見世物小屋の少年たち【R18】

わらいしなみだし

文字の大きさ
65 / 86

舞台2ー12

しおりを挟む
 暫くしてそれは響き渡った。 
 その声は冷たくいつもよりも低音だった。

「ゼロだ」

 屋内に響く突然の声に客席は魔法が解けたかのように我に返り呆気にとられていた。

 攻め立てていた男も舌の動きを止めたが、その言葉を無視してその先にあるものに即座に吸い付いた。

 那智はその行為に必死に耐える。
 その顔がまた艶かしく上気してる様にも見える。

「ゼロだ」

 その声は先程の静かなる淡々とした声とは違い怒りが滲んでいた。

 それでも男はやめようとしない。
 腕もほどく事なく一層那智を抱き寄せている。

「もう一度言う、カウントはゼロだ」

 声は殺気を帯びていたのに誰もが気がつき舞台の二人を注視している。

 さすがに男は諦めたかのように那智の先端を軽く齧ってそれを解放した。

 那智の顔が一瞬歪む。
 なんとかそれを堪えて思いっきり下唇を噛んで自分の表情が崩れたことを悔しがったなんてわかるのはきっと統括の正だけである。 

「負けたのはお前だ。那智じゃない。さっさと客席に戻れ」

 幕の袖から統括の正が出てきて男を睨み付けた。
 言葉だけなら冷静、滲み出る声音はそうではない。

「那智は安かねぇんだ。お前如きが好き勝手に触れていいようなもんじゃねぇ」

 正は殺気を隠す事なく男に話し続けた。

「約束は守れや。那智の好意を軽く視るな。欲けりゃ最後の最後まで居るこった。其所で競り落とす金子がなきゃ……那智になんざ誰にも手はつけられないんだよ。那智は此処の看板舞台子なんでな」

 男に一瞥し、そこまで言って正は幕内に戻った。

 その言葉を聞いて統括の正の行動を察し、那智は本来の自分に戻った。
 心の内で感謝しつつ、舞台を壊さない配慮を有り難く思った。



 ーーーそう、此処は俺の舞台だーーー 



「何呆けてるんだよ。……だいたいお前らも何カウントやめて俺を魅入ってんだ?」

 那智のいつもの調子に客席がうるうるし始めていつもの雰囲気に戻っていく。

「「「な……那智様ー!」」」

 客席から次々に喝采が上がる。
 その声の主は皆那智にゾッコンのファンである。

「本当に那智って人気あるんだな……」

 男は那智のからだを解放して客席を見渡し呟いた。

「ああ……いい客達だろ?」

 那智は男に軽く口角を上げてみせた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

処理中です...