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変化
しおりを挟む昼過ぎ。
窓から入る光がやわらかくて、久しぶりに心地よく感じる。
額の冷たい布ももう必要ない。代わりに、湯気の立つ薬草茶が枕元に置かれていた。
「……ようやく顔色が戻ってきましたね」
椅子に座ったユースが、安堵混じりに笑う。
「まあな。まだちょっとだるいけど」
「そのくらいでいいんです。全快するまであと一歩ですから」
ユースはテーブルの端に置かれた小さな鉢を手に取った。
……ああ、あれか。
「そういや……薬草ポット、どうなった?」
「ご覧になりますか?」
ユースが鉢を窓際に持ってきた。
土の上には、前に見た時よりも背を伸ばした緑の芽が、二本、まっすぐ立っていた。
「……おお」
「ちゃんと育っていますよ。アディル様が一度水をあげたおかげです」
「いや、一度だけだぞ」
「でも、あれが芽吹くきっかけになったのかもしれません」
そんなことを言われると、なんだか悪い気はしない。
ユースは小さな霧吹きを取り出し、葉の表面に細かい水滴を散らす。
「こうやって毎日少しずつ世話をしていると、変化に気づけるんです。
人も同じですよ。毎日見ていれば、小さな変化も分かります」
その言葉に、俺は少しだけ苦笑した。
「……じゃあ、お前は俺の変化も全部見てるってことか」
「ええ。顔色も、声の調子も、布団から出る回数も」
「布団から出る回数まで数えてたのか……」
「健康管理の一環です」
さらりと言ってのけるユースに、少しだけ肩の力が抜ける。
鉢の中の芽が、風に揺れて光を反射していた。
「……これ、いつ咲くんだ?」
「早ければ初夏には。白くて可愛らしい花が咲きますよ」
「へぇ……じゃあ、それまではちゃんと生き延びないとな」
「もちろんです。花が咲く日も、私が隣にいますから」
そう言って笑うユースは、薬草ポットと同じくらい、穏やかな光をまとっていた。
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