女王の目覚め

私は、眠る。生まれ変わる為に…その1

ここは、天空の古城。選ばれし者だけが住める神聖な場所。
　朝になると、空は高く明るく澄み渡り、空気は、凛として爽やか。　
　夜は、城は静まりかえって橙色の小さな灯りが、数メートルおきに、足下の小道を照らす。
　城の中は、いつも優しい光と陰で満ちあふれ、本当に美しい場所。ただ、ここに住む者は、人に会うこともない。
　そこに、幼い頃からユニアは、最も優れた者として、特別な食事を与えられ、育てられた。
そして、成人になったこの日、ユニアは本当の使命を果たすときが来た。

 「ユニア様、もうすぐですわ。あと、数時間。選ばれし、お美しいユニア様。貴女のたおやかな御髪、憂いを帯びた切れ長の、瞳、輝く笑顔…。そのまぶしい程神々しい肢体…。全て私、メイが記録させていただきました。どうぞ、何の迷いもございません、このまま、お眠りくださいませ。永久に貴女様の美しさは記録されましたの。」　
　侍女のメイは、高揚して、声が甲高くなった。


もう一人の、これからユニア様にお仕えする侍女の私は、深いため息をついた。　
　下を見下ろすと、暗い闇の中、小さいが、1点1点まぶしい灯りが沢山見える。下界では、ユニア様とは立場の違うもの達が、眠りにつこうとしている。
　ユニア様は、何もご存知ない。
　ユニア様は、保護者がいない。
　だから、国が面倒を見る代わりに、年頃になったら、人口増に貢献するべく、雌鶏のように扱われる。ただし、それは、あまりに、過酷な為、大分前から、このようなシステムになった。
　これからユニア様の身に起こる忌まわしい出来事で、彼女が精神的に破壊されないように、眠りにつくのだ。
　そして、私の役目は、彼女が酷く男達に傷つけられないかを監視することだ。
　彼女の美しさは、媒体に記録され、国の貴重なデータとして今後永遠に保管される。まさに国有財産として。今この時期の若さの奇跡の芸術として。