私が拾ったのは子猫なんですけど!そして私は男じゃない!

わらいしなみだし

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仕事が手につかない!

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 ……渡辺さん、さっきの私のときめき……返してくれませんか?

 不覚にもあんな、あーんな渡辺さんにときめいてしまった私って……
 ああ!思い出すのも腹立たしいほどなんですけど?

 渡辺さんって見た目はそんなに悪くないんだけど、いつも仕事&それ以外の行動もなんとなーくのらりくらりでまともなところを見たことがないのが、『ザ・渡辺さん!』……なのよね。
 総務部のほとんどの人たちの認識がそんな感じ。

 ……?
 気持ちがずれてる?……?

 あ、そうだったそうだった。
 今は渡辺さんじゃなくって……子猫の雨月のことだった!

 うーちゃんね……

 どう言い訳したら……渡辺さんは納得してくれるのだろうか?

 あれこれ考えているうちに、いつのまにか真剣な表情で私の顔を見つめる渡辺さんはジリジリと私の方へ寄ってくる。

 早く答えが聞きたいんだろうけど……ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと。近くなってないですか?

「えっと……あの……渡辺さん?」

「ん?で、うーちゃんは?」

「近寄らなくてもちゃんと答えますからぁ!」

「あ、ごめんごめん。つい、うーちゃんのことになると冷静さがなくなっちゃって」

 いえいえいえ。うーちゃんのことではなくても、渡辺さんが冷静な時ってあるんですか?仕事でも冷静な姿、見覚えないんですけど?

 あ、じゃない!雨月の言い訳を考えなきゃ!
 子猫のうーちゃんがいない理由……理由……理由……

 おさない雨月が今朝方家にやって来たことに……そして預かったことになってるんだよね?
 
 んんん?
 渡辺さんに……話したっけ?ま、いっか。
 
 おさない雨月の世話だけで……私っててんやわんやって気がしない?子育てしたことなんか、ないんだし?

 そう、それだ!その線でいこう!

「おさない子供を預かっている間、子猫のうーちゃんは別の場所で預かってもらうことにしたの」

「え?どうして?」

 渡辺さんはかなり驚いたようだった。ま、そうなるよね……。

「子猫のうーちゃんと小さな子供。両方世話するのって私にはハードルが高すぎなの。私、ちいさなおさない子供なんて……どうすればいいのかわかんなくて……一人で家に置いておけなくて夏川上司に泣きついて、何とかしてもらおうと……会社に連れて行ってもいいって許可をもらって……うーちゃんはすぐ預かってもらえそうな人を探して……すぐに預けて……それで……」

 私のちょっとした嘘を交えたお話を渡辺さんは真剣に相槌を何度か打ちながら聞いてくれました。

「そっかぁ……ここにうーちゃんはいないのか……。長谷部を送ってったらもしかしたらうーちゃんに会えるんじゃないかって……ちょっと邪な思いが……あったんだよな……」

 あー。邪な思いねー……

 女の私にではなく、子猫の雨月にですか……?
 私、魅力的には子猫に負けてるってことですか……?

 あ、私に邪な思いを持たれて此処に来られても困るけど、困るけど、困るけど……

 なんか、なんかちょっと……悔しいって……思っちゃっても、いいんじゃないかな?

 納得いかないようななんとも言えない感情でグルグルになっている私の顔を渡辺さんが変な顔で見ていたのは……私には全然気がついていないことでした。

 壁のところに置いてあった空色のケージを渡辺さんがいとおしそうに見つめていた。

「うー……ちゃん……」

 小さく響く渡辺さんの声。

 主のいない……からっぽのケージを。

 その声音も表情もなんとも言えないような……せつな気で……。
 本当に渡辺さんって猫が大好きなんだなーって。
 それがほほえましくもあり……。


 渡辺さんの気持ちを汲んで、私は黙ってその場から離れました。

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