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※第二部 建白書  心の内編

第六話 2 

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  二人を苦しげに見つめながら

山南「こんなになってしまうまで……私としたことが…………」
  (闘いには参加出来ずにいた。その間屯所を預かっていた身としては負傷者の手当ては我等が仕切らねばならなかった筈。なのに私は戻ってくる隊士等を労うこともせずに去ったのだ。これはすべて私のせい……)
安藤「や……や……まなみ……」
  (ど……どうして……此処に山南さんが……?)
山南「苦しいんだね……」  手をとる
  (なんということだ……!あんなにも勇ましかった隊長の安藤殿が……こんなにも憔悴しきって……苦しんで……)
新田「や……」
  (山……南……さ……ん……?……な、……なんで……?山崎……以外……誰……も……来なかっ……た……と……いう……のに……) 
)   
山南「無理しないでおくれ。話をあとでゆっくり聞かせてもらうから……」  手をとる
  (新田殿もこんなに……ああ、私はどうすれば……)
新田「あ……あり……」
  (役職を……担って……る……山南……さ……んが……、俺……た……ちを……看て……くだ……さ……って……るだ……なん…………て……)
山南「こんな苦痛を……虐げることをしてしまっていただなんて……気付かなくてすまなかった。私が悪かった。何もかも見ずにいた私が……。私がもっと早く気付けば何かしてやれたかも知れぬというのに………………。くっ……」
  (気がつかなかったとはいえ、遅すぎた……なにもかも……。私が出来ることなど本当にあるのだろうか……?考えねば!あまりにも時間がない。私が休息所で甘んじていた故の失態としかいいようがない……)
安藤「い、いえ……そん……な……」
  (俺たちは……まだ……見捨てられて……な……い……)
新田「う……」
  (か、必ず……も、戻……り……たい……。な……なん……と……して……も……)
山南「言葉が殆ど出ない状態まで……鎮痛薬とかは?」

   微かだけど安藤の目が否を示す

山南「…………。そうか……もうそれさえ効かないのだね……私が最後まで責任を持って君たちを看るから……何があっても最後までいるよ……。御苦労であったな。…………。すまない……少しだけこの場を離れるよ……」
  (目の当たりしても、私はまだ……先生を信じたいのだ……。すまない……)



   局長の部屋の前



山南「先生、先生は居られますか?」
  (真意を私に話してくださるだろうか?)
近藤「誰だ?」
  (この声は……屯所に戻ってきたのか……)
山南「山南です」
近藤「入れ」
山南「失礼します」

  近藤の前で座り面と向かう

  「先生……いえ、局長である近藤さん」
  (逸るな……落ち着け……)
近藤「改まってどうした?山南、話してみろ」
  (こんなに早く屯所に戻ってくるとはな……。歳の手前、どうしたものか……)
山南「近藤さんは、あの二人を何故あんな風にしてしまったのですか……?」
  (先生……お願いです。私の言葉を否定して下さい……!後生ですから……何かの間違いだと……!)
 
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