76 / 339
『編み物男子部』?ができるまで。
52 決戦は金曜日? 1 鳴海side2
しおりを挟む
「見つかったらやべーって。朔田、離れろって。まだこっちに来たことがないからって……や、やべーってマジ!朔田ぁあ!!」
必死な声が聞こえたかと思うと、一番聞きたくない楽しそうな明るい声が教室の入り口から聞こえてきた。
「翔琉ー!」
顔を出した男に聞こえないため息をひとつついた。
こんなところまで来るだなんて……余程今日の約束が守られるかが気になっているのだと理解した。
「こんなところまで来ないで下さい」
軽く睨みながら文句を言う。
上級生なんだから俺の気持ちを汲んでこういうことはしないで欲しいのだけど。
朔田君から両腕を離す。
大丈夫とは思うけど、あの男を刺激するのはよくないと思った。
朔田君の両腕が必死になってさっきより力を込めているのがわかる。
目を瞑り、まるで俺をすべてから守ろうとしているかのようだ。
「だって……約束の今日だもん。翔琉、キミをいち早く見ていたくって。僕、今日が本当に待ち遠しかったんだよ。ごめんね。ダメだった?で……忘れてない……よね?」
やっぱり……。
この人はその確認の為に来たんだ。
教室まで来られるのって、本当に迷惑なんだけど。
今日が約束の日だってことは、わかってますのに。
どうして疑うんだろう?
脅迫されてる俺が、忘れる訳ないでしょうが。
あんなものを見せられて……約束破る勇気、俺持ってませんけど。
「……忘れてない……です。そして、ここまで来ないで下さい!」
俺は嫌そうに力強く睨みながら言い放った。
「ごめん……。そんな約束出来ないよ。だって…翔琉に会いたいんだもん」
俺は……別に会いたくないんですけど。
言ったって聞かない人だと思ってはいましたが、やはりそうですか。
この人が強引な人だとわかっていましたけどね。
はちみつ漬けレモンを俺に催促した時に。
「はぁ……」
ため息しか出ない。
智さん、あなたと一緒にいることを決めましたけど、従うつもりは……ありませんよ。
もう一度睨み付けた。
智さんは神崎川と話をしている。
神崎川と話をする智さんは何故か異様に生き生きして気味が悪かった。
「翔琉の顔を見られたし。僕は行くね!愛妻レモン待ってるねー!じゃあ、部活終わりでね、か・け・る!」
あの……『愛妻レモン』のつもりは全然ないんですけど。
同じもの……神崎川にも渡してますけど。
どちらかと言えば、次いでに作っているのは智さんの分ですからね。
言わないけど。
要らない投げキッスまでしてから軽快な足取りで教室から去っていった。
嵐のような数分間だった。
ん?嵐をばらまく数分間と言った方が正しいのかも。
……完全に自虐だ。
囃し立てる声や野次に構ってられない。
こんな状態で知られたからには今、話すべきだ。
もちろん……笑顔で。
作り笑いでもない、心からの笑顔で……。
神崎川にきちんと向き合って話し始める。
笑顔とありったけの優しい口調で、幸せそうに……。
「あ、神崎川。俺が作ったはちみつ漬けレモン……サッカー部の部員全員に分けてあげてたんだね。知らなかったよ。……なんかね、あの人に催促されちゃって……作ってあげてるんだ。ホント…。図々しい先輩だよね」
「鳴海……まさか……つきあってる……のか?」
「さぁ……どうなんだろうね」
痛む心を無視して笑顔で言葉を濁す。
想像にお任せします……みたいな口調だ。
俺にはそこまでが限界だった。
肯定も否定も出来はしない。
一緒にいることを決めたのだから。
心も身体も決して屈しはしないと……。
想いに蓋をして、智さんの傍にいることを決めた俺が本心なんか言えやしない。
朔田君が心配そうに俺を見上げる。
朔田君に何度も言い聞かせる。
「もう……大丈夫だから……大丈夫だから」
想いは忘れない。
俺の想い人は……いつまでもじょうちゃん、君だから。
だから、智さんが俺に飽きるまで……お別れだね。
じょうちゃんと青春出来ない分、じょうちゃんが青春したい場所……。
俺がきっと守るから……。
何があっても、傍にいられなくなっても……。
最初から決めてたことだった……。
玉砕……。
ただただ、一緒にいるのがいつのまにか、
あたりまえになって、
それが心地よくって、
ただその空間に甘えていたんだ……。
じょうちゃん……
好きだよ。
蓋をするけど、心から……。
必死な声が聞こえたかと思うと、一番聞きたくない楽しそうな明るい声が教室の入り口から聞こえてきた。
「翔琉ー!」
顔を出した男に聞こえないため息をひとつついた。
こんなところまで来るだなんて……余程今日の約束が守られるかが気になっているのだと理解した。
「こんなところまで来ないで下さい」
軽く睨みながら文句を言う。
上級生なんだから俺の気持ちを汲んでこういうことはしないで欲しいのだけど。
朔田君から両腕を離す。
大丈夫とは思うけど、あの男を刺激するのはよくないと思った。
朔田君の両腕が必死になってさっきより力を込めているのがわかる。
目を瞑り、まるで俺をすべてから守ろうとしているかのようだ。
「だって……約束の今日だもん。翔琉、キミをいち早く見ていたくって。僕、今日が本当に待ち遠しかったんだよ。ごめんね。ダメだった?で……忘れてない……よね?」
やっぱり……。
この人はその確認の為に来たんだ。
教室まで来られるのって、本当に迷惑なんだけど。
今日が約束の日だってことは、わかってますのに。
どうして疑うんだろう?
脅迫されてる俺が、忘れる訳ないでしょうが。
あんなものを見せられて……約束破る勇気、俺持ってませんけど。
「……忘れてない……です。そして、ここまで来ないで下さい!」
俺は嫌そうに力強く睨みながら言い放った。
「ごめん……。そんな約束出来ないよ。だって…翔琉に会いたいんだもん」
俺は……別に会いたくないんですけど。
言ったって聞かない人だと思ってはいましたが、やはりそうですか。
この人が強引な人だとわかっていましたけどね。
はちみつ漬けレモンを俺に催促した時に。
「はぁ……」
ため息しか出ない。
智さん、あなたと一緒にいることを決めましたけど、従うつもりは……ありませんよ。
もう一度睨み付けた。
智さんは神崎川と話をしている。
神崎川と話をする智さんは何故か異様に生き生きして気味が悪かった。
「翔琉の顔を見られたし。僕は行くね!愛妻レモン待ってるねー!じゃあ、部活終わりでね、か・け・る!」
あの……『愛妻レモン』のつもりは全然ないんですけど。
同じもの……神崎川にも渡してますけど。
どちらかと言えば、次いでに作っているのは智さんの分ですからね。
言わないけど。
要らない投げキッスまでしてから軽快な足取りで教室から去っていった。
嵐のような数分間だった。
ん?嵐をばらまく数分間と言った方が正しいのかも。
……完全に自虐だ。
囃し立てる声や野次に構ってられない。
こんな状態で知られたからには今、話すべきだ。
もちろん……笑顔で。
作り笑いでもない、心からの笑顔で……。
神崎川にきちんと向き合って話し始める。
笑顔とありったけの優しい口調で、幸せそうに……。
「あ、神崎川。俺が作ったはちみつ漬けレモン……サッカー部の部員全員に分けてあげてたんだね。知らなかったよ。……なんかね、あの人に催促されちゃって……作ってあげてるんだ。ホント…。図々しい先輩だよね」
「鳴海……まさか……つきあってる……のか?」
「さぁ……どうなんだろうね」
痛む心を無視して笑顔で言葉を濁す。
想像にお任せします……みたいな口調だ。
俺にはそこまでが限界だった。
肯定も否定も出来はしない。
一緒にいることを決めたのだから。
心も身体も決して屈しはしないと……。
想いに蓋をして、智さんの傍にいることを決めた俺が本心なんか言えやしない。
朔田君が心配そうに俺を見上げる。
朔田君に何度も言い聞かせる。
「もう……大丈夫だから……大丈夫だから」
想いは忘れない。
俺の想い人は……いつまでもじょうちゃん、君だから。
だから、智さんが俺に飽きるまで……お別れだね。
じょうちゃんと青春出来ない分、じょうちゃんが青春したい場所……。
俺がきっと守るから……。
何があっても、傍にいられなくなっても……。
最初から決めてたことだった……。
玉砕……。
ただただ、一緒にいるのがいつのまにか、
あたりまえになって、
それが心地よくって、
ただその空間に甘えていたんだ……。
じょうちゃん……
好きだよ。
蓋をするけど、心から……。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
35
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる