異世界転生したけど、生きるのが無理ゲーなのでフラグ折ります。

千宮寺みるく

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弟の帰宅後③

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 それから数日後。
 またもやトレイクからの差し入れが届いた。
 中身は前回より控えめで、保存のきくお菓子や茶葉が中心だ。

「兄様、これならしばらく持ちますからね。食べすぎないでください」
 というメモ付き――だが、その下にさらっと追記されていた。

『最近、王都の噂が落ち着かないようです。
 兄様は関係ないと思いますが、くれぐれも無理はしないで。』

(……やっぱり何か聞きつけてやがるな)

 差し入れの半分を片付けながら、俺は眉をひそめた。
 この手の書き方は、トレイクが何かを探っている時の癖だ。
 学園で耳にした情報をわざと軽く書き、相手の反応を引き出す。
 兄弟でも容赦がない。

 その日の夕方。
 珍しくトレイク本人がやって来た。
 休日ではないが、学園帰りに寄ったらしい。

「兄様、ちゃんと食べてますか?」
「食べてる。塩焼き鳥もな」
「……ああ、それならいいんですけど」

 他愛のない会話を続けながらも、トレイクの目は時々探るように細められる。
 ユースが薬草茶を淹れている間、ふいにトレイクが口を開いた。

「そういえば、殿下とは最近どうなんです?」
「どうって、会ってない」
「本当に?」
「嘘ついても仕方ないだろ」

 即答すると、トレイクは頷いた――が、納得はしていない顔だ。

「……兄様、顔色は悪くない。でも、前より声が少し疲れてます」
「気のせいだ」
「気のせいじゃないと思いますよ」

 その瞬間、ユースが茶を持ってきたおかげで、会話は中断された。
 俺は心の中で助かったと息をつく。

 トレイクは帰り際に、ふと笑った。

「まあ、兄様は兄様のやり方でいいです。でも、もし何かあったら、黙ってないで言ってください」
「……ああ」

 短く返すと、弟はあっさり部屋を後にした。
 残された俺は、薬草茶をすすりながら天井を見上げる。

(……あいつ、本当に勘がいい。下手に動けば全部読まれそうだ)

 布団に沈み込むと、窓際の薬草ポットが風に揺れた。
 その揺れが、妙に落ち着かない気分を煽った。
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