の塩焼き鳥をお届けします」
「頼む」

 そんなやり取りをしながら、部屋の中には香ばしい匂いと笑い声が満ちていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。

とうふ
BL
題名そのままです。 クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。

ひみつのモデルくん

おにぎり
BL
有名モデルであることを隠して、平凡に目立たず学校生活を送りたい男の子のお話。 高校一年生、この春からお金持ち高校、白玖龍学園に奨学生として入学することになった雨貝 翠。そんな彼にはある秘密があった。彼の正体は、今をときめく有名モデルの『シェル』。なんとか秘密がバレないように、黒髪ウィッグとカラコン、マスクで奮闘するが、学園にはくせもの揃いで⁉︎ 主人公総受け、総愛され予定です。 思いつきで始めた物語なので展開も一切決まっておりません。感想でお好きなキャラを書いてくれたらそことの絡みが増えるかも…?作者は執筆初心者です。 後から編集することがあるかと思います。ご承知おきください。

僕はただの妖精だから執着しないで

ふわりんしず。
BL
BLゲームの世界に迷い込んだ桜 役割は…ストーリーにもあまり出てこないただの妖精。主人公、攻略対象者の恋をこっそり応援するはずが…気付いたら皆に執着されてました。 お願いそっとしてて下さい。 ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎ 多分短編予定

ヴァレンツィア家だけ、形勢が逆転している

狼蝶
BL
美醜逆転世界で”悪食伯爵”と呼ばれる男の話。

従者は知らない間に外堀を埋められていた

SEKISUI
BL
新作ゲーム胸にルンルン気分で家に帰る途中事故にあってそのゲームの中転生してしまったOL 転生先は悪役令息の従者でした でも内容は宣伝で流れたプロモーション程度しか知りません だから知らんけど精神で人生歩みます

美女のおっさんと護衛騎士

琉斗六
BL
◎あらすじ  佐藤英里緒、37歳。中小企業のIT部門の係長。独身。だが、実は彼には前世の記憶がある。  完容姿端麗、才色兼備。完璧な令嬢と呼ばれたエリザベートだった記憶である。  そしてエリザベートはずっと考えていた「コルセットのない生活がしてみたいですわ」。  現在の英里緒は、休みの日はトレパンでダラダラしながら、昼間からビールを嗜む生活に満足していた。  だが、ある日。  中途採用で部に配属された若い男は、英里緒に言った。  「あの晩、バルコニーで僕に抱かれたあなたの、愛に蕩けた心も体も、全て僕は覚えてます!」  田中玲央、22歳。彼もまた、前世の記憶を持っていた。 ◎その他  この物語は、複数のサイトに投稿されています。

ビッチです!誤解しないでください!

モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃 「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」 「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」 「大丈夫か?あんな噂気にするな」 「晃ほど清純な男はいないというのに」 「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」 噂じゃなくて事実ですけど!!!?? 俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生…… 魔性の男で申し訳ない笑 めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!

最可愛天使は儚げ美少年を演じる@勘違いってマジ??

雨霧れいん
BL
《 男子校の華 》と呼ばれるほどにかわいく、美しい少年"依織のぞ"は社会に出てから厳しさを知る。 いままでかわいいと言われていた特徴も社会に出れば女々しいだとか、非力だとか、色々な言葉で貶された。いつまでもかわいいだけの僕でいたい!いつしか依織はネットにのめり込んだ。男の主人公がイケメンに言い寄られるゲーム、通称BLゲーム。こんな世界に生まれたかった、と悲しみに暮れ眠りについたが朝起きたらそこは大好きなBLゲームのなかに!? 可愛い可愛い僕でいるために儚げ男子(笑)を演じていたら色々勘違いされて...!?!?

処理中です...