私が拾ったのは子猫なんですけど!そして私は男じゃない!

わらいしなみだし

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仕事が手につかない!

211 総務課ピンチ!

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 こういうときに限って雑務は襲ってくるもので……。

 第一営業部のコピー機の紙詰まりから始まって挙げ句の果てには給湯室のコーヒーメーカーまで作動しないだなんて?!

 どうしてこういうときに限っていろんな物が故障したり動作不良になるんでしょうか?

 総務課の人は雑務に駆り出されてんやわんやの状態。
 その上、夏川上司の無断欠勤?まだ出勤するかどうかもわからないまま混乱が続いています。

 佐伯さんが戻らない中、必死に対応していた藤森さんも午前中はなんとか頑張っていたけど午後には緊張の糸が切れたように放心状態。

 総務課はピンチです!

 みんな昼食を取る時間もないまま個々の業務に没頭中。

「藤森さん、休憩入って貰えますか?食事もして来てください」

 見かねた渡辺さんが促すけど、疲れた表情をしつつ頭を横に振った。

「この状態で私だけ休憩だなんて……」
「その状態で此処に居られても戦力になりませんから。さっさと休憩一時間行ってきてください。順々に休憩とりますから。さっさと行ってリフレッシュして来てください。仕事はまだまだありますので」

 いつも適当に仕事をこなしている渡辺さんに「戦力にならない」と厳しく言われてちょっとぐうの音も出ないようで顔を歪めている。

 さすがにそう言われたら出ていくしかないみたいで。
 仕方なく立ち上がった藤森さんは

「ありがと。あとはお願いね」

 ひとこと残して部屋をあとにした。

 入れ違いに総務課に来たのは第一営業課のエース、今川さんだった。

「星野さん、大丈夫?総務課の夏川課長が無断欠勤らしいね。昼休みの社食ではその話でもちきりだったよ」

 総務課の心配をして来てくれるだなんて……やっぱり素敵な人です。

「あ!今川さーん、お気遣いありがとうございますぅ!そうなんですよぉー。どうして夏川課長が出社して来ないのか、私たちは知らされていないので全然わからないですし、前期の決済週間だから課長がいないと……佐伯さんじゃあ、頼りないし……もう、本当に困ってるんですよぉー」

 内情……ペラペラ喋りすぎじゃない?
 本当に、もう!美樹ちゃんったら……。

「星野さん、顔色悪いですね。大丈夫ですか?」
「みんな顔色悪いですよ?私でも悪いんですからぁー」
「う、うん。長谷部さんもそうだね……」

 あー、なんかすみません。
 今川さんは何か言いにくそうにしていたので取り敢えず質問してみた。

「今川さん、用件があって総務課に来たんですよね?」
「うん。仕事の件と個人的な件だけど……」

 何かしら?
 ちょっと気になる。

「私が……」
「私がお伺いいたしましょうか?」

 駆け寄ろうとしている美樹ちゃんの言葉を遮って私が受け付けることにした。

 後ろの方で膨れっ面の顔をしている美樹ちゃんの顔を想像しながら淡々と説明を聞くことにした。

「これ……こんな時期に申し訳ないけど……」

 そう言いながら差し出されたのは領収書の束。

「立て替えた分、清算できるかな?」

 十枚どころじゃない……。今川さんの領収書の分だけではなく……これって、第一営業部の全部じゃないの?

「あの……第一営業部さん。溜め込まないで下さいって、常々言ってますよね?」
「出張に行っていた分がどうしても溜まっちゃって……ごめん」

 この笑顔で謝られたら……反則技です。
 これで虜にならない女子社員、見たことがないんですけど?

「明日中でいいですか?今日はちょっと無理です。ごめんなさい」
「うん、さすがにそれは理解しているから……で、個人的な件なんだけど……」
 
 受け取った領収書を眺めてため息をつく私。
 話が続いていることに気がついていない私は自分の名前を言われてちょっと驚いた。

「星野さんに」
「えっ?」

 個人的な用件が私だとはこれっぽっちも思っていなかったです。

「昨日……総務課三人で飲みに行ったんだって?今日、僕も入れてくれない?一緒に飲みに行きたいんだけど?」

 連チャン……ですか?
 いつもなら嬉しいお誘いなんだけど……どうしよう?

「二人きりじゃなくても……いいから……」

 誰にも聞かれない声でそっと耳元で言われたのは……

「二人きりは……またいずれ……ね!」

 ちょっとだけ……顔が赤らめてしまうところでした!

 でも、でもでもでもでも!

 総務課の件だけではなく、夏川上司が何処にいるのか、雨月は何処なのか気になっちゃっているのに……。

 今はそんな状況ではないんですけど?

 今川さん、その反則な笑顔……ズルいです!






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