【完結】想いを忘れたフリを続けて生きると決めた僕の記録

わらいしなみだし

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離婚記念日  十九年目。「回想」

「お前もとうとう年貢の納め時かぁ......」
「結婚なんて興味ないと思っていたのに」
「ホントそれな!」

 部署は違うけど同期の三人、僕を含めて四人だ。
 言いたい放題出来るほど仲がいいと思う。
 時々だけど、飲みに行ったり、ビリヤードやダーツを一緒にする仲だ。

「あのなぁ......」

 反論したいけど、どう言えばいいかわからない。
 僕が口にすればするほど惚気だと思われてしまう。それは、嫌だ。
 此処は行きつけの居酒屋で、チェーン店ではなく大将とおかみさんが切り盛りしている。洒落た感じではなく家庭風の温かさがあって味のあるちょっと穴場的なお店で、会社の人で此処を知っているのは僕たちだけだと思う。ばったり会ったことがないからきっとそうだ。うん、たぶん......?

「『結婚は人生の墓場』だぞー」

 ひとりだけの既婚者が語る。よく言われてるフレーズだけど、彼女を想像すると......絶対にありえないなぁと思う。そんな気持ちが顔に出て、にやけて言葉が出ない。あ、これは言われそうだ。

「おい!そこ!なにをニヤニヤしてる?『結婚』の二文字もなかったお前が......ちぇっ」

 おい、モテないからって言いがかりだ。ひがみだ。やめたまえ......なんて言ったら、首しめられるの、確定だよな?

 独身の二人のうちのひとりが絡み酒だ。酔いが早いけど、大丈夫なのだろうか?
 不安に思いつつ、まだ序の口だし気にしないことにした。
 とりあえず、今日は僕が主役らしいし?結婚する話を会社に伝えたら、今日は四人でいつものところで飲みに行こうという話になったらしく、DMが回ってきたのだ。仲がよくてもグループでのやり取りはしていない。

「彼女となら結婚してもいいなーって思ったんだ。それだけだよ」

 これだけは自信満々に言える。

 紆余曲折あったりするのが恋愛なのかもしれないが、僕と彼女はそうはならなかった。彼女へのイジメや嫌がらせはあったものの、僕たち二人きりの時はいたって順風満帆でこの先もずっとこのような関係でいられる自信があった。それほど彼女の傍は心地よい時間を過ごせていたのだ。

 怖いほど......順風満帆だったのだ。
 この先、なにが起こるか知らない僕はいつも以上に舞い上がっていた。
 なにかが起こる、それまでは。

「いいなーそう思えるような彼女がほしい!」
「いや、お前は生活態度と女への言葉を改めろよ」
「ふ、ふざけんな!俺のどこがだ?俺ほど「品行方正」な男はいないぜ」
「いや、言葉が腐るからやめろ」
「なにをー」

 速攻で突っ込みを入れられてる。言い返してもやられまくってる。相変わらずだ、こういうノリができるのも気心が知れた仲だからだ。
 三人の言い合いを聞きながら、結婚してもこういう風に飲みに行けたらいいな、なんて思った。

 あ、そうだ。新居に呼べばいいんだ......。

 僕はひとりで妄想に耽っている。結婚が待ち遠しくて早く、結婚したいなぁと考えていた。

「そういえばさー「恋愛」と「結婚」は違うっていうよね?恋愛相手の女と結婚相手の女。やっぱり違う感覚なわけ?」

 結婚願望があまりないもうひとりの独身男が聞いてきた。こういう話に興味があるってことは、もしかしたらいつかは......なんて思っているのかもしれない。

「あーそれ、わかるわ。俺、結婚前というか、今の嫁さんに出会う前はかなり遊んでたからなー」
「ワンナイトラブってやつ?来るもの拒まずでヤりまくってたよね?」
「や......ヤりまくって......あー、否定はしないけど、まくってはない。決して!で、嫁にはいうなよ!絶対に言うなよな」

 メチャクチャ焦ってやがる。はははっ。僕も思ってはいたけど、やぶへびになりそうなので口出しはしない。僕は来るもの拒まずだったけど、お付き合いした上での合意だから、彼とは違う。うん。彼の場合は......ああーなんというか、モテモテだったし?彼はいろんな意味でスマートにやり過ごすから、後腐れもなく終わっている。そこはスゴいテクだと感心している。僕には出来ない。いや、出来てもしたくない。

「『美人は三日で飽きる』は本当だ。見た目の重要度は少しだ。いちばんいいのは一緒にいて楽なことだ。カッコつけなくてもありのままの俺をそのまま受け入れてくれて俺も嫁さんを受け入れて、ただただ楽でいられる。小言があろうが小さな喧嘩をしようが、楽な気持ちで一緒に過ごせる......これがいちばん、だな」

 既婚者は言うことが違うなぁ......。僕は彼の言葉を聞きながら彼女の傍は気楽で自分を偽れずにいられることを思い出していた。

 一日でも早く結婚して、一緒に過ごしたい......。

 僕の心は居酒屋にいるのに彼女のことで溢れていた。
 
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