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#014「それでも幸せだった......。」
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私は母を見捨てられなかった。
母は父よりも私に依存していた。
気がついたのは中学時代。それでも普通に生活してたし、父と不和ではなく、両親と私と妹の四人で普通の幸せを送っていたと思う。
中学時代、高校時代に恋をし、何度かの片想いをした。
社会人になって勤めていた会社で好きな人と両想いになった。
でも、それは蕀の道だった。
彼は会社の中では一番人気があって、私と付き合っているとわかった瞬間から。女性社員からのいじめが始まった。
トイレ内での言われのない言葉から、見えない小突きや足掛け。嘲笑。
誰にも言わずに我慢していたけど、彼だけが気がついてくれて、それが女性陣の火に油を注ぐ状態になり、いじめはエスカレートしていった。
それを見かねた彼は、プロポーズをしてくれた。
彼は本来、直ぐに結婚をするつもりはなかったと思う。
スピード結婚になったのは、彼の思いやりだと思えた。
彼の愛情は確かなものだったし、私も彼を愛してたから、二つ返事で受け入れた。
家族間だけの結婚式をして、友達には私たちの新居に呼んだ。
快く来てくれた友達たちは、私たちへお祝いしてくれた。
ささやかですが、なんていいながら皆で購入したという土鍋セットをプレゼントしてくれた。それがとても嬉しかった。
私は来てくれた友達のために料理を作り、皆で一緒に食事をした。
楽しかった。
彼だけビールをのみながら、箸を運んでた。
私と友達はまだ二十歳に満たないから、お茶。
私は友達の中で最初に結婚したのです。
「結婚なんかしない」という私の口癖を聞くたびに、友達は「そういってる人が一番先に結婚するのよねー」と言っていたのを鼻で笑っていたのに。
事実になってしまった。
友達はお互いに目配せをしながら笑っているのは、きっとこの事なのでしょう。
まぁ、事実だし、幸せでいっぱいだし、気にしないことにしてる。
ただ、気になるのは母のことだった。
二人で新婚生活を始めることに最後まで反対した。
それでも、押しきった。
家族との同居なんて、考えたこともなかったし、妹もいるのに間違いがあるとは思わないけど、やっぱり嫌だと思った。
彼には気疲れするような生活を送って欲しくなかった。
恋人同士の時間だって短かったのに、二人の時間を大切にしたかった。
彼はとても優しくていつも私を優先してくれた。
私も彼のことを第一に思ってた。
ずっと二人で暮らして、「いつか家族が自然に任せて増えていったらいいね」なんていいながら愛を確かめあってた。
そんな日々を過ごしていたのに......。
一週間も経たずに母から電話。
最初は相手をしていたけど、話はいつも一緒に住めないの?という話になる。
だんだん嫌になって、居留守を使うようになったら、毎日かかってくるようになった。
彼は私のことを思ってか、同居してもいいよと言ってくれた。
母のことが心配になることもありましたが、私は母よりも彼との生活の方が大切だったのです。
それでも彼は、私の母を優先してくれました。
嬉しい気持ちと、不安な気持ちが何処かにあって、素直に喜べない自分がいたのです。
その気持ちを信じればよかったと......後悔しても遅かった。
過ぎ去ってから、そう思う自分は、一番大切なものを失ってしまったからです。
家族との同居が始まってから、母が日に日に彼への小言が始まりました。
彼と一緒になってから私が変な風に変わったとか、いろんな言いがかりをして彼をおとしめました。
どんなにやめてと言っても、母からしたら、私を奪った憎い男という印象しかなかったみたいです。
それでも彼は、苦笑いを浮かべながら母の言葉に付き合ってくれてました。
日に日に明るさがなくなり、口数も減っていった彼は、一日、また一日と、家へ帰ってこなくなりました。
それ見たことかと、彼のいない時にさっさと別れろと言い出す始末。
彼を探しに出掛けようとすると、狂ったように暴れる母。
彼との生活はもう、諦めるしかない......そう思いました。
別れることはない、大丈夫だからと言ってくれてましたが、彼のやつれてく姿は見ていられませんでした。
彼はギリギリまで耐えてくれました。
結局、私は母を捨てることが出来ずに、離婚届を役所でもらい、判を押して渡しました。
ごめん、という彼に、正式に手をついて。
今までありがとうございました。
あなたと出会えて一緒に過ごせてとても幸せでした......
涙することなく、伝えることが出来ました。
彼は苦しそうな悔しそうな哀しそうな表情をして、この家から去っていきました。
たった数ヵ月。
それでも私は、胸を張って言えます。
幸せだったと......。
母は父よりも私に依存していた。
気がついたのは中学時代。それでも普通に生活してたし、父と不和ではなく、両親と私と妹の四人で普通の幸せを送っていたと思う。
中学時代、高校時代に恋をし、何度かの片想いをした。
社会人になって勤めていた会社で好きな人と両想いになった。
でも、それは蕀の道だった。
彼は会社の中では一番人気があって、私と付き合っているとわかった瞬間から。女性社員からのいじめが始まった。
トイレ内での言われのない言葉から、見えない小突きや足掛け。嘲笑。
誰にも言わずに我慢していたけど、彼だけが気がついてくれて、それが女性陣の火に油を注ぐ状態になり、いじめはエスカレートしていった。
それを見かねた彼は、プロポーズをしてくれた。
彼は本来、直ぐに結婚をするつもりはなかったと思う。
スピード結婚になったのは、彼の思いやりだと思えた。
彼の愛情は確かなものだったし、私も彼を愛してたから、二つ返事で受け入れた。
家族間だけの結婚式をして、友達には私たちの新居に呼んだ。
快く来てくれた友達たちは、私たちへお祝いしてくれた。
ささやかですが、なんていいながら皆で購入したという土鍋セットをプレゼントしてくれた。それがとても嬉しかった。
私は来てくれた友達のために料理を作り、皆で一緒に食事をした。
楽しかった。
彼だけビールをのみながら、箸を運んでた。
私と友達はまだ二十歳に満たないから、お茶。
私は友達の中で最初に結婚したのです。
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事実になってしまった。
友達はお互いに目配せをしながら笑っているのは、きっとこの事なのでしょう。
まぁ、事実だし、幸せでいっぱいだし、気にしないことにしてる。
ただ、気になるのは母のことだった。
二人で新婚生活を始めることに最後まで反対した。
それでも、押しきった。
家族との同居なんて、考えたこともなかったし、妹もいるのに間違いがあるとは思わないけど、やっぱり嫌だと思った。
彼には気疲れするような生活を送って欲しくなかった。
恋人同士の時間だって短かったのに、二人の時間を大切にしたかった。
彼はとても優しくていつも私を優先してくれた。
私も彼のことを第一に思ってた。
ずっと二人で暮らして、「いつか家族が自然に任せて増えていったらいいね」なんていいながら愛を確かめあってた。
そんな日々を過ごしていたのに......。
一週間も経たずに母から電話。
最初は相手をしていたけど、話はいつも一緒に住めないの?という話になる。
だんだん嫌になって、居留守を使うようになったら、毎日かかってくるようになった。
彼は私のことを思ってか、同居してもいいよと言ってくれた。
母のことが心配になることもありましたが、私は母よりも彼との生活の方が大切だったのです。
それでも彼は、私の母を優先してくれました。
嬉しい気持ちと、不安な気持ちが何処かにあって、素直に喜べない自分がいたのです。
その気持ちを信じればよかったと......後悔しても遅かった。
過ぎ去ってから、そう思う自分は、一番大切なものを失ってしまったからです。
家族との同居が始まってから、母が日に日に彼への小言が始まりました。
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どんなにやめてと言っても、母からしたら、私を奪った憎い男という印象しかなかったみたいです。
それでも彼は、苦笑いを浮かべながら母の言葉に付き合ってくれてました。
日に日に明るさがなくなり、口数も減っていった彼は、一日、また一日と、家へ帰ってこなくなりました。
それ見たことかと、彼のいない時にさっさと別れろと言い出す始末。
彼を探しに出掛けようとすると、狂ったように暴れる母。
彼との生活はもう、諦めるしかない......そう思いました。
別れることはない、大丈夫だからと言ってくれてましたが、彼のやつれてく姿は見ていられませんでした。
彼はギリギリまで耐えてくれました。
結局、私は母を捨てることが出来ずに、離婚届を役所でもらい、判を押して渡しました。
ごめん、という彼に、正式に手をついて。
今までありがとうございました。
あなたと出会えて一緒に過ごせてとても幸せでした......
涙することなく、伝えることが出来ました。
彼は苦しそうな悔しそうな哀しそうな表情をして、この家から去っていきました。
たった数ヵ月。
それでも私は、胸を張って言えます。
幸せだったと......。
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