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非番の日
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殿下が来ない平穏な日々は、まるで長期休暇のようだった。
俺は布団の王国で引きこもり、ユースは毎日やってきては健康チェックと世話焼きをして帰る。
そんなある朝――珍しく、ユースが私服で現れた。
「……なんだその格好」
神官服じゃなく、ゆるいシャツにベスト。髪も少し無造作にまとめている。
「今日は神殿の非番です」
「非番なのに、わざわざ俺のとこに来たのか?」
「ええ、趣味を見せようと思って」
そう言って取り出したのは――木箱。
蓋を開けると、中には色とりどりの石や金具、細い糸。
「……これは?」
「アクセサリー作りです」
「神官ってそういう副業OKなの?」
「副業じゃありません。趣味です。作ったら全部神殿の寄付バザーに出します」
「へぇ……」
ユースは椅子に座り、器用に小さな石を糸に通し始めた。
指先の動きが妙に丁寧で、見ていると時間がゆっくり流れる。
「……作業してるお前、なんか静かでいいな」
「普段うるさいってことですか?」
「うるさいとは言ってない。ただ……今日はBGMが穏やかだ」
「びーじー?…褒め言葉として受け取っておきます」
黙々と作業するユース。
俺は布団の中から眺めていたが、ふと声をかけた。
「……俺にも作れる?」
「もちろんです。ほら、この石を選んで」
「じゃあ……これ。塩焼き鳥っぽい色だから」
「……美味しそうな基準で選ばないでください」
俺が不器用に糸を通そうとすると、すぐに引っかかって止まる。
ユースが手を伸ばし、俺の指に触れて位置を直してくれた。
「こうやって……ゆっくり、息を整えて通すんです」
「……お、おう」
近い。距離が近い。
しかもユースの手はやっぱり温かくて、妙に落ち着く。
数分後、俺の初作品が完成した。
歪んだ形の……塩焼き鳥色のブレスレット。
「どうですか?」
「……まあ、味がある」
「味っていうか色じゃないですか」
「うまそうだろ?」
ユースは笑って、「じゃあこれはアディル様専用ということで」と言ってくれた。
俺はそれを枕元に置き、なんとなく眺めながら昼寝に突入。
夕方、ユースが帰る前にふと言った。
「……こうやって一緒に作業できるの、悪くないですね」
「俺も……まあ、悪くない」
「次の非番の日も来てもいいですか?」
「……お前、休みの日に俺のとこ来るの趣味になってない?」
ユースは答えず、笑って手を振って帰っていった。
その背中を見送りながら、俺は思う。
(……まあ、来るなら来てもいいか)
窓の外には夕焼け。
枕元の塩焼き鳥色ブレスレットが、光を受けてきらりと輝いた。
俺は布団の王国で引きこもり、ユースは毎日やってきては健康チェックと世話焼きをして帰る。
そんなある朝――珍しく、ユースが私服で現れた。
「……なんだその格好」
神官服じゃなく、ゆるいシャツにベスト。髪も少し無造作にまとめている。
「今日は神殿の非番です」
「非番なのに、わざわざ俺のとこに来たのか?」
「ええ、趣味を見せようと思って」
そう言って取り出したのは――木箱。
蓋を開けると、中には色とりどりの石や金具、細い糸。
「……これは?」
「アクセサリー作りです」
「神官ってそういう副業OKなの?」
「副業じゃありません。趣味です。作ったら全部神殿の寄付バザーに出します」
「へぇ……」
ユースは椅子に座り、器用に小さな石を糸に通し始めた。
指先の動きが妙に丁寧で、見ていると時間がゆっくり流れる。
「……作業してるお前、なんか静かでいいな」
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「うるさいとは言ってない。ただ……今日はBGMが穏やかだ」
「びーじー?…褒め言葉として受け取っておきます」
黙々と作業するユース。
俺は布団の中から眺めていたが、ふと声をかけた。
「……俺にも作れる?」
「もちろんです。ほら、この石を選んで」
「じゃあ……これ。塩焼き鳥っぽい色だから」
「……美味しそうな基準で選ばないでください」
俺が不器用に糸を通そうとすると、すぐに引っかかって止まる。
ユースが手を伸ばし、俺の指に触れて位置を直してくれた。
「こうやって……ゆっくり、息を整えて通すんです」
「……お、おう」
近い。距離が近い。
しかもユースの手はやっぱり温かくて、妙に落ち着く。
数分後、俺の初作品が完成した。
歪んだ形の……塩焼き鳥色のブレスレット。
「どうですか?」
「……まあ、味がある」
「味っていうか色じゃないですか」
「うまそうだろ?」
ユースは笑って、「じゃあこれはアディル様専用ということで」と言ってくれた。
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夕方、ユースが帰る前にふと言った。
「……こうやって一緒に作業できるの、悪くないですね」
「俺も……まあ、悪くない」
「次の非番の日も来てもいいですか?」
「……お前、休みの日に俺のとこ来るの趣味になってない?」
ユースは答えず、笑って手を振って帰っていった。
その背中を見送りながら、俺は思う。
(……まあ、来るなら来てもいいか)
窓の外には夕焼け。
枕元の塩焼き鳥色ブレスレットが、光を受けてきらりと輝いた。
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