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神殿にて-ユース
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その日は久しぶりに、ユースは午前中いっぱいを神殿で過ごすことになった。
アディルの容態も落ち着き、薬草茶と食事を残さず取ったのを確認してから出てきた。
短時間なら離れても大丈夫だ――そう判断してのことだった。
白い回廊を歩いていると、背後から声がかかる。
「ユース、最近顔を見ないと思えば……侯爵家の引きこもり坊ちゃんのところに入り浸っているそうじゃないか」
振り返ると、年配の神官が腕を組んで立っていた。
厳しい眼差しと、少しの呆れ。
どうやら噂はすでに神殿中に広まっているらしい。
「……アディル様は、魂が疲弊しておられます。放っておけば命にも関わります」
「それは分かっている。だが、君はあまりにも一人にかかりきりだ。
神官は特定の人物だけに仕えるための存在ではないだろう」
その言葉は正しい。
けれど――ユースは口を閉ざすことができなかった。
「……放っておけないんです」
「情が移ったか?」
突き刺すような問い。
思わず息を呑む。
「……情ではありません。彼は今、誰も信じられず、外にも出られずにいる。
神殿の役目は、そういう人のそばに立つことではないんですか」
年配の神官はしばし黙り、やがて溜め息をついた。
「……君の熱意は否定しない。ただ、その熱意で自分を潰すな。
魂を支える者が、自分の魂をすり減らしてどうする」
言い残して去っていく背中を見送りながら、胸の奥に重たいものが残った。
たしかに、最近はアディルの部屋と神殿の往復ばかりだ。
睡眠も削っているし、他の仕事も後回しになりがちだ。
それでも、彼の額に触れたときの冷たさを思い出すと、足を止めることはできない。
(……私がやらなければ、誰がやる)
そうユースは自分に言い聞かせ、足を前に出す。
次に侯爵家へ行く時のために、薬草の在庫を確認しに向かった。
アディルの容態も落ち着き、薬草茶と食事を残さず取ったのを確認してから出てきた。
短時間なら離れても大丈夫だ――そう判断してのことだった。
白い回廊を歩いていると、背後から声がかかる。
「ユース、最近顔を見ないと思えば……侯爵家の引きこもり坊ちゃんのところに入り浸っているそうじゃないか」
振り返ると、年配の神官が腕を組んで立っていた。
厳しい眼差しと、少しの呆れ。
どうやら噂はすでに神殿中に広まっているらしい。
「……アディル様は、魂が疲弊しておられます。放っておけば命にも関わります」
「それは分かっている。だが、君はあまりにも一人にかかりきりだ。
神官は特定の人物だけに仕えるための存在ではないだろう」
その言葉は正しい。
けれど――ユースは口を閉ざすことができなかった。
「……放っておけないんです」
「情が移ったか?」
突き刺すような問い。
思わず息を呑む。
「……情ではありません。彼は今、誰も信じられず、外にも出られずにいる。
神殿の役目は、そういう人のそばに立つことではないんですか」
年配の神官はしばし黙り、やがて溜め息をついた。
「……君の熱意は否定しない。ただ、その熱意で自分を潰すな。
魂を支える者が、自分の魂をすり減らしてどうする」
言い残して去っていく背中を見送りながら、胸の奥に重たいものが残った。
たしかに、最近はアディルの部屋と神殿の往復ばかりだ。
睡眠も削っているし、他の仕事も後回しになりがちだ。
それでも、彼の額に触れたときの冷たさを思い出すと、足を止めることはできない。
(……私がやらなければ、誰がやる)
そうユースは自分に言い聞かせ、足を前に出す。
次に侯爵家へ行く時のために、薬草の在庫を確認しに向かった。
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