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舞台2ー12
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暫くしてそれは響き渡った。
その声は冷たくいつもよりも低音だった。
「ゼロだ」
屋内に響く突然の声に客席は魔法が解けたかのように我に返り呆気にとられていた。
攻め立てていた男も舌の動きを止めたが、その言葉を無視してその先にあるものに即座に吸い付いた。
那智はその行為に必死に耐える。
その顔がまた艶かしく上気してる様にも見える。
「ゼロだ」
その声は先程の静かなる淡々とした声とは違い怒りが滲んでいた。
それでも男はやめようとしない。
腕もほどく事なく一層那智を抱き寄せている。
「もう一度言う、カウントはゼロだ」
声は殺気を帯びていたのに誰もが気がつき舞台の二人を注視している。
さすがに男は諦めたかのように那智の先端を軽く齧ってそれを解放した。
那智の顔が一瞬歪む。
なんとかそれを堪えて思いっきり下唇を噛んで自分の表情が崩れたことを悔しがったなんてわかるのはきっと統括の正だけである。
「負けたのはお前だ。那智じゃない。さっさと客席に戻れ」
幕の袖から統括の正が出てきて男を睨み付けた。
言葉だけなら冷静、滲み出る声音はそうではない。
「那智は安かねぇんだ。お前如きが好き勝手に触れていいようなもんじゃねぇ」
正は殺気を隠す事なく男に話し続けた。
「約束は守れや。那智の好意を軽く視るな。欲けりゃ最後の最後まで居るこった。其所で競り落とす金子がなきゃ……那智になんざ誰にも手はつけられないんだよ。那智は此処の看板舞台子なんでな」
男に一瞥し、そこまで言って正は幕内に戻った。
その言葉を聞いて統括の正の行動を察し、那智は本来の自分に戻った。
心の内で感謝しつつ、舞台を壊さない配慮を有り難く思った。
ーーーそう、此処は俺の舞台だーーー
「何呆けてるんだよ。……だいたいお前らも何カウントやめて俺を魅入ってんだ?」
那智のいつもの調子に客席がうるうるし始めていつもの雰囲気に戻っていく。
「「「な……那智様ー!」」」
客席から次々に喝采が上がる。
その声の主は皆那智にゾッコンのファンである。
「本当に那智って人気あるんだな……」
男は那智のからだを解放して客席を見渡し呟いた。
「ああ……いい客達だろ?」
那智は男に軽く口角を上げてみせた。
その声は冷たくいつもよりも低音だった。
「ゼロだ」
屋内に響く突然の声に客席は魔法が解けたかのように我に返り呆気にとられていた。
攻め立てていた男も舌の動きを止めたが、その言葉を無視してその先にあるものに即座に吸い付いた。
那智はその行為に必死に耐える。
その顔がまた艶かしく上気してる様にも見える。
「ゼロだ」
その声は先程の静かなる淡々とした声とは違い怒りが滲んでいた。
それでも男はやめようとしない。
腕もほどく事なく一層那智を抱き寄せている。
「もう一度言う、カウントはゼロだ」
声は殺気を帯びていたのに誰もが気がつき舞台の二人を注視している。
さすがに男は諦めたかのように那智の先端を軽く齧ってそれを解放した。
那智の顔が一瞬歪む。
なんとかそれを堪えて思いっきり下唇を噛んで自分の表情が崩れたことを悔しがったなんてわかるのはきっと統括の正だけである。
「負けたのはお前だ。那智じゃない。さっさと客席に戻れ」
幕の袖から統括の正が出てきて男を睨み付けた。
言葉だけなら冷静、滲み出る声音はそうではない。
「那智は安かねぇんだ。お前如きが好き勝手に触れていいようなもんじゃねぇ」
正は殺気を隠す事なく男に話し続けた。
「約束は守れや。那智の好意を軽く視るな。欲けりゃ最後の最後まで居るこった。其所で競り落とす金子がなきゃ……那智になんざ誰にも手はつけられないんだよ。那智は此処の看板舞台子なんでな」
男に一瞥し、そこまで言って正は幕内に戻った。
その言葉を聞いて統括の正の行動を察し、那智は本来の自分に戻った。
心の内で感謝しつつ、舞台を壊さない配慮を有り難く思った。
ーーーそう、此処は俺の舞台だーーー
「何呆けてるんだよ。……だいたいお前らも何カウントやめて俺を魅入ってんだ?」
那智のいつもの調子に客席がうるうるし始めていつもの雰囲気に戻っていく。
「「「な……那智様ー!」」」
客席から次々に喝采が上がる。
その声の主は皆那智にゾッコンのファンである。
「本当に那智って人気あるんだな……」
男は那智のからだを解放して客席を見渡し呟いた。
「ああ……いい客達だろ?」
那智は男に軽く口角を上げてみせた。
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