【完結】想いを忘れたフリを続けて生きると決めた僕の記録

わらいしなみだし

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離婚記念日  十二年目。「現実」前編

 僕は仕事が好きだ。

 生きていくために労働している、それは事実。
 生活していくために仕事をしている、それは現実。

 後ろ楯のない僕が生き抜くためにはお金を稼がなければならなかった。衣食住を手に入れるために必要不可欠であり、僕にとっては当然で、「仕事をしない」イコール「死」を意味していた。

 労働に見合った給料で身の丈の生活をしながら蓄えつつ。ほどほどの大人ならではの遊びは嗜み程度で生きてきた。
 仕事が好きでも仕事人間にはならないように、自分の身体を労りながら人生を過ごしてきた。成果を挙げば挙げるほど特別手当てが別途上乗せされるのも仕事好きに拍車をかけた。頑張れば頑張るほど目に見えての報酬が嬉しかった。頑張ればいいというわけではないのはわかっていた。成果を挙げてこそ。それでも、特別手当てが貰える月は心の中でガッツポーズをしたものだ。

 この職場は気に入っていた。この会社で仕事を全うしたいと勤めてから数ヵ月経過した頃からだろうか。うすうすそういう気持ちを持つようになってた。
 自分に合う仕事だっただけではなく、彼女と出逢ったのがこの職場ということもある。
 僕にとってはなくてはならない場所が、この会社だった。

 彼女がいなくなっても、思い出すことはある。
 居なくなった空間を寂しく思ったことはない。

 結婚してすぐに会社を辞めてくれたことは正直嬉しかったから。
 女性社員からの嫌がらせからも解放できたし、家に帰ったら「おかえりなさい」と出迎えてくれる、このしあわせは僕にとって得がたい喜びだったから。

 好きな仕事......好きな職場......好きな会社......

 自分から去ることを選択するだなんて、思いもしなかった。
 
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