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舞台2ー20

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「流、環と夜霧を呼んで来てくれるかい?」

 不穏な空気を察して裏方に潜んでいた流が舞台袖で楼主の辰からの指令を待っていた。

「畏まりました」

 流はその言葉を聞きその場から離れた。

「な、なにをしようってんだ?」
「この場から退場してもらおうと思ってね」
「俺は客だぜ?金子だって払ってるんだそんな勝手が許される訳がねーだろーが」

 客席の後ろから流が二人を引き連れて壁の端から舞台の方へ急いだ。客たちは固唾を呑んでその様子を見守った。

 舞台へ飛び乗った三人は座ったままの旗本を強制的に立ち上がらせ、「何をする!」と叫んで暴れる男の両手を背中へ回し紐であっという間に縛り付け二人がかりで拘束した。

 辰は帯の左側に括りつけていた紐をほどき印籠を帯から外して流れにそれを渡した。

「男を奉行所へ連れてお行き。これを見せれば話はわかる筈だからね。間違っても下っ端に取り合って貰うんじゃないよ。一番上の人に出て貰いなさい」

 流は慣れたように二人を促して男を外へ連行して行った。



 舞台には楼主の辰と舞台子の那智と統括の正だけになった。

「お客様、お見苦しいモノをお見せして申し訳御座いません。お詫びとしてこの私が可愛らしい那智の姿をひとつお見せ致しましょう。それで納めて下さいませ」

 小屋全体に響かせる張りのある声でいい、客席に深々と頭を下げた。
 姿勢を元に戻すと御簾部屋の方へ目線を送りその部屋に座している二人の客にも頭を下げた。

 この言葉の意味を察したか客たちが拍手喝采色めき立った。
 見世物小屋は本日一番の盛り上がりを見せる。

 辰の声と客たちの盛り上がる歓声を聞きながら那智は頬を染めてしまいつつも高下駄を震わせながら後ずさっていった。
 
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